{literal} {/literal}
GOOD PROFESSOR

お茶の水女子大学
生活科学部 人間生活学科

藤崎 宏子 教授

藤崎 宏子(ふじさき・ひろこ)教授
1952年広島県生まれ。76年東京教育大学文学部社会科学科卒。78年お茶の水女子大学大学院家政学研究科家庭経営学専攻修了。81年東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻退学。81年東京都立大学助手、86年東京都立医療技術短期大学専任講師、91年より聖心女子大学文学部助教授・同教授をへて、2001年お茶の水女子大学生活科学部助教授。02年より現職。

主な著作に『高齢者・家族・社会的ネットワーク』(培風館)、『親と子――交錯するライフコース』(編著・ミネルヴァ書房)、『少子化社会の家族と福祉』(分担執筆・ミネルヴァ書房)などがある。

  • mixiチェック

「家族」と「福祉」の視点で高齢者問題に迫る

お茶の水女子大学生活科学部は「食物栄養」「人間・環境」「人間生活」の3学科からなる。その人間生活学科の生活社会科学講座で教べんを執る藤崎宏子教授は「オモチャ箱をひっくり返したよう」だと同講座の学生の興味・関心を表現する。

「ここで研究されているテーマは家族や子ども・高齢者・女性・消費者などの問題にわたり、非常に学際的な講座だといえます。こうした問題について、社会学をはじめ法律学・政治学・経済学などの観点で社会科学的にとらえて分析研究していきます。ですから対象となるテーマが多様で、設定も自由、しかも研究は複眼的ですから、まるでオモチャ箱をひっくり返したようになってしまうのです」

人間およびその生活に関するテーマであれば研究対象は「何でもアリ」。その自由度の広さが、学生たちの学習意欲をかきたてているようだ。藤崎先生自身の専門は家族社会学と福祉社会学で、キーワードは「家族」だという。

「家族を研究しようと思ったのは、大学で社会学を学ぶようになってからです。ただ家族というのは誰でも語れて、また誰でも一家言もっているものです。本腰を入れて研究しようとすると、非常に複雑でややこしいものであることが分かります。家族というのは個別性が高いうえに、研究者自身もその当事者ですから、研究の客観性を保たせるのがなかなか大変な分野なのです」

日本の高齢者介護はだれが担うべきなのか

最初のころ藤崎先生は母子家庭の問題に着目し、数年して高齢者問題にシフトしたという。以来25年この高齢者問題ひとすじの研究で、いまや斯界のエキスパートの地歩を占めている。

高齢者問題の研究でテーマは2つ。まず、高齢者介護はだれが担うべきかという大問題だ。

「これまでの日本の高齢者介護の担い手は、妻や娘それに嫁が大半を占めていました。しかし、多くの女性たちが家庭を出て働くようになり、いまや介護の担い手ではなくなってきています」

「こうした事情から日本にも介護保険制度が導入されました。ところがこの国には、老人ホームに入居したりホームヘルパーの介護を受けるのは不幸なことだとする考え方が根強く残っています。時代状況がどんどん変わっていくなかで、今後だれが高齢者の介護を担うべきなのか? これは昔もいまも大きな問題なのです」

能力主義が生む「老いのプロセス」の貧困さ

もうひとつの先生の研究テーマは「老いのプロセス」についてだ。

「人間が老いていくプロセスに興味をもっています。人はだれでも老います。それが自然の摂理です。以前は、人が老いるに従ってできることが少なくなることは子どもに戻ることだと見られていました。さらに仏教の輪廻思想などの影響もあって、死は終わりではなく、循環していくプロセスの一過程などとも考えられていました」

「21世紀のいま、死の先は真っ暗やみの虚無の世界だと考えるような人々が増えています。その根底になっているのは、戦後の能力主義だと思われます。能力主義は経済的に豊かな国にはしましたが、“老い”を価値がないと見なす風潮も生みました。老いはだれにでも来るものですから、それを周りも社会も当たり前なこととして認めることが必要です。高齢者自身も年をとることが負い目になるのではなく、できないことは誰かにやってもらうのが当然と考える感覚にならなければなりません」

「また日本の人々は、老いるにしたがって地味にひっそりとした振る舞いを求められがちです。でも、それには何ら合理的根拠はありません。高齢者が求める実態とズレたそうした規範や定義について、歴史的観点を入れながらどう変わってきたかも研究しています」

藤崎先生は、高齢者問題について真情のこもった熱い口調でとうとうと語ってくれた。すべての高齢者が質の高いケアを受けながら満ち足りた人生の終末を迎える。そのための方途を探りたいとも語る。

社会の現実にふれるバイタリティーのある卒論を

藤崎先生は何かにつけて熱心な先生だが、とくに厳しい卒論指導には定評があるらしい。前任校も含めた卒業生OGたちの大学4年間でのいちばんの思い出は藤崎先生から受けた卒論指導――そんな声が多いという。

「卒論は大学4年間の集大成ですから、何らかの形で社会の現実にふれるものであってほしいです。それがアカデミックな水準にまでなり切らなくても、みずみずしい感性やパトスがあふれて自分なりの分析や考察ができていれば良いと思っています。そういう指導をしているつもりだけなんですけどね(笑)」

また卒論のテーマについても、必ずしも高齢者問題にかかわり合わなくても良いという姿勢を藤崎ゼミではとる。ちなみに2004年度の4年次ゼミ生たちの卒論テーマ案を見せてもらうと、「国際ボランティア」「高齢者の住宅政策」「食のグローバル化」「自治体のDV(ドメスティック・バイオレンス)対策」「若者のきょうだい関係と友人関係」――と驚くほど多彩だ。

「学部生の関心は多様ですから、研究対象にするテーマは何でもOKということにしています。高齢者問題も私から勧めることはしていません。それよりも社会学における基礎的な調査方法や研究方法を学んでもらうことを重視しています。社会学的なものの見方や考え方を身につけてほしいということですね」

生活社会科学講座の専門課程のゼミは3年次の学生からとれる。藤崎ゼミには、3・4年次のゼミ生と留学生・研究生を合わせて常時約20人ほどが在籍している。

話は代わるが、現在の日本の高齢者人口の割合は約18%。これが2050年には約35%に達すると予測されている。人口の3人にひとりが高齢者という超高齢社会が出現する。以下は、藤崎先生から諸君への警鐘でもある。

「2050年といえば、いまの高校生・大学生のみなさんが高齢者の仲間入りをするころに当たります。国民の3人にひとりが高齢者という時代になれば、環境・経済・文化などあらゆることに変化が起こるはずです。社会のあり方が根本から革命的に変わらざるを得ないということです。変わってから慌てるのではなく、あらかじめ対処する心構えが必要になりますね」

こんな生徒に来てほしい

小さく凝り固まらないでいろんな好奇心を抱きつづける人、行動的でバイタリティーのある人がいいです。最近の若者を見ていますと、周りの親しい人や自分の内面には関心が強いのに、それを超えた外側の世界にリアリティーのない人が多すぎるように感じます。いまこそ壁を打ち破るような人が必要な時代だと思います。少しくらい収拾がつかなくても良いですから、バイタリティーおう盛な人といっしょに学んでいきたいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。