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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

再び「参議院」を考える

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以前「くるくる代わる日本の首相」http://www.wasedajuku.com/wasemaga/bando/2010/06/post_73.html)というタイトルで、参議院のあり方を論じた。

その後に行われた参議院議員選挙で、衆議院では圧倒的多数を握っていて首相を出している与党(民主党と国民新党、新党日本の連立)が敗北し、野党(与党以外)が多数を占める「ねじれ国会」が生じた。早くも「(与党の横暴などがあれば)法案は1本も通らない」などという声が上がっている。日本の国会は衆議院と参議院によって構成されて基本的に同等。ただし政権(与党が出す首相を中心とした内閣とその下の統治システム)の選択は衆議院議員総選挙でなされるのが、憲法の精神のために首相指名などで衆議院の優越が認められている。あくまで前提は衆参同等である。

筆者は予備校でしばしばAO推薦入試の志望理由書などを読む機会がある。そこにはさまざまな高校生の「将来への思い」が語られている。それに接するたびに、国会(立法府)が果たす役割が決定的と痛感せざるを得ない。彼ら彼女らが目指す目的の多くは、法律の制定や改廃がないと進まないのだ。そしていうまでもなくこの作業ができる「唯一の立法機関」が、国会である。それが「法案は1本も通らない」状態に陥ってしまえば、極端でも何でもなく日本は終わりだ。

ここは与党も当然ながら承知で、参議院でも過半数となるよう新たに野党政党と連立を組むとか、法案が参議院で否決された場合に衆議院で再可決できる3分の2の議席(これも衆議院の優越規定の1つ)を確保するため、衆院側でやっぱり連立パートナーを探すなどの動きがあるやに伝わっている。そうなるかもしれない。違うのかもしれない。いずれにせよちょっとおかしくないか。

参院選で敗北したとはいえ、与党第1党の民主党は衆議院で圧倒的多数を持ち、参議院でも比較第一党である。それが数合わせ(衆議院の3分の2まで数議席、参議院の過半数まで十数議席)のため新たに連立すれば、その小党の言い分を重んじなければならなくなる。確かに2010年参院選の民意(主権者たる有権者の意思)は「民主敗北」だった。とはいえ全体の構成は衆参とも民主が第一党だ。それが連立相手の小党(小さな民意しか得ていない)の意向に左右されるという状態は民意に反する。といってそうした状態を生み出したのも民意である。

衆参両院で比較第2党の位置にあるのが自民党である。野党第一党でもあり、民主・自民両党の議席数は他を圧している。野党とは、前述の通り与党以外のすべてである。いわば補集合の概念に過ぎない。現時点でそれらが結束して法案に反対すれば、参議院で「1本も通らない」状態を生み出せる。しかし野党は「野党」という以外に共通項が少ない。まるで正反対の主義主張を掲げている政党同士が、「野党」という言葉だけで一致するという状況もある。それでも「政権を倒す」の一点で団結すれば理論的には「1本も通らない」のである。

実はこうした状態は、1989年の参議院議員選挙で当時与党だった自民党が大敗して以後、程度の差はあれずっと続いている。その主要な要因として「参議院で与党第一党が過半数を取れない」があった。そこで率直な疑問。「参議院は必要なのか」。

政権の選択は、前述のように衆議院でなされるのが憲法の精神と先に述べた。と同時に参議院の存在やその権限も憲法に明記してある。となるとそもそも憲法は何で参議院を設けたかという疑問にたどり着く。

その意味で興味深かったのが、毎日新聞2010年7月18日付朝刊における冠木雅夫論説委員長の署名記事「『強すぎる参議院』創設時の論議は参考になる」だ。それによると、日本国憲法が制定された際に日本を占領下に置き、制定に大きな影響を与えたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の高官は「憲法の他の箇所に示されている抑制と均衡の原理のもとでは一院制が一番簡明だ」とし、草案にもそうあったという。日本側の責任者であった松本烝治国務大臣が「多数党が一時の考えでやったこと、一時の誤りでとんでもないことをやる、そういうことを一ぺん考え直すことが必要だ。第二院があれば、政府の政策に安定性と継続性がもたらされる」と反論した。「第1院の多数党による暴走の抑制に大きな関心があった」と記事は伝える。「実はGHQは『この点について譲歩することによって、もっと重要な点を頑張る』作戦だったのだ。重要な点とは象徴天皇制や戦争放棄などである」とも。

この経緯を踏まえると、参議院は「第1院の多数党」=民主党「による暴走の抑制」が役割であって、政変を仕掛けるのは少なくとも制定の意図からは外れる。

GHQ高官の「抑制と均衡の原理のもとでは一院制」、すなわち衆議院のみの方が「簡明」というのもわかりやすい話である。現在、衆議院(立法府)は内閣不信任決議案の可決という手段で、内閣(行政府トップ)を総辞職させられる。ただし内閣は総辞職しないならば衆議院を解散させられる。こうした「抑制と均衡の原理」が参議院には存在しない。したがって「安定性と継続性」「暴走の抑制」どころか、暴走の主体になってしまう恐れもあるのだ。

こうした問題点を如実に示したケースとして05年8月、小泉純一郎(自民党出身)政権の提出した郵政民営化法案が衆議院で可決されて参議院で否決された際に、首相が衆議院を解散して法案の信を問うた事例が挙げられよう。当時「可決した衆議院を解散するのはおかしい」という批判があった。むろん一理ある。しかし参議院は解散できないのである。

憲法を改正しなくても参議院がやれることはたくさんある。まず真面目にその存在理由を検討する。複雑な選挙制度も考え直せる。今の選挙区&非拘束名簿式比例代表制度は、双方に問題を抱えている。選挙区は「1票の格差」がある。総務省によると議員1人あたりの有権者数は、一番多い神奈川県と最も少ない鳥取県を比較すると5倍を上回っている。鳥取県民の1票は神奈川県民の5人分になる計算だ。これで「法の下の平等」が守られているといえるだろうか。非拘束名簿式比例代表に至っては、制度を説明できる有権者がどれだけ存在するか甚だ疑問だ。

ほとんど話題にもならない両院協議会のあり方も真剣に考えるべきだ。法案の可否が衆参で異なった際に設けることができる大切な会なのに、近年はまったく形骸化している。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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