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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

選択的夫婦別姓制度

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法務省は、10年1月から始まっている通常国会で「選択的夫婦別姓制度」を実現させるため、民法改正法案などの提出を検討している。千葉景子法務大臣も成立へ意欲をみせている。

改正案は今後の与党審議で内容に変更がある可能性があるので、現時点で有力とされる案をざっと紹介しておく。

・夫婦が別姓のまま結婚(婚姻)できるようにする
・夫婦は結婚をする時に同姓とするか別姓とするかを選択
・選択して一度決めた姓は後で変更できない
・婚姻後に生まれた子の姓は別姓の場合はどちらかの側へ統一する

夫婦別姓は主に働く女性から、夫姓への統一への違和感や職場などでの姓変更のわずらわしさや損失、結婚前からずっと名乗ってきた姓を喪失するがゆえのアイデンティティーの揺らぎなど、切実な思いから進められてきた。

半面で別姓は夫婦間や家族間のきずなを薄めるとか、とくに子どもの姓に関しては親の判断で決められてしまう点に反論が集まる。職場などでの姓変更も通称(旧姓)使用を幅広く認めればいいとの意見がある。婚姻後の姓変更へ違和感がない女性も多いとの指摘もある。となると、そうした女性は選択的夫婦別姓なのだから同姓にすれば事足り、それが嫌な人までしたがわせる理由にはならないとの反論もあり、まさに甲論乙駁(こうろんおつばく)の趣だ。

こうした主な議論はすでに多くのメディアでなされているため、本稿ではそちらに譲り、今回は「姓とは何か」という本源的問題を考えていきたい。

夫婦別姓に反対する側の多くは「同姓は日本の家族制度を守る」という。では日本の家族制度とは何か。日本国憲法24条は婚姻について次のように定める。

1 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない

つまり「両性」具体的には結婚する男性と女性個々の「合意のみ」でなされる。もう少し具体的にいえば、成年に達していれば誰がどう反対しようと独身(注:女性の場合離婚後6ヶ月以降)ならば結婚できる。
1947年施行の今の憲法以前はそうではなかった。旧民法750条には

家族カ婚姻又ハ養子縁組ヲ為スニハ戸主ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス

とある。ここにある「戸主」とは家族を統率する者である。旧民法14条は夫婦のうち妻の法律的無能力規定を定めるので、戸主は男性が原則である。こうした規定は江戸時代にほぼ確立した長子(長男)単独相続に基づく。戸主=家長は「家」を主宰し個人は「家」へ属した。

したがって日本国憲法の規定は婚姻を「家」から「個人」へ解き放ったといえよう。ただし慣習として「家」を尊重する形式はいまだ存在する。例えば結婚式は今でも多くの場合「○○家・△△家」の「両家結婚披露宴」という文言がスタンダードだ。招待状は夫になる者の父親が発送するとの慣習もある。「両性の合意のみに基いて成立」するのに、結婚に先立って「両家」の両親にあいさつするのも当たり前である。

つまり「家」制度は、現在も日本人の感覚に良くも悪くも根ざしているのだ。ここで率直な疑問がわく。憲法が「家」から個人を解放して60年以上たっても慣習が残っているのは、日本人は家制度が好きなのかと。ノーともイエスともいえる。しょせん形式だから受け入れているのだというのがノー。そうだ。それゆえに「戸主」つまり男性側の姓へ帰属させる慣習も根強いという批判の観点からイエスともいえる。
現実問題として夫婦別姓にしなくても、夫の姓へ帰属させられるという風潮さえ改まれば女性の別姓論者も受け入れられるかもしれない。しかし法律のどこにも「婚姻の際の姓は原則として夫のものとする」などと書かれていないので、というかないからこそ、暗黙の了解で夫の姓にされてしまうのだともいえる。

さらに進んで別姓とは「家」制度への先祖返りではないかという議論もある。例えばフィギュアスケート女子シングルの、韓国のキム・ヨナ選手のお母さんはパク・ミヒさん。別姓だ。中国の最高指導者・胡錦濤主席の妻は劉永清さん。やはり別姓だ。日本でも源頼朝の妻は北条政子で足利義政の妻は日野富子。別姓である。

これらの背景には、江戸時代の日本や今日の韓国・中国は、妻の「家」も重視しているがゆえという理由がある。与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」は反戦歌として知られる。しかしそのなかに「旧家をほこるあるじにて/親の名を継ぐ君なれば」という言葉がある。戦争の勝ち負けのために君(弟)は生まれたのではない。「家」を継ぐ戸主の座にあるからだと強烈な「家」制度への執着がある。

こう考えると、別姓はより古きものを呼び込む概念といえなくもない。文化論として十分魅力的なテーマである。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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