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GOOD PROFESSOR

東京理科大学
薬学部 生命創薬科学科

深井 文雄 教授

ふかい・ふみお
東京理科大学大学院理学研究科化学修士課程修了。東京理科大学薬学部臨床病態教室講師、以下、助教授をへて教授。途中、分子病態教室に名称変更。薬学部生命創薬科学科教授。総合研究所・DDS研究センター細胞生物研究グループリーダー。
主な著作に『Vascular Biology』(メディカルレビュー)『生命薬学テキストシリーズ 病態生理・生化学(監)』(共立出版)『細胞外マトリックス研究法(特)』(コラーゲン技術研修会)などがある(著作はいずれも分担執筆)。

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細胞内「接着分子」から見えてくる画期的治療法

深井研究室が入る「薬学部15号館」
東京理科大学野田キャンパス正門

東京理科大学薬学部は薬剤師資格取得を目標とする「薬学科」(6年制)と、医薬創製研究者の人材育成をめざす「生命創薬科学科」(4年制)の2学科から構成される。今回紹介する深井文雄先生は後者の生命創薬科学科教授である。



「生命創薬科学科の学生は大学院への進学率が高く、92%(2010年度)にも上ります。彼らは学部4年次から大学院での計3年間を研究に没頭していきます。この学部には、ゲノム創薬研究センターや分析化学研究センターDDS(薬物送達システム)研究センターなどいくつもの付属研究機関や部門があり、学生が研究に没頭するには申し分ない環境が整えられているといえます」



しかも、学部生も修士課程の院生も各教員の研究を手伝いながらそれぞれの卒業研究や修士論文を仕上げるので、創薬における世界最先端の研究に触れながらできるメリットもあると深井先生は語る。



なお東京理科大学薬学部では、薬学科学生が生命創薬科学科研究室に配属することも認められている(4~6年次)。これは薬剤師の資格取得を目指しながらも創薬研究にも携わりたいという学生が少なからずいるための措置である。



これによって、薬学科で学ぶからには薬剤師になる以外にないという従来の弊害から免れる道もできたことになる。薬学系に進みたいという現役高校生にとっては朗報といえよう。



深井先生の専門研究分野は「分子病態学」で、最近の研究テーマは「接着分子」である。この分野ではわが国の権威的な存在である。まずは「分子病態学とは」から説明していただいた。



「ヒトの病気にはいろいろな種類がありますが、基礎医学や分子生物学の発達によって、少しずつではありますが、かなりの病気について発症メカニズムが理解されるようになってきました。ということはその治療法も次第に分かってきたということです。



その一方で、全く未解明の病態現象も数多くあります。そうした未解明の病態の現象を分子レベルで明らかにして、そこから新たな治療法を探り出していくのが、私たちが研究している分子病態学になります」

ガン腫瘍の浸潤・転移を制御する物質を発見

東京理科大学薬学部校舎点描
水辺の薬学部カフェテリア

この分子病態学のカテゴリーにおいて深井先生が特に着目しているのは「細胞」で、なかでもその「接着分子」について研究を深めている。



「ヒトの身体は、臓器などのように固まっている組織と、血液などのように不定形で固まっていないものから構成されています。この固まっている組織は、細胞の1つひとつが接着分子によって固形化しています。

かつてこの接着分子は細胞を接着させるだけの機能しかないと考えられていました。ところが、この接着分子が正常に機能していないと、細胞の増殖・分化やタンパク質の合成・分泌、なにより細胞の生存そのものなど、細胞にとって基本的で重要な働きに支障を来すことが分かってきました」



さらに、不定形な血液などを構成している細胞にも接着分子が存在し、重要なはたらきをしているという。



「たとえば血液は出血すると凝固しますが、これにも接着分子が大きく関与しています。あるいは傷口が化膿することがありますが、これは血液中の白血球が細菌を食べることで起こる現象です。ここでも、血管内にあった白血球が血管から外に出て、そこで細菌を食べたりする等の現象に接着分子が関与しているのです」



このように人体内において重要なはたらきをする接着分子。しかし、これが必要とされていないところで活性化したり、必要なときに活性化されなかったりすると、いろんな病気につながっていく原因ともなる。



「この接着異常が原因で引き起こされる病気には、脳梗塞はじめ心筋梗塞やガン・炎症性疾患・神経性疾患などがあります。いずれもヒトの生死に直結する重篤な病気に至るケースが多いのです」



このうち深井先生はガンと炎症性疾患・神経性疾患について、細胞の接着異常という観点からさまざま治療法の研究を進めてきたことで知られる。そのうち悪性ガン腫瘍の浸潤・転移については、その接着をコントロールできる物質の発見に成功した。もちろん先生たちの研究グループによる世界初の画期的業績だ。



この物質により接着を制御しながら抗ガン剤を併用することで、ガン治療に新たな光明が見い出せるのではないか――こうした深井先生らの研究のゆくえに世界中が注目している。

「自律/自立」精神で一生モノの対象を見い出す

最寄りの東武野田線・運河駅

東京理科大学薬学部の学部生の研究室配属は4年次4月からである(実際には3年次2月ごろに仮配属になる)。深井先生の研究室でも毎年度6~8人を受け入れている。このなかには生命創薬科学科の学生ばかりでなく、先述のように数人の薬学科の学生が含まれることもある。同学部の学生の配属決めはちょっと変わっていて面白い。



「3年次の夏から学生たちの研究室訪問が自由に行われます。学生たちは自分が注目する研究室を訪ねてはその研究内容や雰囲気を感じ、わたしたち教員のほうは訪ねてくれた学生の人物を細かに観察することにもなります。熱心な学生は3回も4回も訪ねてくれることもありますね」



研究室を訪ねてきた学生に対し、深井先生は1時間半から2時間ほどもかけて自ら個別に説明するのだそうだ。これが実質的な面接となって、配属学生が次第に決まっていく。なお深井研究室入りするためには、大学院に進学することが前提条件となる。

あらためて学生たちへの指導方針については――



「ぜひ『自律/自立』できる人になってほしいと思っています。人生の目標を立ててそれに近づくためには、この『自律/自立』の精神が重要にです。理想としては一流をめざす人になってほしい。そのモチベーションを持ち続けるために、小さなことでも良いから学生時代にぜひ成功体験を味わってほしいですね」



インタビューの最後にこんなことばで結んでくれた。



「わたしたちの研究は初めから創薬そのものを目指しているわけではありません。生命現象の不思議や面白さを追究するのが先にあって、その結果として創薬がついてくるのです」

こんな生徒に来てほしい

学生を偏差値で測るようなことは個人的にはしたくないのですが、本学の学生も偏差値の高い人から少し低めの人まで在籍しているのが現状です。ただ、こと『研究力』に限ってみますと、偏差値に比例するとは限らないことを日々実感しています。現役受験生においても目先の受験偏差値が低いからといって悲観することはありません。



その一方で偏差値の高い人は、『勉学に努力することができた自分』にもっと自信をもって目の前の勉強以外のいろいろなことにもチャレンジして欲しいとも思っています。ですから、「この目標にだったら惜しまず努力ができる」という対象を早く見つけることが肝心になりますね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。