1. 【早稲田塾】大学受験のための塾・予備校
  2. 坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】
  3. 出版不況と電子出版の可能性

坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

出版不況と電子出版の可能性

mixiチェック

出版科学研究所の分析によると、09年の書籍および雑誌の推定販売金額が、2兆円を下回るのが確実となった。1989年の「2兆円超え」から20年。96年には2兆6563億円にまで上り詰めた出版業界の縮小は甚だしい。

意外に思われるかもしれないが、出版界はそもそも小さい。例えばパナソニックの1年の売上は約8兆円(連結)で、NTTドコモも4兆円を超える。つまり「オール出版社」で戦ってもドコモ1社の半分以下、パナソニックの4分の1しか売上がない市場なのだ。

「2兆円超え」から躍進したのが雑誌だった。書籍が1兆円前後に停滞するのに対して、雑誌は一時期書籍の1.5倍ほどに伸びた。今回の2兆円割れの状態で、雑誌は書籍とほぼ同規模まで縮まっている。広告媒体としての雑誌の魅力が急速に落ちているのが大きな原因だ。

一方の書籍も決していいとはいえない。1999年から07年まで、7巻で完結した「ハリーポッター」シリーズの売上が全体を吸引していた面が否めなく、出版社に寄与する10万部以上のヒット作が減ってきた。また数こそ減らなくとも、店頭から消えるスピードが早くなった。これは次のような思惑による。

新刊を出しても「初速」が出なければ書店は返品してしまう。これを覆して売上につなげるのは大変むずかしい。というわけで、不発だった作品は早々にあきらめて新刊を急ぐ。この連鎖の結果、「2兆円超え」の頃の倍以上が今では製作されている。しかし書店のキャパシティーが急拡大しているわけではないから、当然ながらキャパを超える新刊が流れ込む。それらを棚に並べるには返品を急ぐか、新刊であっても売れそうにないと判断したら返してしまう「即返品」まで起きている。近年の返品率は約4割。つまり刷った本の半分近くが出版社の倉庫へUターンしてしまうのだ。

「初速」を出そうとする安易な本作りが、問題視されてもいる。一人があたるとその人へ群がる。その人が物書きを本業としない場合は、オリジナル作品完成に時間がかかるので編集部が聞き書きし、必要な資料を並べて文章として筆者に点検してもらい、出版してしまう。当たり前のように内容も似たり寄ったりだ。書き手による推敲のいとまもない。

いわば袋小路の様相を呈してきた出版界が注目するのが、電子出版である。ネット書店最大手のAmazonが開発した電子書籍端末「Kindle」の登場などで、実現化のイメージがふくらんできた。

元来、書籍を紙で印刷した理由は、最もコンパクトに情報がまとめられるからだ。グーテンベルクが活字印刷機を発明した15世紀以降、大量の情報を広く伝える最高の手段が紙だった。そこに速報性と網羅性を求めたのが新聞であり、専門性を得意としたのが書籍である。しかし電子出版が推進側の思惑通りに進んだとしたら、紙は「最もコンパクトに情報がまとめられる」の座からは降りざるを得ない。

現在のテクノロジーならば、何百冊という本を小さなディスクに収めるのは可能だ。すでに平凡社大百科事典がCD-ROM1枚で提供された例もある。出版社側からは、印刷・製本・輸送のコストが大幅にカットできるうえに、仕組みが完成すれば返品リスクも減少する。うまくすれば「返品」という概念すら消滅するかもしれない。読者も、電子書籍端末が書籍を読むのと同じ程度のストレスにまで低下すれば、文句はない。

問題は、紙から一足飛びに電子出版一色と激変するとまでは思えない点。紙の本に愛着を持つ読者はなお多いし、著作物を本の形で世に送り出すのを一つの到達点と考える作家も少なくない。電子書籍が伸びるとしてもしばらくは併存となろう。となると「併存は可能か」という課題に突き当たる。

例えば出版社の編集者と著者が、ある作品を紙で世に送り出し、売れたとする。すると電子書籍端末を持つメーカーが著者と交渉して、出版社よりいい条件の著作権使用料(印税)を示してきたらどうなるか。ドライな著者ならば乗り換えそうだ。作品の著作権は著者にあり、同時期にまるきり同じ本を別の会社から出版するのは禁じられているものの、デジタル化にその縛りがない。前述のように、出版社の本の「定価」には「印刷・製本・輸送」などの経費を盛り込んである。半面で、電子書籍端末メーカーはそれらがまったくない上に、作品が売れるのは確実だから好条件を示すのも可能なのだ。

カテゴリ一覧

著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

オススメ情報

早稲田塾の春期授業 勝春<カチハル>2012
ちょっと早くはじめたい新高3・2・1生のための2月・3月スタート講座
現役合格実績
竹中平蔵 世界塾

月~土 / 11:00~20:00 日・祝 / 10:00~18:00 ※携帯電話PHSからもご利用頂けます。

早稲田塾の春期授業 勝春<カチハル>2012
校舎一覧
{*
冨永麻美
戸張賢司
髙橋拓宙
*}
{php} include "/home/ad-site-usr/htdocs/waseda/common/ssi/floating_menu.php"; {/php}