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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

解散総選挙の時期と理由

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では前回の宿題となっていた、「なぜ新首相は衆議院を急いで解散するのか」に触れよう。この記事を書いている時点で、新首相には麻生太郎氏が選ばれ組閣も終了している。しかし、国会はまだ開かれていないので、7条解散を麻生首相が決断するか否か、正確にはわからない。ただマスコミは一斉に、少なくとも11月までには解散総選挙をすると報じているので、そこを信じた上で述べる。

まず押さえておきたいのは、年内に解散しなければならない法的根拠はないという点。衆議院議員の入れ替え(総選挙)を絶対にしなければいけないのは、約1年後の任期満了だ。ここで指摘されているのは

・民意を得ていない首相が麻生氏で3人目である

だ。小泉純一郎首相が、自ら解散して自民党大勝を導いたのは’05年。その議会で小泉氏は首相に指名された。だから彼は民意を得ていると解してよかろう。しかしその後に誕生した安倍晋三政権、福田康夫政権、麻生太郎政権を選んだのは、最終的には’05年総選挙で選ばれた衆議院議員。’05年当時の自民党(衆議院の過半数を持つ=首相を指名できる勢力である)のトップ(総裁)は小泉氏。以後の首相も皆自民党出身。こうなると、「小泉氏がトップの自民党」を支持した有権者からの得票議席で、自民党は小泉氏でない人物を3人も選んだことになる。これでは「たらい回し」ではないか、と批判する者は多い。

もっとも、衆議院の任期4年は憲法が定めた規定で、その範囲内で首相が替わって何が悪いとの反論も可能。言い換えれば、有権者(選挙権を持つ国民)はその後の政局を覚悟した上で’05年に投票しているのだから、その結果で行われることに対して、文句を言われる筋合いがないともいえる。

次に、野党民主党を中心になされている批判を紹介しよう。それは

・直近の民意で自民党は選ばれていない

である。国権の最高機関である国会は衆議院と参議院の二院。うち参議院通常選挙は’07年に行われて、民主党が大勝した。その結果、現在衆議院では劣勢で野党の、民主党、日本共産党、社会民主党、国民新党、新党日本に所属する参議院議員が、過半数(総定数242人)の121人を上回る130人で、与党の自民党と公明党をしのぐ。いわゆる「ねじれ」が衆参で起きているのだ。

野党は「’05年は自民圧勝だったが、’07年は野党が過半数を獲得した。直近(最も近い)の国民(=主権者)の意思(これが「民意」)は’05年の結果ではない。したがってその結果で選ばれる首相に正統性が薄いのは明らかだ」と主張できる。

これら野党の主張とは別に、解散すべき理由として

・衆議院は参議院に対していくつかの点で優越している

が挙げられよう。前回述べた首相の指名や不信任決議案の可否もその一つ。他にも、予算を参議院より先に審議できるとか、予算案の可否が衆参で異なった場合などに優越が認められる。一般の法律でも、衆議院可決→参議院否決の場合に、衆議院は3分の2の賛成で再可決できる。

なぜこうした優越が認められているか、ハッキリとした文章は憲法にも他の法律にも書かれていない。おおよその判断は

①衆議院の任期は4年で参議院の6年より短いため直近の民意を汲みやすい

②衆議院は「民意を問う」形で解散ができるから民意に近い

あたりだ。
与党自民党の判断も当然ある。現在の自民党の衆議院議席数は300を超え、連立与党の公明党を加えると330議席を超える。総定数480の過半数たる240はもちろんのこと、再議決が可能な320をも突破している。この’05年総選挙で与えられた圧倒的な数が、痛しかゆしと想像できるのだ。

’05年総選挙の結果は、自民党が結党した1955年以降1・2を争う圧勝だった。ということは、次回総選挙ではこの時より数を減らす可能性が高い。だからできるだけ維持したいけれども、任期は後1年しかない。ならば満了まで続ければいい。計算方法によって若干異なるものの、任期満了選挙の投開票日はだいたい想像がつくから、そこまでに準備万端整えて議席減を最小限に食い止めるか、あわよくばさらなる議席増を狙えばいいではないか、との反論ができそうだ。

しかし、この「準備万端」は同時に野党にも与える結果となる。首相は自民党総裁だから、自民党に有利な結果が望ましい。そして7条の解散権は前回述べたように首相のみが持つ。ならば「相手も準備万端」となる任期満了を待たずに、少しでも与党に有利なタイミングで解散を打たない理由がない。事実、戦後の任期満了選挙は1回しかない。どうやらその時期が今らしいとの観測で、年内の解散総選挙説が当然のように流布しているようだ。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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