早稲田塾
GOOD PROFESSOR

明治学院大学
経済学部

大西晴樹  教授(学長)

おおにし・はるき

1953年北海道生まれ。’75年法政大学法学部政治学科卒。’78年明治大学大学院政治経済研究科修士課程修了。’83年神奈川大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。’83年明治学院大学経済学部専任講師。’86年同助教授。’93年同教授。’04年同学部長。’08年より現職。この間’91、’92年英オックスフォード大学訪問研究員。

主な著作に『イギリス革命のセクト運動』(単著・御茶の水書房)『マックス・ヴェーバーの新世紀』(共著・未来社)『〈帝国〉化するイギリス』(共編著・彩流社)などがある。

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M・ヴェーバー理論を基軸とする経済史研究

学長室のある白金キャンパス本館
白金キャンパス正門

今回は明治学院大学学長の大西晴樹先生に登場願うこととなった。

まずは、学長として、大学教育理念から伺っていこう。

「本学は、ヘボン式ローマ字表記法で知られるヘボン博士が1863年に横浜で開いた『ヘボン塾』が前身になり、キリスト教に基づく人格教育を建学の精神としています。 “Do for Others”(他者への貢献)が教育の理念です」

「学長就任にあたり5つの教育目標を立てました。(1)他者を理解できる人間の育成(2)分析力と構想力を備えた人間の育成(3)コミュニケーション能力に富む人間の育成(4)キャリアをデザインできる人間の育成(5)共生社会の担い手となる人間の育成??の5つ。とくに5番目の共生社会の担い手になるには、『ともに生きる』ことが重要です」

「ともに生きる」には、隣人はもちろん、隣国や自然環境と共に生きるという意味も込められている。


創立150周年「21世紀ヘボンプロジェクト」が進行中

都内一等地にある白金キャンパス

来たる2013年、ヘボン博士の前身塾開設から150周年を迎えようとしている。
新しいイメージの明治学院大学に生まれ変わる??そんな機運で盛り上がっているらしい。

「150周年記念事業として『21世紀ヘボンプロジェクト』を立ち上げ、2年前から活動を開始しています。具体的な事業内容に、(1)教学改革とキャンパスの整備拡充(2)語学教育の強化と国際交流の活性化(3)一貫教育の推進と地域社会への貢献を3本柱として掲げています」

大西先生は経済学部の教授である。

学部長時代には経済学部に新カリキュラムを導入し実績もあげてきた。

「学部長時代には『良識ある経済人の育成』をテーマに掲げました。現代の経済学は非常に抽象的な学問になっていまして、その裏付けとなるものを教室内外で把握できるようにしようということで、新たなカリキュラムを導入したのです」

「その第1が『フィールド・スタディ』の導入です。これは教員とともに海外に2週間滞在し、その現地で現場を体験しながら学ぶものです。第2は『インターンシップ』の充実。ただ企業実習を体験するだけでなく、講義をあらかじめ受講し、その意義を理解してから体験できるようにしました。第3がボランティア活動への参加です。外部のNPO団体などの活動に所定の時間参加すると単位として認定するようにしました」

経済学部の講義というと、どうしても座学中心になりがちだ。

しかし新カリキュラム導入によって学部全体が活性化したという。

学生たちにも好評で、受験生からの問い合わせも増えて、明治学院大学経済学部の注目度が一気に上がるという十分な成果をあげている。
「学外での実体験を通して、学生たちは現実の社会での動きと自分たちが学んでいる経済学がつながっていることを理解します。それによって良識ある経済人が育成されるようにというのが、新カリキュラム導入のねらいです」

ここで経済学者としての大西先生についても紹介しておこう。

その専門分野は「西洋経済史」で、ドイツの社会・経済学者マックス・ヴェーバーの研究に影響を受けた。
「マックス・ヴェーバー(Max Weber、1864年?1920年)の学説を検証しながら17世紀イギリスの社会経済について研究してきました。(1)近代資本主義はどこからやってきたのか(2)宗教(プロテスタンティズム)と経済との関係(3)資本主義と帝国主義(植民地主義)の関係??などが主な研究テーマになります」

東アジアふくめ資本主義発展には合理的精神が必須

歴史感のあるインブリー館(宣教師館)

なかでも大西先生がとくに力を入れているのが宗教と資本主義の関連についての研究だ。

「市場における経済活動というのは、合理的精神に裏打ちされていることが前提です。たとえばプロテスタントは、相手が誰であろうと一物一価の精神で定価販売を貫きました。これは“God’s no respecter of person”『神は人の属性を問題にしない』というキリスト教的人間観に根差したもので、これがヨーロッパの近代資本主義を発達させてきました」

いま中国・韓国をはじめ東アジアの経済発展はめざましい。
ただ、この地域は儒教社会の伝統が強く、合理的精神とはやや世界観を異にしている。

「そのため東アジアがさらに発展するためには、より合理的な精神が必要になるのではないのか? そうした視点から注目し研究しています」

そもそも資本主義の起源については諸説あるが、大西先生はM・ヴェーバーの説を基軸に置く。

「プロテスタンティズムに影響された人々の近代的・合理的な精神が、資本主義を貫き発展させたという考え方ですね。一物一価の考え方のないイスラム圏や、やたらと政治が経済に介入するような独裁国家では発達できなかったでしょう」

その意味では、東アジアにあって儒教思想の影響下にあるわが国は微妙な位置にあるとも言えるようだ。
完全な合理主義には徹しきれないところがあるからだ。

そして最後に大西先生はこんな話もしてくれた。

「学長職に就くまでは経済学部の教員として、多くのゼミナール生を社会に送り出してきましたが、いずれも各方面で活躍しております。彼らに共通して伝えてきたのは『人間が、人間として、人間らしく、ともに生きる』ということに尽きます。そういう考え方のできる人間を育ててきたつもりです」

大西先生は敬虔なクリスチャンで、その考え方が先生の信条でもある。

「学生にもいろんなタイプがおりまして、なかには社会に適合しにくいような学生もおります。そういう学生には、社会に出るにあたって、自分の理想に向かって頑張ってごらんと励ますようにしています。

こんな生徒に来てほしい

本学はキリスト教に基づく大学ですので、「人とともに」「人のために」という考え方のできる人を大歓迎します。
よく学生に、大学を終えて就職するときには「JCC」の3つの目標を持つようにしなさいと話しています。
JとはJobのことで「収入の道」、CはCareerで「専門性の高い職業」、もうひとつのCはCallingで「天職に就く」という意味です。
これら3つの目標をめざして大学4年間の学業をしっかり修めてほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。