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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

なぜ中国は資源獲得にどん欲なのか

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日中間には、歴史認識とくに先の大戦の評価や解釈について異なる場合があり、時に感情的な摩擦を生じる。尖閣諸島をめぐる領有権問題も、それがまったく関係ないとまではいえない。とはいえ靖国神社問題などと比べて、「尖閣」はずっと「現実的」といえる。日本が尖閣諸島を沖縄県へ編入した1895年に、当時の中国(清帝国)は別段異議を唱えなかった。「わがもの」との主張は、1968年に近辺で石油などの資源が眠っている可能性があると、国際的な調査でわかった後の71年だった。当時の尖閣はアメリカの施政権下にあって、71年の沖縄返還協定締結に基づき翌年日本へ返還されると決まっていた。日本側からすると、この経緯はどうも資源があると知って絶海の孤島がほしくなり、その直前に手を挙げたと見える。

したがって「尖閣は中国のものだ」という主張は、目的というよりはガス田の開発のための手段と思える。領土問題を持ち出したり歴史認識をまぶしたりするのは、資源確保という目的を正当化するためだと。

尖閣のある東シナ海に限らず、中国があちこちの国と太平洋にある島々の領有権を巡って争っているのを考え合わせても、そう推測するのは妥当であろう。南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)は中国、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどが入り乱れて領有権の主張がされている。地図をみると南沙諸島は、明らかに中国よりフィリピンやマレーシアの方が近そうなのに、中国は譲らない。西沙諸島(パラセル諸島)は、ベトナムと武力衝突までして中国が実効支配した。いずれも70年代以降、石油などの資源の可能性が指摘された点で尖閣と似ている。

なぜ中国は近隣と争ってまで海洋資源の獲得に必死なのだろうか。原油の確認埋蔵量は世界12位程度。石炭も米ロに次ぐ。2010年9月に尖閣諸島付近で起きた中国漁船衝突事件では、船長が逮捕されたのに猛抗議した中国から、レアアース(希土類)の輸出が滞り日本の産業界を震え上がらせた。デジカメやパソコンの性能向上に欠かせないこの金属の国別シェアは、中国が何と96.8%。あんなに広い国土もある。なのに何故太平洋の埋蔵資源までどん欲に求めるのだろうか。

1つは、それでもなお、現在のGDP世界2位となった中国経済の発展のためには足りないとの現実がある。現に石油はかつての輸出国から輸入国へ転じてしまった。

もう一つは、広大な面積を誇る中国の陸上で得られる資源に、意外と深刻な弱点があるとの推察がある。例えば原油に関しては、埋蔵量そのものは確かに大きいとみられているものの、精製しやすい軽質油はほとんど見当たらなくて、使い勝手の悪い重質油ばかりであるというのが難点だ。ちなみに石油とともに重工業発展には欠かせない鉄鉱石はどうだろう。かつて日本は1905年の日露戦争講和条約で獲得した、1906年に設立した南満州鉄道株式会社が09年に当時の鞍山で鉱床を見つけて発展させた、鞍山製鉄所がある。ただし後の満州国建国以後も指摘された問題だが、多くは鉄の含有量が約30%の「貧鉱」が中心である。

考えてみれば、1931年の柳条湖事件を皮切りに作り上げた「満州国」という日本のロボット国家で満足できていたら、1937年からの日中戦争や40年の仏印進駐などする必然性がなかったわけで、裏返せば「満州国」では十分な経済的果実を得られなかったから、資源を求めて戦線を拡大したともいえる。中国の資源事情は、わが国も歴史的によく知っているはずだ。

もともと中国には平野や盆地といった、経済活動に適した地域は国土の3割ほどしかない。内陸は山岳と砂漠が中心で、大雨か乾燥かという気候である。これは中華人民共和国政府がいかに強権を振るってもどうしようもない。

レアアースの「ほぼ100%のシェア」というのも、だから中国に埋蔵が集中していると言い難い現実がある。そもそもレアアースを含むレアメタル(希少金属)は、放射性物質と同居しているケースが多い。よって十分な準備をして採掘しないと、被ばくして労働者の健康が守れない。「十分な準備」のためには多額の費用がかかるので、採掘コストは必然的に高くなる。かつてレアメタルの一大産地だったアメリカは、掘り尽くして撤退したのではなく、中国が提供する価格がずば抜けて安くて競争力が保てなかったからだ。「多額の費用がかかる」はずなのに安いということは、「十分な準備」をせず、言い換えれば危険を承知の採掘が行われた結果と想像するに難くない。「ほぼ100%のシェア」の裏にはこうした苦肉の策がうかがわれる。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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