早稲田塾
GOOD PROFESSOR

成蹊大学
文学部 日本文学科

森 雄一 教授

もり・ゆういち
1967年愛知県生まれ。’94年東京大学大学院人文科学研究科博士課程退学。’94年茨城大学人文学部専任講師。同助教授をへて、’00年成蹊大学文学部助教授。’08年より現職。
主な著作に『ことばのダイナミズム』(共編著・くろしお出版)『メタファー研究の最前線』(分担執筆・ひつじ書房)『レトリック連環』(共編および分担執筆)『ミステリーが生まれる』(分担執筆・前著ともに風間書房)などがある。

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「比喩」レトリックについての認知言語学的研究

森研究室の入る成蹊大学10号館
格調高い雰囲気の成蹊学園本館

今回の一生モノのプロフェッサーは成蹊大学文学部日本文学科の森雄一教授である。
まず、森先生が所属する日本文学科のアピールポイントから伺おう。

「8人の専任教員スタッフがおりまして、古代から現代までの日本文学や日本語の歴史、さらに現代日本語まで幅広く扱っています。特徴的なのは、日本語力のアップに力を入れていることです。『日本語力錬成科目』を設け、『話す』『書く』『漢字』『コンピューター』について広く学べるようになっています」

この日本文学科から始まった日本語力アップ講座は、いまや成蹊大全学に広がっている。
ただし他学部に用意されているのは、やや入門編的な内容のものになっているという。
さらに成蹊大学日本文学科を特徴づけるものに「日本探究科目」がある。

「これは日本文学から少し離れて、その周辺の日本文化を探究し『日本とは何か』について考察する科目です。半期ごとに探究テーマを変えていて、たとえば今年度(10年度)ですと『関東と関西』『日本の怪異談』が設定されています」

「日本語力錬成科目」といい「日本探究科目」といい、ユニークかつ魅力的な科目の数々といえよう。
なお成蹊大学日本文学科には、外国人に日本語を教える教員になるための「日本語教員養成課程」と国語の教員をめざす「教職課程」も用意されている。

隠喩や換喩・提喩などの日本語レトリック研究

成蹊学園キャンパス
ケヤキ並木も色づいていて

森先生のご専門は「日本語学」と「認知言語学」である。
具体的には「比喩」についての研究で広く知られる。
比喩というのは、「隠喩」(メタファー)などに代表される『たとえ』のことだ。

「勇敢な人を『あの人はまるでライオンだ』のように例えるようなことが比喩になります。この比喩は『隠喩』や『換喩』(メトニミー)『提喩』(シネクドキー)などに分類されます。換喩の例としては童話の『赤ずきんちゃん』が典型的ですね。彼女は赤ずきんに似ているわけではなくて、いつも赤ずきんを被っているという設定によって置き換えられているわけです」

残るもうひとつの比喩である提喩。
これこそが森先生のいま主要な研究テーマである。

「提喩は『類』と『種』の関係からなります。たとえば『花見』といえば、上位カテゴリーの類の『花』から、下位カテゴリーの種である『桜』が導き出される。このようなケースのことです。逆に種から類が導き出されるケースもあって、『マスオさん』が『妻の両親と同居する男性』を表わすような例になります。つまり、カテゴリーの階層間で起こる意味の変化や対象の呼び換えが提喩になります」

森先生が提喩に注目して研究するようになったのは10年ほど前からのことで、その研究がようやくまとまりかけてきたところだという。

「提喩の研究では具体的な例を1つひとつ探し出して、それを細かく区別してパターン化していく作業になります。それぞれのパターン特性の抽出、あるいは隠喩や換喩との関係についての考察になります。たとえば隠喩は提喩が2重に重なったものだという通説がありましたが、いろいろな例で調べていくと、そう断定し定義することは出来ないことが分かってきました」

森先生の研究テーマは、比喩・提喩をふくめレトリック(ことばのあや)の研究が基調になっている。
とくに反対語を結びつけて意味をなす対義結合(オクシモロン)などの研究で、これまでに多くの実績を残してきた。

こと「日本語力」においては誰にも負けないで

大学のホームタウンは吉祥寺

成蹊大学文学部の専門ゼミ演習は、3~4年次学部生が対象である。
森先生のゼミでも例年10人あまりのゼミ生を受け入れている。
選抜方法は入ゼミ試験を実施して、その成績順で決められるという。
具体的なゼミ内容について森先生に聞いた。

「まず3年次の前期は、現代日本語についての文献講読にあて、卒業論文に向けての研究方法なども身に付けてもらいます。卒論のテーマは、わたしのゼミではゼミ生自身で決めることにしています。このテーマ設定で悩んだり時間がかかったりするゼミ生が多いですね。ただ大学4年間の学びにおいてこの選択・決断が一番大切ですから、この基本は徹底させています」

各自テーマが決まると、3年次後期はプレ卒業論文(ゼミ論)を作成していく。
そして4年次に入って本格的な卒論の作成にかかる(プレ卒論とは別テーマでも可)。
卒論テーマは現代日本語に関するものであれば基本なんでもOKで、実際に非常にバラエティーに富んでいるらしい。
ところで森ゼミの名物に、難読の漢字単語ドリルに全員で毎回挑戦していることもあげられる。

「せっかく日本語学のゼミを取っているんですから、日本語力でほかの人たちに負けないでほしいという想いから始めました。そのため漢字単語のボキャブラリーを増やすことを目的に、毎回ドリルをやってもらっています。全員とも語彙レベルはかなり高くなっていますね」

この毎回の漢字単語ドリルは、なんと森先生の手作りである。
ゼミ生のために労を惜しまない先生の想いが伝わってくる。
あらためて学生たちへの指導方針については次のようのように語る。

「総じて成蹊大学生は、きちんとした人が多いんですね。最近は個性を重視した大学教育が注目されていますが、そのきちんとした性格・雰囲気がここの長所ですから、それを伸ばしてあげられるような指導を心掛けています」

その反面、若者らしい個性的な人がちょっと少なくて淋しいとも語る。
さらに森先生はこんなふうにも言う。

「これがスクールカラーなのでしょうが、成蹊大生は人間的にしっかりした学生さんが多いですね。今どきの若者としては珍しいほどにきちんとして穏やかでバランスがみんな取れています」

こんな生徒に来てほしい

さきほどのスクールカラーに付け加えますと、何かにひた向きに取り組む学生さんも多いですね。
それを周りから茶化したり馬鹿にしたりする人がいないのも大きな特徴といえます。
そうした成蹊らしい良いところを継承できるような人に来ていただきたい。
さらに、わたしの立場からいえば、言語・日本語に興味のある人ということに当然なりますね(笑)。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。