アメリカ大統領選挙② とても不思議な直接選挙
アメリカ大統領は直接選挙で選ばれるといわれる。その通り。ただし選び方が少し変わっていて文字通りの直接選挙とは違う。
不思議1 選挙人
普通の直接選挙……候補者の得票数トップが当選するか、上位2者が決選投票する
アメリカ大統領……候補者は各州に割り当てられた選挙人を獲得する
要するに大統領選は「オバマ候補に1票」「マケイン候補に1票」ではなく、「オバマ(またはマケイン)候補を支持する(自分のいる州の)選挙人を選ぶ」というややこしい話になる。この結果として、選ばれたオバマ候補支持の選挙人が、本選挙で「マケイン」と投票する自由は許されている(そうなんです!)が、現実にはほとんどあり得ない。ならば最初から「候補者支持の選挙人選挙」ではなく、「候補者への選挙」にすればいいのに、慣例を守ってそうしないのだ。
不思議2 勝者総取り
勝者総取り(ごく一部の州を除く)
だ。つまり選挙人は各州で1位となった候補が独占できる。例えば
選挙人10人のX州(有効得票10万票)……と仮定して
A候補6万票、B候補4万票
となったら選挙人の割り振りはどうなるか
× Aが6人、Bが4人
○ Aが10人、Bが0人
つまりAが10人を独占する。だから「総取り」である。その理由は「●不思議4」で述べる
不思議3 1票の格差あり
では各州の選挙人数はどう決められているか、というと上下両院の議員数と同数である。
アメリカ議会は上院と下院の二院で構成される。うち下院議員の議席数は、人口比率で厳密に1票の等価が守られている。しかし上院議員は各州2人。人口最大のカリフォルニア州は約3,500万人。最少レベルは北西部のワイオミング州で約50万人。これほどの差があっても「上院議員2人」は変わらない。法の下の平等など、個人の権利や民主主義の原則をひときわ重んじるはずの米国が、「1票の格差70倍」を許しているのはなぜか。
その理由は建国時点にまでさかのぼる。米国の独立は、現在の北東部にある13のイギリス植民地が独立革命によって成し遂げた。1783年のパリ条約で、イギリスが米国の独立を承認した……という認識が一般的だが、承認された「米国」とは13植民地の同盟体である連合会議であり、連合規約で結ばれていた。独立によって植民地はState(ステーツ)となる。今では「州」と訳されるが、当時の感覚ではステーツは1つ1つが国家だった。United Statesとは「マサチューセッツ国」「コネティカット国」など13国家の連合で、現在の国際連合のミニチュア版のようだった。
連合規約はこれらの13ステーツが独立という目的一点において成立した部分が大きく、それを果たしてからは不都合が生じた。特に国際面で他国と外交関係を結ぼうにも13ステーツを代表する機関も役職も人物もいない。ステーツごとに税制も刑罰も皆違う。これでは具合が悪いと考える者もいたが、ステーツこそ自分の所属する国家で、その上に何らかの権力を置くのは嫌だという勢力も強かった。
したがって1788年に成立の合衆国憲法を審議した、前年の憲法会議は、今でこそ「憲法会議」と呼ばれるが、当時は「連合規約改定の話し合い」を名目に、いわばステーツ重視派を出し抜く秘密会として開かれた。
そこで当然議論になったのが、連邦(United States)の代表をいかにして選ぶかだった。最初に提出されたのが
<バージニア案>
人口に比例した議員を選出して二院制とする
だった。しかし人口の少ないステートがそれでは損だと、
<ニュージャージー案>
ステーツの人口の多少を問わず同数の議員を選出した一院制にすべし
で対抗した。前者では小さなステーツが納得しないし、後者では多数を抱えるステーツが飲めない。そこで両方を混ぜ合わせるような案が出た。
<コネティカット案>
ステーツごとに同じ数の議員で構成する上院と、人口比例にする下院の二院制とする
新たな中央政権はステーツの代表でもあり国民の代表でもあるという、よくわからない提案だった。
しかし、そこが米国史の面白いところで、コネティカット案で行かないと結局はまとまらないからいいとしようと決着した。
偉大な妥協
と呼ばれている。
だから上院は「州=国の代表」を送るのだから同数。下院は国民の代表だから人口比例、となったのだ。
不思議4 大統領は「州の代表」兼「米国民の代表」
その論理を大統領の選挙人数も引き継いでいるので、「大統領は国民1人1人の代表」というよりは「我が州は彼を選ぶ」という意思表示の表れといえよう。州の意思・州の代表なので「総取り」がふさわしい。しかも、選挙人の数を決める圧倒的多数が下院議員の議席数だから、国民の代表という面も果たしている。
最近では一部の州で、この「総取り方式」を見直す動きもある。逆にいえば州単位で見直してもいいわけで、ここでも「州=国の代表」の様子がうかがえる。
なおワシントンD.C.(首都)は、連邦議会(上院・下院)のいわば「直轄地」なので、州の代表である上院議員はいない。下院議員のようなポストはあるが、議会での投票権がない。とはいっても人は住んでいるので(当たり前だ)、大統領選ではミニマムの単位(上院分2・下院分1)である3人の選挙人がいる









