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GOOD PROFESSOR

千葉工業大学
情報科学部 情報ネットワーク学科

中村 直人 教授

なかむら・なおと
1960年三重県生まれ。’84年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了(数学専攻)。’84年旺文社入社。ニューメディア開発室勤務。’87年拓殖大学工学部助手。’92年東京学芸大学教育学部講師。’97年千葉工業大学工学部情報ネットワーク学科助教授。’01年より現職。’92年日本教育工学会研究奨励賞。著作に『情報数学の基礎――暗号・符合・データベース・ネットワーク・CG』(共著・サイエンス社)『入門マルチメディア』『マルチメディアと情報化社会』(前著ともに編集委員・CG-ARTS協会)などがある。
先生が主宰する「中村研究室.web」のURLアドレスはコチラ → http://www.nao.net.it-chiba.ac.jp/

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ITシステム開発の最先端はなんと「触覚」

中村研究室のある千葉工業大学7号館建物
新緑の候を迎えた津田沼キャンパス正門

JR津田沼駅南口のすぐ目の前という立地に千葉工業大学津田沼キャンパスは広がる。都市型キャンパスとは思えないほど緑があふれる瑞々しいキャンパスだ。今回ご紹介するのは情報科学部の中村直人教授である。はじめに「情報ネットワーク学科」について、お話を伺った。

「じつは日本で最初に『情報ネットワーク』を名乗った学科なのです。いまやインターネットは単に技術だけの問題ではなく、社会や人間に深くかかわる存在へと発達しました。10年以上前にそうした認識のもとに、コンピューターなどの工学系の教員だけでなく、心理学などの文系の教員も含めて構成されました。つまりインターネットを通信工学の研究からはもちろん、社会や感性・認知などの諸観点まで含めて研究していこうという学科なのですね」

いわゆる情報化社会について、文理融合のもと学際的に研究している学科といえよう。そのなかで中村先生の専門は「マルチメディアシステム」。先生の学生時代から今日までは、コンピューターシステム発達の歴史とみごとに重なる。

「わたしが研究室入りをした学生時代は、ちょうどパソコンが開発されたころでした。そこで、学部から大学院時代にかけての研究テーマとして、この新しいIT機器を使って教育システムをつくってみようと思ったのです。まだ、コンピューターのグラフィック性能やサウンド機能もあまり良くない時代で、発売になったばかりの光学式ビデオディスク(レーザーディスク)のシステムを利用して、最初につくったのが画と音の出る数学の教材です」

ここをキッカケとして、中村先生はコンピューターを使った教育システムづくりのパイオニアとして活躍するようになる。先生の研究は常に世を一歩先んじていて、まだインターネット普及以前の「パソコン通信」というシステムが主流だった時代に、情報をアメリカ経由で日本全国に配信したり、小学校の本校と分校や病院内の学級を結ぶ遠隔教育システムを構築するなど、東南アジア教育センターのインターネット構築にも携わった。

教育システム開発の先導者が構築した「仮想計算研究室」

初夏の陽まぶしい千葉工大校舎群の全景
津田沼キャンパス昼休みのひととき点描

その後、千葉工大の情報メディア委員長に就任してからは、情報ネットワーク学科の教員とともに「仮想計算研究室」という演習室システムを構築した。これは日本でほぼ初とみられ、180台が稼働する最大規模のシステムを誇る。

「この学科の目的には『ネットワークエンジニアの育成』が掲げられています。そのためには管理から運用までの幅広い知識をもつ人材を育てなければなりません。だからといって学生全員に大型のサーバーやコンピューターは貸与できないので、代わりに構築したのが「仮想計算研究室」です。これはハード(機器)を利用しないでソフトウエア(機器上で動くプログラムなど)だけでつくった計算機システムです。ソフトのみですから、これを持っていればハードのあるところならどこでも大学と同じ環境で学習することができるのです」

そんな中村先生が現在取り組んでいるのは「触覚」だという。

「最近では、コンピューター機器の性能が発達して画像や音声が鮮明に表現できるようになったことで、視覚や聴覚については伝えやすくなりました。しかし、触覚(ものを触って形や材質感を認識したりできること)については、伝達の正確性にとても難しさがあります。その理由のひとつに、触覚には、触れている個所の圧力だけではなく各関節にかかる力など、人体の複合的な知覚が関係するからです。この感覚をコンピューターで再現したり、インターネットを通じて伝達することにチャレンジしています。現在わたしの行なっている研究では、実写のなかに架空の立体画像を合成し、それに触覚デバイスで触れると感触が得られるまでになっています」

筆者も実際に触らせてもらったが、架空の立体画像が触覚デバイスを通して、ゴムのようだったり、スポンジやガムの感触として伝わってきた。将来これらが実用化すれば、目の不自由な人と健常者のコミュニケーションや遠く離れた人同士による医療や教育、さらには製品製造などの現場にも大きな可能性をもたらすものと期待される。

「生きる力」を備えた「全人的技術者」を育てたい

触覚デバイスを手に留学生に指導する先生
和やかに研究室の学生を指導する中村先生

千葉工大は、「師弟同行」という同大の教育理念のもと、研究室ごとに大きな部屋が与えられ、教授室や実験室・講義室と仕切られている。単に技術を教えるだけではなく、教員と研究室メンバーが可能な限り席を同じくすることで、学生の全人教育までを行うことを目指しているからだ。

中村研究室も同様で、大学院生や留学生さらには卒業研究に励む4年次学部生までが一堂に会している。学部生は例年10~15人。指導方針について先生は次のように語る。

「上から言われたことをただ取りさばくのではなく、どこかに自分なりの工夫を施すようにと言っています。それに『なぜそうしたのか。どうしたいのか?』をことばで明確に伝えられるようなコミュニケーションを行なうこと。さらに私のところで学ぶからには、ソフトウエアは自分で組めるぐらいにはなってほしい。これらが日々繰り返し伝えているポイントです」

ここで学ぶことで「生きる力」をつけてくれたら――そう先生は願っているのだ。

ところで話は変わるが、2010年の国民体育大会(国体)は千葉県で開催される。水泳競技は千葉工大津田沼キャンパスのある習志野市を会場にして開かれると決まり、その縁で千葉国体水泳競技の公式Webを中村研究室が制作配信することになった。

「水泳競技といいますと競泳に目がいきがちですが、じつは水球や飛び込みなど様々あります。そうしたあまり知られていないマイナーな競技を3D(立体視)CGで紹介するなど趣向をいろいろ凝らした仕様にしようと考えています。中心になってやるのは学部生の研究室メンバーで、彼らにはいい実体験になると思いますね」

すでに同Webは’08年5月末から実験公開されており、国体終了まで随時更新されていく。そのあいだ中村研究室の高度なコンテンツ(情報の内容)制作技術が日々展開される予定だ。スポーツだけでなく、コンピューター方面に関心のある人はぜひアクセスしてほしい。
千葉国体・水泳競技の公式WebのURLアドレスはコチラ → http://kokutai-narashino.jp/

こんな生徒に来てほしい

まず元気で活力のある人というのが条件となります。ですから「あれもダメこれもダメで、これしか私にはできません」というように消去法的・悲観的な考え方しかできない方はちょっと遠慮していただきたい気もします(笑)。やはり目標に向かって頑張っている学生ですね。もっとも目標自体が時間とともに変わっていくのは一向に構わないと思います。いつも発見とチャレンジの姿勢が大事となります。それに当然といえば当然ですが、コンピューターやインターネットに興味のある人に来てほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。