早稲田塾
GOOD PROFESSOR

首都大学東京
都市教養学部 都市教養学科 経営学系

長瀬 勝彦 教授

長瀬 勝彦(ながせ・かつひこ)教授
1961年岩手県生まれ。84年東京大学経済学部卒業。91年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。東京大学博士(経済学)。駒澤大学経営学部助教授・教授、東京都立大学教授を経て、2005年の公立大学法人首都大学東京設立と同時に現職。
主な著作に『うさぎにもわかる経済学』(PHP出版社)、『賢いあなたがお金で損をしない37の切り札』(講談社)などがある。

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経営学系で意思決定の仕組みを学ぶ

長瀬先生と学生が話し合っている様子を撮影。学生が楽しそうにゼミに取り組んでいるのが印象的。

英会話と経済学は、もっとも多くの日本人が挫折した学問ではないだろうか?

関連書籍や学習教材を探すのは難しくない。それどころか「やさしい経済学」や「簡単に習得できる英会話」のたぐいの本があふれ返っている。しかし、よどみなくなく英語を話す日本人はほとんどいないし、経済に明るいビジネスマンもそう多くはない。

一体どうしてだろう?

実はそれほど難しい話ではない。楽に継続できる英語教材はないし、簡単に理解できる経済学の本も実在しないからだ。しかし長瀬勝彦先生は、本当にやさしい経済学の本を出版してしまった。『うさぎにもわかる経済学』(PHP文庫)である。

先生のゼミなどで通称「ウサケイ」と呼ばれるこの本には、「銀座のコーヒーが高いのは土地が高いからだ」というウソ(!?)の種明かしや、子どもの学費の元は取れるのかなど、具体的な疑問を経済学の理論で説明している。99年の発売当時、話題になったのも当然だろう。

その長瀬先生が02年から首都大学東京(当時は東京都立大学)で始めたゼミは「意思決定論」をテーマにしている。もちろん心理学科のゼミではなく、経済学部のゼミだ。

「企業には、ヒト・モノ・カネという経営資源がありますが、ひとつの企業がもっている経営資源には限りがあります。経営資源をどこにつぎ込むかの意思決定の良し悪しによって、企業が浮きもすれば沈みもします。ビジネスは先が見えないだけに、意思決定にはリスクが伴います。それゆえに、意思決定は経営者の非常に重要な仕事なのです」

意思決定論は、経営学や経済学・心理学の分野で昔から扱われてきたものだ。考えてみれば、経営者はもちろんのこと平社員でさえもビジネスは意思決定の連続である。

「漫然と意思決定して失敗するケースもあるでしょう。しかし、たくさんのデータを集めて極力合理的に分析をして意思決定を行なったとしても、うまくいかないことが少なくありません。情報の集め方や分析のプロセスにも、人間が生まれつき持っているバイアスがかかっていますから」

「自分では一所懸命やったので今回の失敗は運が悪かっただけと思っているケースでも、意思決定のいろいろな概念を知っていれば失敗を防げたかもしれません。ところが、人間はどんなに経験を積んでも、自分の意思決定が認知バイアスに影響されていること気づくことは難しいのです。意思決定について専門的に学ぶことで初めてわかる場合が多いんですよ」

たしかに日常生活で自分のバイアスに気づくことは難しそうだ。

経済産業省も注目の意思決定論

取材当日ゼミに出席していた学生に集まってもらった。記事ですべてを紹介しきれなかったのが残念。

現在、意思決定論をきちんと学べる大学ゼミは少ない。与えられたことだけをこなす労働が昨今少なくなり、裁量権をもってビジネスを進めていく人材を開発したいという時代の要望が高まっているなか、経済産業省は長瀬先生のこの研究に注目し、意思決定論の教材開発に補助金を出すまでになった。

こうした先生の研究への期待の大きさとある種の「熱」は、ゼミ全体にもよい影響をもたらしているように見える。意思決定の基礎的な知識も習得し、意思決定の実験に現在取り組んでいるゼミ生たちは、次々と実験の面白さを語ってくれた。また、その実験内容自体が取材者から見ても興味深いのである。

例えば、あるグループは、レストランの選び方について実験している。レストラン情報を点数など数値化されたデータで示す場合とイメージで伝える場合、選択肢が多いときにはイメージ情報に縛られやすいという実験結果が出たという。ガイドブックなどで必死にレストランを選んだ経験のある取材者は、過去の選択ミスを思い出しながら真剣に聞き入ってしまった。

愚かな意思決定をしなくなる

大学から駅までの道の両側にはアウトレットショップが並び、かわいい街並みとなっている。

このゼミで理論から学べば、こうした選択ミスはかなりしなくなるのじゃないか。取材しているうちに、そんな気にさえなってきた。

ところが、「人間は無機質な機械ではありませんから、バイアスから完全に自由になることはありません。私なんかも意思決定の専門家といっているわりには、日常生活で例えば昼食のメニューでずいぶんと迷ったりしますから」と、先生は笑う。

あるゼミ生も、商品を選ぶとき心理学的なプレッシャーによって決めようとしている自分に気づいたという。

長瀬先生も、「意思決定論を学べば、バイアスに影響された明らかに愚かな意思決定はしなくて済むようになります」と力強く語ってくれた。

取材後、先生の著作である『賢いあなたがお金で損をしない37の切り札』(講談社)をさっそく買い求めた。何となく意思決定の失敗が少なくなったように感じている。長瀬ゼミに興味をもった人には、こちらもお勧めだ。

こんな生徒に来てほしい

一言でいうと、知的好奇心をもち、森羅万象に興味があり、物事を論理的に考えるのが好きな学生でしょうか。つまり何かに興味を持ったときに、どうしてなんだろうって考えられる人ですね。面白いなぁだけで終わらない。どうして面白いのか、なぜそうなのか、その因果関係に興味を持っていける人に、ぜひ来てもらいたいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。