早稲田塾
GOOD PROFESSOR

中央大学
総合政策学部

松野 良一 教授

まつの・りょういち
1956年生まれ。’79年九州大学教育学部(心理学)卒。’98年筑波大学大学院教育研究科修士課程修了。’03年中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。’82年朝日新聞入社。’92年TBS(東京放送)入社。’96-’97年ハーバード大学客員研究員(フルブライト留学)。’03中央大学総合政策学部助教授。’05年より教授。’11年11月から大学院総合政策研究科委員長、’13年11月から総合政策学部長。

著作は『映像制作で人間力を育てる』(共著・田研出版)『パブリック・アクセス・テレビ』(訳書・中央大学出版部)『市民メディア論』(単著、ナカニシヤ出版)など多数。
松野教授が主宰する研究室のURLアドレスはコチラ↓
http://www.matsuno-lab.com/

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松野研究室が入る多摩「11号館」
中央大多摩キャンパス図書館

ジャーナリズムの実践活動で人間力が育つ

今週ご登壇願ったのは、中央大学総合政策学部の松野良一教授である。先生は、朝日新聞にTBSと、わが国を代表するマスメディアで報道記者・ディレクターとして活躍した経歴の持ち主だ。まずは、その所属する中央大学総合政策学部のことから語ってもらおう。

「これまでの大学は法学なら法学、経済なら経済などと単一の学問を縦割りで学ぶシステムでした。しかし、国内外で発生する社会問題は複雑に絡み合っています。これらを解決するためには、複数の学問からアプローチすることが必要です。その視点から生まれたのが総合政策学部です」

この学部では社会問題の解決方法について具体的に学ぶ。

「つまり、環境・少子高齢化・生命倫理・地域過疎などから犯罪やいじめの問題までを、どうやって解決を図っていけば良いのかについて、法学から行政学・経済学・社会学・心理学・歴史学・宗教学・ジャーナリズムなど様々な領域を動員して総合的に考察していくトレーニングをします。そして最終的には、問題解決のための専門的リーダー育成をめざしています」

また中央大学総合政策学部には「政策と文化の融合」という面もあり、これもまた他の大学にない特徴なのだという。時あたかもグローバル化の時代。企業やNGO団体など、現代日本人の働く場所は、ますます海外へと広がりつづける。

「企業の進出先では、現地の文化や宗教・習慣・風土などをよく理解し尊重すべきです。日本のやり方をただ押しつけるだけだと摩擦が生じます。そのため中央大学総合政策学部では、英語だけでなくアジア地区を中心に10もの外国語を履修できますし、同時に多文化を学べるカリキュラムになっています」

そう語る松野教授の研究テーマは「メディア表現活動と能力開発」。見えない社会問題や文化現象について、取材活動とメディアツールを使って可視化させていく方法論を学ぶことで、「総合政策」に寄与しようというものだ。

ゼミ生が制作する「多摩探検隊」の収録風景
多摩キャンパス内メーンストリート

歴史的事件の証言記録と地域再発見番組の制作

この松野教授の専門の詳細については後で述べることとして、ここでは松野教授が担当するゼミ(演習科目)のことから聞いていこう。

総合政策学部の専門ゼミは「事例研究」と呼ばれ、学部の3~4年次学生が対象。必修で卒業論文を作成することが最終目標である。松野教授のゼミでは例年各学年10人ほどのゼミ生を受け入れている。

さらに、これとは別に、中央大学にはFLP(Faculty Linkage Program)なる制度が用意されている。これには「ジャーナリズム」「国際協力」など5つのプログラムが開設され、総合政策学部だけでなく全学部から応募できる。つまり、学部横断型のゼミである。学生は5つのプログラムの中からひとつを選んで参加履修できる(対象は2年生からで、1年次に選抜試験がある)。

松野教授は、これら5つのうちの「ジャーナリズム」プログラムの指導を担当する。こちらには学部の枠を越えた50人の学生が集う。

「わたしが主宰しているゼミは、学部事例研究の3~4年次20人とFLPプログラム50人の計70人。2年次から4年次までの学生を混ぜてグループをつくり、各グループでは、社会学分野のエスノグラフィー(民族誌学、英ethnography)、あるいはジャーナリズム分野のルポルタージュ(現地報告、仏Reportage)の方法論を使って、2つの課題に取り組んでもらいます」

