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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

新聞社のビジネスモデル1

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10年2月、朝日新聞は大分県と佐賀県で発行していた夕刊を廃止すると社告で明らかにした。すでに毎日新聞社も北海道での夕刊を08年8月末に廃止している。広告出稿や読者の減少が引き金であるのは間違いない。

日本国内で「全国レベルの報道機関」と呼べるのは主に新聞社と通信社である。具体的には読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞と共同通信と時事通信だ。民放テレビの取材力を遠くしのぐ。ただしNHKだけは別格で、大新聞社と同等以上の取材力がある。

しかし、それだけで読者を引きつけるのはもはや不可能な段階に入っている。夕刊の撤退に見られるような一種のリストラに加えて、新聞社間の垣根を越える模索も始まっている。08年からは読売、朝日、日経の3社が共同して、インターネットのニュースサイト「新s(あらたにす)」を開始した。毎日と共同は09年末に協力関係の強化で同意した。いずれもまだ、新しいビジネスモデルの構築には至っていない。

ではこれまで主に新聞大手が用いてきたビジネスモデルとは何だろうか。それは「特殊指定」「再販売価格維持制度」を知らなければわかるまい。今回は特殊指定について述べる。

新聞の特殊指定とは1947年制定の独占禁止法に基づく。同法はすでにある企業や団体が、その規模や売り上げなどを維持・発展させるために手を組んで価格を統一したり、新しい勢力の登場をじゃましたり、ありえない安売り攻撃でライバルをつぶすような「不公正な取引」を禁じている。そうした行いは巡り巡って消費者の選択を少なくして、消費者が高い商品を買わされ続ける危険があるからだ。

ただ「不公正な取引」といっても業種によってさまざまだから、同法を運用する公正取引委員会(公取委)は、その特殊性から「不公正な取引」の内容を名指しして明記させる指定ができる。「あなたの業種は特殊だと指定する。だからあなたはこれを守りなさい」というわけだ。これが特殊指定で、新聞も「あなたの業種」となり1955年に指定された。

「これを守りなさい」は「新聞業における特定の不公正な取引方法」という名の公取委告示で決められている。告示とは公取委のような公の機関の決めごとを知らせるという行為で、新聞特殊指定告示の「不公正な取引方法」とは、新聞発行本社や販売店双方が地域や相手によって異なる定価をつけたり、割引販売することなどを指し、それをすると法律違反になる。

05年11月に公取委は「これを守りなさい」の告示を見直したいと発表した。見直し、ないし廃止となると「地域や相手によって異なる定価をつけ」てもいい、「割引販売」もしていいとなる。「地域や相手によって異なる定価をつけ」てこそ、適切な競争となって消費者が納得できる価格に収まる。そもそもそれが独占禁止法の目指すところで、同法で同法の理念に逆行するような告示をしているのがおかしい……というのが公取委側の主張である。

それに対して日本新聞協会など新聞側は反対した。新聞は読者に「知る権利」を提供するサービス業である。「異なる定価」「割引」を認めたら販売店が値下げ競争に突入して、体力の弱い新聞社や販売店の経営維持が難しくなる。他の商品やサービスと違って「体力の弱い新聞社」イコール情報の質が低い新聞社、ではない。したがって強い者だけが生き残る競争にさらせば、同じ情報を高い値段で得なければならない地域が生じたり、いろいろな新聞を比較できなくなって多様な言論が失せたり、販売店のビジネスモデルである宅配制度が崩壊して読者に不便を強いるといった反論を示した。「知る権利」の「機会均等」を脅かすというのが主旨といえよう。

公取委は特殊指定との因果関係を認めなかったが、指定廃止で宅配制度がピンチに陥るのはほぼ自明である。こうした声に押されるように公取委は廃止を見合わせたのだが、新聞側に国民の強い支持がわき起こったというほどでもなかったのは反省を要する。

まず宅配が文字文化や知る権利を支えているのか。今時宅配のお陰で、朝起きて朝食の際に朝刊を広げるという習慣が多数あるのだろうか。

次に特殊指定が廃止されて数紙から選べる現在の状況が一変し、読者の新聞選択権が損なわれるという新聞側の主張は響いたのか。朝日・毎日・読売以外は国内記事を共同・時事という通信社の配信に多くを頼っている。日本の大半の地域では、その道府県のみに強烈な読者基盤を持つ地方紙が存在し、おそらく特殊指定がなくなっても生き残る。その地方紙には共同の記事が北も南も同じように載っている。選択権も何もないと言われると痛い。

特殊指定の是非をきっかけに、文字通りの多様な言論が花盛りとなり、公取委が指摘する余地さえなくす努力が、新聞側にも求められるとわかった出来事だった。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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