官製談合
2010年3月、航空自衛隊が事務用品を発注する際の入札を巡って「官製談合」があったとの疑惑が浮上した。
「談合」は古くからある犯罪だ。本来の意味は「話し合う」である。これを犯罪の意味として用いる場合は、たいてい刑法96条の3「競売等妨害」罪が適用される。これは
①偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札の公正を害すべき行為をした
②公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した
である。前者の競売入札妨害の際は、本来競い合うはずの業者同士が話し合って、高めの落札価格と落札者を決める行為を指す。
話し合いのどこがいけないか。ポイントは「公の競売」という点だ。同じような理由で収賄=「わいろを受け取った」罪(刑法197条)がある。
官庁(公務員が仕事をしている)が何らかの事業、例えば橋やダム、道路、上下水道などを作る場合には入札をするのが原則。最低価格設定などいろいろな制限はあるものの、作れる能力がある業者のうち最も安い金額を示した者に権利を与える(落札)のが基本である。
というのも、公務員が発注する事業のもととなるお金は、国税や地方税など元を正せば国民からの預かり金なので、官庁や自治体(都道府県知事や職員)で落札者を決める権限のある者やその職務に密接な関連のある者は、「全体の奉仕者」と憲法に定められた公務員の定義にしたがって、最適な使い方をする義務があるから。金額だけでいうならば、より安い価格を示した業者に決めるのが国民の利益になるのはいうまでもない。
したがってそれ以外の理由で、例えばわいろを受け取れるとか天下りを受け入れてくれるという理由で業者を決めたならば、犯罪となる。業者の側も、あらかじめ値段を高めに設定して入札に臨む行為は、結果的に納税者に損害を与えるので、してはならない。
官製談合とは、受注する業者側が高めの仕事を取るために話し合って一種の出来レースを組むケースと異なり、公務員側が、つまり発注者側が談合にからんだ場合である。業者同士の談合と区別して「官製談合」と呼ぶ。
この問題が航空自衛隊で起きたのは別して深刻である。というのも自衛隊が属する防衛省ではかつて「官製談合」が大問題となり、出直しを誓っていたはずだからだ。
まだ防衛省が「防衛庁」で「省」への昇格を目指していた06年1月、その機運に暗い影を投げかけたのが「防衛庁に置かれる機関」として、在日米軍や自衛隊の施設用地を調達したり、そこに建物を造ったり、その管理をしたり騒音などの周辺対策も担っていた防衛施設庁の不祥事だった。同年1月、防衛施設庁舎新設空調工事などを巡る競売入札妨害(談合)容疑で、同庁ナンバースリーだった元技術審議官ら3人が東京地検特捜部に逮捕された。退職後のOBが天下った企業に便宜をはかった「官製談合」とみられ、7月に東京地裁は被告に懲役1年6月の実刑判決を言い渡した。こうした問題もあって施設庁は事実上解体されて防衛省へ吸収される形となった。
今回の空自の官製談合は、警察や検察が乗り込んで関係者を摘発するという段階ではなく、公正取引委員会が独占禁止法2章にある「不当な取引制限」に違反するとして、まず業者側のメーカーへ談合を認定し、課徴金を納める命令が出される。さらに今後、談合をするなとの「排除措置命令」が出るであろう。
談合のうち「官」側に当たるのが、物品の購入を主に担っていた「第一補給処本処」である。そこの職員(公務員)が落札する会社を指示したので「官製談合」であると認定した。公取委は今後、官製談合防止法(入札談合等関与行為防止法)に基づく改善を防衛省に求めるとみられる。同法は発注する官側に対して組織的な対応を求めるとともに、再発を防止するために制定された。今後は担当職員に対する損害賠償請求や懲戒などが行われるか、公取委が独占禁止法違反で告発して刑事事件へ発展するか注目される。
空自の官製談合の背景には「天下り」の見返りがあったとの観測がある。不景気で税収が落ち込む一方で、税金の無駄遣いが国民の強い批判や政治不信、官僚バッシングを生んでいる時代である。こうした不祥事は官側が、えりを正さなければなるまい。









