早稲田塾
GOOD PROFESSOR

専修大学
人間科学部 社会学科

大矢根 淳 教授

おおやね・じゅん
1962年東京生まれ。’86年慶應義塾大学法学部政治学科卒。’92年同大学院社会学研究科社会学専攻博士課程単位取得満期退学。’87年未来工学研究所研究員。’89年電気通信政策総合研究所(現国際通信経済研究所)研究員。’94年防災&情報研究所研究員。’99年専修大学文学部人文学科専任講師。’04年同助教授。’06年同教授。’10年より現職。主な著作に『シリーズ災害と社会 復興コミュニティ論』(弘文堂)『都市社会とリスク』(共著・東信堂)『災害における人と社会』(訳書・文化書房博文堂)などがある。
Web上の「大矢根研究室」のURLアドレスはコチラ→http://disasterjune.com/

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被災者・住民サイドからの「災害社会学」「環境社会学」

大矢根研究室の入る4号館建物

専修大学では2010年4月から、「文学部人文学科社会学専攻」と「文学部心理学科」の2つが文学部より独立、「社会学科」「心理学科」から成る新学部「人間科学部」が誕生した。
これにより、「社会学専攻」は一気に「人間科学部社会学科」として生まれ変った。
その経緯から同学科教授の大矢根淳先生に伺った。

「これまでの専攻から社会学科へと立ち上がったわけですが、それに合わせて専任の教員が10人から14人に増員されました。それぞれの教員が複数の専門分野を研究していますので、30~40ほどの多くの社会学領域がカバーされます。専攻時代からの40年にわたる伝統も含めて、そのスタッフの充実ぶりがこの学科の特徴といえるでしょう」

さらに専修大学社会学科の紹介で欠かせないのは、社会調査士の人材育成という点だ。

「社会調査士は、’04年度から旧・社会調査士資格認定機構(現・一般社団法人社会調査協会)が認定する資格になりました。本学科の教員すべてが、大学院で教えられる『専門社会調査士』の資格をもって講義と実習を担当しています。このように、全学科あげて社会調査士養成をしているのは全国的にもめずらしいことで、社会調査士の専門誌に大きく取り上げられたこともあるほどです」

ちなみに「社会調査」とは、社会学の基礎理論に依拠する調査方法で、社会の構成をなす人々の意識や行動について、実地調査して統計や事例で表わすもの。
その調査結果次第では、時の政策や世論に影響を及ぼすこともある。
一般的に、全体像を量的に調べていく統計的社会調査と、個々の事例を質的に示す事例的社会調査とに分けられる。

「特定の事柄を調査するとき、いつでも質的か量的どちらか一方の視点からだけ調べるのではなく、双方の調査をつき交ぜて複眼的に調べようとする姿勢が望ましいですね」

そう補足的に説明もしてくれた大矢根先生。この社会調査士養成のためのカリキュラムが、専修大学社会学科では1年次から組まれている。ここに、同学科で学ぶ大きなメリットがあるといえよう。

被災後コミュニティーの再生を含めた長期的視点が求められる研究

道路はさんで両側に生田キャンパス

大矢根先生のご専門は「災害社会学」と「環境社会学」である。
その専門内容についても話してもらった。

「わが国の災害研究は、災害時におけるパニックの研究から始まりました。これは第2次大戦後にアメリカから移入された学問分野で、大災害が発生したときのデマや流言飛語など、災害と情報についての研究が中心でした。その後’90年に雲仙・普賢岳が噴火したのをキッカケに、長期に継続する大災害のときに復旧と復興を併行しなければならないという課題に実際に直面し、ここから日本における復興研究というのが始まります。それまでの情報の研究は、災害情報に対して個人がどう行動するかが考察の中心でしたが、復興研究は被災地域全体を見据えて考察します」

一般的に、個人行動については心理学系の研究者たちが扱う分野とされてきたが、こと災害復興に関連した問題については、大矢根先生ら地域研究手法を採る社会学エキスパートたちの研究課題となりつつある。
具体的には社会基盤の根本をなす公的インフラや住宅などの復旧、あるいは被災後のコミュニティーづくりについて研究がなされている。

「災害復興の研究に本格的に携わるようになってからは、’93年の北海道南西沖地震における奥尻島、’95年の阪神・淡路大震災の復興問題などを課題としてきました。自治体などの復興宣言は3年ほどで出されますが、私たち災害社会学の研究は少なくとも10年、長くなると30年ほどもかかるとされています。被災者の日常の生活が順調にいっていることを、被災者自身だけではなく、我々研究者が社会学的に客観的な測定をして復興の確認をするまでになりますから、どうしても時間がかかりますね」

被災地域というのは地価が下落しがちで、その影響もあって地域の経済活動が停滞することが多い。
その停滞は次世代の子どもたちにまで影響が及ぶことがあるため、その観点からも長いスパンでの研究が必要になるのだそうだ。

なお阪神・淡路大震災を契機にして災害ボランティアの研究も始まり、こちらも先生の研究課題のひとつになっている。

同志ユニット研究のなかで一生モノの人間関係も構築できる

最寄り駅である小田急「向ヶ丘遊園」駅

専修大学人間科学部社会学科は2010年4月に始まったばかりで、まだ専門ゼミ演習などは実施されていない。
そこで現行の人文学科社会学専攻におけるゼミ演習の例を話していただいた。

「専門ゼミは3・4年次学部生が対象で、例年各学年10人前後を受け入れています。私のところでは3・4年次合同でして、2コマのゼミのうち1コマはもちろん私が参加しますが、あと1コマは基本的にゼミ生たちの自主的な運営に任せています」

大矢根ゼミの研究スタイルの特徴として、希望する研究の領域・対象・方法のいずれかを同じくする3人ほどでユニットを組ませることも挙げられる。

このユニットには3・ 4年次ゼミ生が入り交じるようにして、異世代間交流が図れるようにしてある。
これらも大矢根先生が意図的にしていることだ。
そうした学生指導方針についてあらためて先生は次のように語ってくれた。

「このユニット方式によって、4年次ゼミ生は卒業論文の作成に集中できますし、3年次ゼミ生はそれをアシストしながら卒論作成の実際も学ぶことになり、とてもうまく回転していると思います。指導方針については、自らが現地に赴いて採ってきたアンケートやインタビューのデータに真摯に向き合うこと、先行研究の論文をしっかり読み込んで自分の知識として提示できるようにすることを常に強調しています。さらにいえば、調査現場に出るときには対等な人間として(そして研究者として)、マナーを守るようにということですね」

大矢根先生たちの研究フィールドは日本国内にとどまらない。
ニュージーランドの地滑り災害地区の復興調査や、中国・北京の古い街並みが再開発等で組み替えられていく変化の調査、台湾の地震被害地域の復興支援――など国際的大テーマにも取り組みが広がりつつある。

中国の大学に招聘されて教壇に立っていたこともあるという一生モノの国際派プロフェッサーでもあるのだ。

こんな生徒に来てほしい

まず、なんといってもフットワークの軽い人ですね。
どこにでも行ってみたいとか、疑問に思ったことはすぐに資料にあたって調べるような人ですね。
フィールドワーク調査の対象になった方々に礼を尽くせる人間的な素養・常識も必要です。
私たち社会学的な学問領域には文系と理系の別などはありません。
高校で「数Ⅱ」、「数Ⅲ」や「化学」を取っていた(取っていない)理系(文系)だから、災害研究には向かないということには原則なりません。
社会的な問題に関心があることが前提ですが、他人に誠実に向き合うことが自然とできる人であれば誰でも大歓迎します。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。