この2つの課題とは、「歴史的事件の証言記録」と「地域再発見番組の制作」のこと。ここで注目したいのは、これらの課題を淡々とこなして簡単なリポートを提出すれば良いというレベルではないということだ。

2つのうち歴史的事件の証言記録については、成果が一般書籍として刊行されている。そして地域再発見番組のほうは10分間のドキュメンタリーとなり、多摩地区と首都圏・九州のケーブルテレビ計19局でレギュラー番組として放送されている。
「歴史的事件の証言記録については、中央大学から学徒出陣して戦場に駆り出されて戦死された方の遺族や生き残った方々に、後輩である現役学生たちが取材し、等身大のルポルタージュとしてまとめる作業をしています。これまで『戦争を生きた先輩たち』(中央大学出版部)というタイトルでⅠとⅡが出版されていて、まもなく刊行されるⅢで完結になります。台湾や韓国にも中央大学の卒業生がいることから、海外取材も敢行しています」

さらに現在進行しているものに、(1)沖縄の戦中・戦後の証言を記録した「沖縄問題の証言」(2)サハリン沖でソ連戦闘機に撃墜された「大韓航空機007便撃墜事件」(1983年)における日本人遺族の証言記録(3)「台湾二・二八事件」(1947年2月28日勃発)に巻き込まれた中大卒業生の証言――などがある。

いずれも、これから書籍化が予定されているという。埋もれている歴史的事実を、学生たちの取材により可視化させていこうという社会貢献度の高い活動である。一方の地域再発見番組については――

「『多摩探検隊』という番組タイトルで、企画から撮影・編集まで全て学生の力だけで進めています。放送開始から10年になりますが、いまでは多摩地区や首都圏・九州のケーブルテレビなど計19局で放送され、視聴可能世帯数は260万にも及んでいます。これはユーチューブなどWebでも配信されています」

この『多摩探検隊』の番組内容の一部については「松野良一研究室」のURLでも見られるので、ぜひアクセスしてほしい。これら放送された番組は、「地方の時代」映像祭(NHK・民放連主催)や「東京ビデオフェスティバル」などのコンテストで多数の入賞実績を持っている。

初めのうちは、取材対象者とうまくコミュニケーションをとることが出来なかった学生たちが、取材を繰り返して実社会と接触する過程で日ごとに大きく成長していくという。

初秋の中大多摩キャンパス点描

マスコミ就職も夢ではない一生モノのゼミ

さて、松野教授自身の研究テーマ「メディア表現活動と能力開発」についてだが、それこそゼミ生たちが日々の実践活動によって成長していく過程の実証研究そのものといえる。

メディア表現と能力開発の関係モデル図

「わたしは、歴史的事件の証言記録やテレビ番組の制作という課題に取り組んで、最終的にアウトプットをしていくというプロセスが、学生たちの眠っている様々な能力を開発させ強化していくという仮説を立てています。これを実際にゼミ生たちに体験してもらい、さらに効果測定まで実施して、最初に立てた仮説を検証するのが研究テーマのひとつです(掲載図参照)」

この才能練磨の過程は、ゼミ生が就職活動する際に大いに有効性を発揮するそうだ。なんとNHKや朝日新聞・電通などのマスコミ関係へ進んだOBOGはこの7年間で65人を数えるという。あらためて学生たちへの指導方針について次のように語ってくれた。

「わたしのゼミでは、5つの基本的な柱というのを決めています。つまりは、(1)よく読書し、よく映画(ドキュメンタリー)を観る(2)よく議論をする(3)アウトプットを出す(書籍やドキュメンタリー作品)(4)現場に行く(5)関係者の話を聞く――この5つを心掛けてもらうわけです。これによって、コミュニケーション能力や交渉能力などが飛躍的に向上していきます」

こんな学生に来てほしい

冒険心や好奇心が旺盛で、国内外のどこでも行ってみたい人。仲間とディスカッションするのが好きな人。正義感の強い人――。そんな人に来てほしいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。