早稲田塾
GOOD PROFESSOR

駒澤大学
文学部 社会学科

坪井 健 教授

つぼい・つよし
1947年岡山生まれ。’72年駒澤大学文学部社会学科卒。’78年東洋大学大学院社会学研究科博士課程満期退学。’78年駒澤大学文学部社会学科助手。同専任講師・助教授をへて’96年より現職。専門はアジア学生文化の国際比較。主な著作に『国際化時代の日本の学生』(学文社)『こころ・行動そして社会』(人間の科学社)『現代中国の社会変動』(時潮社)など。

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「アジア学生文化」を社会学的に比較研究

坪井研究室のある「第一研究館」
駒澤大学正門

社会秩序の裏側を読むことに長けた「社会学」も、人間行動の法則性を追求する「社会心理学」も、社会現象の背後にある法則性を追求し、見る者の目を広げて洞察力を高める学問である――そう喝破するのは、今週ご紹介する一生モノのプロフェッサー、駒澤大学社会学部・坪井健教授だ。

そんな坪井先生自身の大きな研究テーマは「学生文化」である。
なかでも日本や台湾・中国・韓国のアジア4ヵ国の学生を20年以上追った「アジア学生文化」の研究は独自のライフワークともいえる。

「『学生文化』という独立したカルチャーがあるはずなのです。本来、大学文化というのは、教師中心の『教師文化』と学生中心の『学生文化』が出会う場でした。キャンパス文化は、この両者が刺激し合い融合することで、生産的になり活力あるものになります。しかし日本における学生文化は、高度消費社会の街の若者文化に吸収されて、単なる一部になって久しいのです。その象徴が、近年の学園祭や学生サークル活動の低調さに現われています」

「一方で、海外に出て行った日本学生はとてもよく勉強して学生文化も謳歌しているのですよ。それなのに日本にいる大学生たちは、高度消費社会としてのニッポン若者文化に完全に飲み込まれてしまいました。キャンパスはそのまま街中の空気といっしょになり下がりました。モラトリアム型の学生たちは、学生でいるうちは遊んでおこう、社会に出る前の自由を味わおうなどと思っているだけなんですね。興味深いことに、台湾の学生文化も日本に近い傾向を持ちます。ところが大卒者の就職率が日本より厳しい中国では、そもそも学生文化自体などなく、教師中心の教師文化が強烈です。学生時代は勉学中心の激しい競争となっています。そしてお隣・韓国でも中国の傾向に年々近寄っているのです」

まさに東アジアの学生文化の2極化ともいえよう。
現在坪井先生は、20余年をかけた比較研究の総仕上げにかかっている最中だという。

「停滞したこの国の学生文化を活性化させ、学生が社会的役割を果たして成長していく。そのためにはキャンパスに学外から新たな息吹を呼び込むことが必要です。地域の大人社会や留学生など、ニッポン学生たちにとっての異文化との交流を通じて、自分たちが刺激を受けて体験的に学び成長することが必要なのです。相互交流によって学生同士が刺激的に成長する、学生集団の自己教育力も求められます」

そこで坪井ゼミでは、学生文化を活性化する試みを実際に体験学習する活動を行っている。

身近なもので社会とつながれば大学は「実験場」となり得る

「曹洞宗大学林」が前身の大学らしくキャンパス内には歴史を感じさせる建物も多い
3年生の共同研究ゼミ。「大学の地域貢献」をテーマに原稿を持ち寄って、先生ゼミ生入り交じっての情報交換から始まる

坪井ゼミにとって、大学は自分たちの「実験場」という位置付けになる。
たとえば3年次のゼミ生たちによる共同研究は、駒沢大学自体を実験フィールドとすることが多い。

07年度の3年生ゼミの共同研究テーマは「大学祭は如何に可能か」、08年度の共同研究は駒澤大学に隣接する「駒沢オリンピック公園の歩き方」であった。

そして09年度の共同研究テーマは「大学の地域貢献を考える」だ。
駒澤大学生や周辺地域へのヒアリングを行なうなどをして、「場としての駒澤大学」をフルに使い切っていく。

そのうえで書かれた研究報告書はきれいに製本され、各ゼミ生に配るだけでなく大学図書館や国会図書館へも納本される。

「3年次の共同研究で磨き合い、4年で個人の卒業論文へと進みます。気心が知れ合った仲間と互いに鍛え合うなかで、個人の卒業論文としてだけではなく、そのまま学術論文として通用する完成度、読み手に考えがしっかり伝わる完成度まで高めてもらうようにしています。なかには自らの卒論完成までの道のりについて面接試験の場で熱く語って、新聞社に入った卒業生もいるくらいです」

同じように自らの卒論について語り、文系は採らない方針というメーカー企業に入社したゼミの先輩もいる。

最近の卒論をめぐる指導領域は、「学生文化」はもちろんのこと、「社会心理」「異文化コミュニケーション」「小集団研究」「留学交流」「大学文化」「高齢者文化」「スポーツ文化」「ジェンダー論」など、社会学・社会心理学の枠だけでは収まりきらないほどの広範な広がりを見せる。
3年次で共同研究報告書、4年次で個人の卒業論文をがっちり仕上げる坪井ゼミの2年間は、そのまま社会そのものへの入り口であると言っていい。

「わたしのゼミ演習を厳し過ぎると敬遠する学生もいるようですね(笑)。たしかに欠席の場合はたとえ直前でも事前連絡を入れること、提出物や報告の締め切りを必ず守ることなど、社会人としての基礎的なリテラシーについては口やかましく言います。そして卒論指導でも『ただ書いて提出する』だけでは絶対OKなどしません。自ら興味あるテーマを効率よく調べて自身の考えを読み手に伝える方法を身に付けてもらいます。何もやみくもに厳しくしているということではなく、以後の人生の拠り所になるものとして、大学で成し遂げたもの(卒論)を持って社会に出ていってほしいと思っているのです」

「日ごろ新聞を読んでも何をするときでも学生たちの卒論テーマがいつでも頭にありまして、頻繁にクリッピングをするようメール連絡したりしていますね。わたし自身、学生生活後半2年間のいいコーチでありたいとも思っているのです」

坪井先生のお話を聞くうちに「大学のときにこんな先生に出会っていたら……」という思いが心のなかに沸き上がってくる。

「学生たちが書く研究論文に対しては、学問的のみならず最終的に読み手の立場からのアドバイスまで行うように心掛けています。社会に出てどんな職業についても、上へ行くほど『書く』能力は重要になってきます。『自分の考えを書いて人にきっちり伝える』という能力です。とにかくこの基本能力を私のゼミで身につけて社会に出て行ってほしいのです」

08年度ゼミ(3年生)の共同研究「駒沢オリンピック公園の歩き方」から生まれたフリーペーパー「こまざわくるり」
「大学祭の活性化」研究に沿って坪井ゼミ4年生が模擬店を出店させた

卒論を掲げる4年生たち。学術論文として通用する完成度が坪井ゼミの卒論では求められる

こんな生徒に来てほしい

大学の4年間で自分なりのこだわりをもって何かを成し遂げたいと思っている人。
自分に自信を持って社会に出ていきたいと思う人。
集団活動を通して、仲間と刺激し合い高めたいと思っている人。
残念ながら高校時代に結果を出せなかったが、大学ではリベンジし、やり直したいと思う人。
こうした人なら誰でも大歓迎です。
わたしのゼミに入ってくる人は必ず羽ばたき開花させてみせますよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。