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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

外国人力士の発言に目くじらを立てるな

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八百長問題を受けて、2011年5月の「夏場所」は異例の「技量審査場所」となった。優勝力士に授けられる天皇賜杯も懸賞金もNHKを含む放送もなし。観客も無料と異例ずくめであった。

メディアが八百長問題を深刻にとらえて厳しく報じるのも当然である。しかし時折「行き過ぎではないか」と感じる報道もあった。朝日新聞を例にとって考えてみたい。

5月23日と24日付同紙朝刊は、連続して外国人力士の発言に言及した。23日は「言動には危うさもある」として横綱白鵬が自身の八百長問題について「ないということしか、言えないじゃないですか」と言った点や、「人情がなくなったら、相撲なんか終わってしまう」との言葉を「誤解を与えかねない発言だった」とし、24日はやはり白鵬の「『技量審査場所』は納得いかない。準場所。本場所に近い感じで臨みました」という優勝インタビューや、大関把瑠都の「遊びみたい」「気合、入ると思う」との発言を「緩み」と戒める論調を掲載した。

一連の言動を「危うい」「緩み」ではないかというと、確かにそう受け止められても仕方がない。だが白鵬にせよ把瑠都にせよ外国人力士である。その日本語を深いレベルまで推察して批判するのにどのくらいの意味があるだろうか。

相撲に限らず日本のプロスポーツで外国人は多く活躍している。その多くはインタビューで母国語ないしは英語で答えている。プロ野球読売巨人軍のラミレス選手は、日本で通算11年目になるのにそうしている。ところが大相撲だけは、外国人であっても当たり前のように日本語のやりとりだ。理由は以下のように推察される

・他のプロスポーツの外国人の大半は、いわば「助っ人」として最初からレギュラーでの活躍を期待されているのに対して、大相撲は外国人でも育成の最初から参加する
・他のプロスポーツは、同じ種目で日本以外で活躍する余地が世界(少なくとも母国周辺)にあるのに対して、大相撲は日本のみである

だからといって、外国人が外国語(日本語)を母語同然に使いこなせというのは、いかにも酷である。例えば白鵬の「ないということしか、言えないじゃないですか」に日本人ならば「本当はあるけれども」のニュアンスを感じとるけれども、彼がそこまで含んで発言したか(できたか)甚だ微妙である。疑問を感じたらモンゴル語で答えてもらって通訳するのがフェアではないか。それに「技量審査場所」は「八百長があった」を前提に行われたのだから、白鵬の発言は(自身がどうかは別にすれば)むしろ正確とさえいえる。「人情」も「人情相撲」、すなわち金銭や自身の星勘定に関係なく、相手を慮って負けてやるといった意味で使ったのかどうかわからない。

大相撲の外国人力士の日本語は、相撲の世界で磨かれているという点も着目したい。先ほど述べたように大相撲は日本にしかないメジャーである。プロとして生き残り栄光をつかむには、日本で練習し、勝ち、番付を上げるしかない。基本的にこの論理だけで毎日毎日暮らしたなかで言葉も修得するのである。一般の日本人が母語としての日本語を習得する過程とは大幅に異なるばかりか、外国人が母国の日本語課程で学んだり来日して勉強するのとも違う。プロとして稼ぐのを至上命題として大成した白鵬や把瑠都が、懸賞金も入場料もない場所を「遊びみたい」というのはプロ意識の裏返しと評価もできる。

白鵬の「準場所」も、そもそも財団法人日本相撲協会が「興行として開催しない」と発表している場所だから、おかしくないとの見方が可能だ。本来の場所は「興行」だけど、そうではないから「本場所に近い感じで臨みました」と考えて何かおかしいだろうか。「準場所」は今の年6回興行になる前にあった地方興行である。でも6場所制は1958年から。それ以前の感覚で「準場所」と発言したとも思えないし、「本場所に準じる場所」という文字通りの意味ならば「技量審査場所」はそのものともいえる。

白鵬の「『技量審査場所』は納得いかない」に至っては、横綱の発言として「納得」されても困るとさえみなせる。成績で地位が上下する関脇以下や、負け越すと翌場所が角番(負け越すと陥落)となる大関ならばともかく、横綱は最高位だから成績に関わらず横綱のままで成績が良くても悪くても上がりも下がりもしない。「優勝争いをするか引退か」という厳しいポジションだ。なのに、何の「技量」を「審査」してどういう反映がなされるのか、という問いに誰かがきちんと答えたという話を聞いたことがない。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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