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GOOD PROFESSOR

工学院大学
情報学部 情報デザイン学科

管村 昇 教授

すがむら・のぼる
1950年兵庫県生まれ。’76年大阪大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。’76年日本電信電話公社(現NTT)入社。基礎研究部・主幹研究員・人材開発部長・コミュニケーション科学基礎研究所所長などを歴任。’05年同社を退職。この間’86年米メリーランド大学招聘研究員。’05年工学院大学CPD(技術者能力開発)センター教授。’06年同大学情報学部教授。’09年より学長補佐・教務部長・教育開発センター所長を兼務。IEEEフェロー・電子情報通信学会・日本音響学会などでの受賞多数。主な著作に『ヒューマンインタフェースのデザイン』(共立出版)『音のコミュニケーション工学』(コロナ社)『コミュニケーションを科学する』(NTT出版)などがある(著作はいずれも共著)。
管村先生が主宰する「音情報処理研究室」のURLアドレスはコチラ →
http://www.info.kogakuin.ac.jp/labo/labo_j201.html

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マルチメディアをより根源的に豊かにする「音響学」

工学院大新宿キャンパスビル

’06年4月に開設された工学院大学情報学部では、2010年春、第1期生が卒業し、社会にあるいは大学院にと巣立っていった。
この情報学部開設に伴って情報デザイン学科教授に着任したのが、今回紹介する管村昇先生である。
まずは、この情報学部と情報デザイン学科の特徴から伺った。

「これまで工学院大学は、各学科とも1~2年次は八王子キャンパスで基礎的なことを学び、3~4年次に新宿キャンパスへ移って専門的な教育を受けるというスタイルをとってきました。しかし、この情報学部だけは、1年次から4年次まで新宿キャンパスでずっと学びます。これは新宿が情報関係の企業や機関が集中している街で、将来的にそうした企業や機関とのコラボレーションやインターンシップなどを考えているからです」

TOKYO新宿で学ぶことのメリットを最大限に生かした学部として、カリキュラムを工夫したいということからだ。
情報デザイン学科の特徴については次のように語る。

「世の中で情報に関係しないものはない、というのが私の持論です。情報をデザインするといいますと、Web上のコンテンツであるとかゲームなどを思い浮かべがちでしょう。そのように狭く限定的なとらえ方をしないで欲しいのです。たとえば日本の年金制度は破綻しそうですが、あれは年金のシステムデザインを間違えたという見方もできます。そうやって視野をひろげると、情報デザインとはあらゆる分野に関わってきます。人文系の素養も必要になってきますから、それに応じた講義が組まれているのもこの学科の特徴です」

情報デザインは学際的な分野である――
その広がりと奥深さに興味が尽きないとも強調する管村先生だ。

ケータイ音声標準方式の開発者から見たITの現状

研究室学生らを指導する管村先生

管村先生のご専門は「音響学」である。
前職のNTT研究所時代に上司であった、板倉文忠氏と共同開発したLSP方式(音声の特徴をとらえて音声を効率的に表現する技術)は、現在の携帯電話の基本的な方式にもなっている。

「実は最先端の技術研究開発は、高額な施設や設備(それに高度な知識)が必要になりますから、大学で学生といっしょに研究するのには向いていません。ですから、いま私が参画しているのは、医師が電話を使って独居高齢者の安否確認や情報の伝達を行うプロジェクトの、技術的な面での協力があるくらいです。この他には今これといった研究テーマは持っていないんですよ」

そういって笑顔をみせる管村先生。
強いていえば、学生に教えることが大好きで、音を含めた情報のデザインをできる人材育成が研究テーマかもしれないという。
先生が「音」についてこんな話もしてくれた。

「いまITをめぐっては、マルチメディアであるとか大容量のネットワークなどについてよく喧伝されています。たしかに画像については格段の品質の向上は認めますが、音に関しては貧弱な状態であるというのが実情ですね。たとえばテレビ会議システムで、画像と音声ではどちらが重要かといえば、明らかに音声のはずなのです。しかし現実には画像優先で音声は置き去りにされています。画像はきれいだけれど、何を話しているのか聞き取りにくいようではテレビ会議として本末転倒のはずですが、案外こうした例は多いんですよ」

“音のプロフェッショナル”を自認する管村先生にとって、こうした現状に我慢がならないようだ。

「実際にテレビにしろ、ゲームや映画・アニメーションにしろ、音のないものを想像してみれば分かるはずです。非常に面白くないものになってしまいます。こうしたものに効果的な音をつけること、それこそがまさに音の情報デザインになるわけです」

さらに管村先生の興味深いお話は続く。
ヒトを含めた動物の生存のためには、限られた視覚情報よりも音から得られる情報のほうがいかに豊かで重要か……。
このように先生の話はどんどん展開して留まるところを知らない。

最新研究を支える原理・原則こそしっかり学ぶべし

研究室学生たちと談笑する管村先生

工学院大学情報デザイン学科の学部生の研究室配属は、4年次の春からである。
その第1期生を受け入れた2009年度は各研究室均等配分でほぼ12人ずつの配属になった。

「4年次の学部生ですから研究室配属は卒業研究が大きな目的になります。その卒研のテーマについて、私のほうからトップダウンで与えることはしません。学生と個別に相談しながら、学生自身が興味をもっていることで研究テーマになるものを探るようにしています。テーマが決まると『研究企画書』の作成を義務づけています。これを書くことによって、研究のテーマや意義をより深く考えるようになり、その研究による社会的な貢献や意味も明確になってくるからです」

これはNTTの研究所時代から採用してきた方法で、研究の方途に迷わないためにもぜひ必要だと強調する。
卒業研究のテーマについては、音声はじめ音楽や音響、さらには音声のパターン認識、あるいは騒音問題と、「音」に関するものであれば何でもOKとのことだ。
あらためて管村先生の学生指導における基本方針について伺った。

「学生には、何のために大学で学ぶのか、その根幹をいつも忘れないでほしいですね。年次を重ねるごとに大学ではするべきことが多くなっていきます。ですから、するべき時になったらトコトンまで深くやり抜く姿勢が大切です。そのためにも最新の知識だけを学ぶのではなく、その下にある不変的な根っこの部分(原理や原則)についてもしっかり学び取ってほしいと思っています」


なお管村先生の研究室には、蝋管蓄音機やラッパ型蓄音機・オープンリール型テープレコーダー・ニッパー犬(ビクター犬)グッズ――等々、先生がコレクションした古い音響機器が所狭しと並べられている。
「音」に対する先生の造詣と愛情の深さがこちらにも伝わってくる。

こんな生徒に来てほしい

何にでも貪欲な関心をもってチャレンジする人ですね。
自分なりの解釈でいいですから、関心をもったことについて考えてみるクセをつけること。
考えて、考えて、考え抜くこと――
そうしたことを大学で学ぶ基本にしてほしいです。
また、大学を終えて社会に出て生きていくことの意味についても考えてほしいですね。
ひとりの人間が社会に巣立つまでには多くの人たちの恩恵をこうむっています。
その恩恵に対して、どういう形で社会に返していくのか?
そうしたこともよく考えて進学して来てほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。