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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

異常も続けば常識になる2

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前回は日本も含む国際的なケースを取り上げた。今回は国内編。

①デフレ(17年)
政府が「デフレ」と認定しているのは、2001年3月から06年6月と09年11月以降。しかしこの発表を聞いて「なるほど」とうなずく経営者は国内に皆無であろう。

ざっくりした統計でデフレかどうかを知るのに最も便利なのが、GDPデフレーターである。名目GDPを実質GDPで割って計算する。名目GDPとは文字通り「名目」で、値段が倍になれば倍、3倍になれば3倍となる。しかし経済成長はそう単純ではない。名目が2倍になっても、給料(所得)も同じく上昇すれば「実質」の負担感は変わらない。このように実際の生活水準に近いよう数値を合わせたのが実質GDPである。

GDPデフレーターは1994年から2010年まで、1997年を除いてマイナスだ。つまり名目より実質の方が、数値が大きい。ということは、名目が示す物価上昇が抑えられているか下がっていて、それより実質は下がっていないか上がっていると推測される。もっとハッキリいうと、物価下げが給料の下げより大きいか、物価の下げほど給料の下げが大きくないかとなる。デフレとは物価の下げが継続的に起きている状態を指す。したがってGDPデフレーターの数字をそのまま取り上げれば、日本は20年近くデフレの状態にあるといえる。

理論的にいえば、いくら物価が下がるといっても原価より安くなるなどあり得ないので、必ず止まる。ある程度下がれば「同じものならば安い方が売れる」から、消費が盛んになって反転するはずだ。それがずっと起きていない。

17年といえば物心ついてからずっとデフレのまま成人を迎える世代まで誕生する年月である。そうした人は「経済とはデフレである」が常識になってしまう。

②実質ゼロ金利(12年)
日本銀行は政策金利の目標を設定して、市中に出回るお金を調整する機能を持つ。金融危機後の1999年にそれをゼロに設定してから12年。政策金利(無担保コール翌日物)は2007年から翌年にかけての0.5%を最高に、実質ゼロへ限りなく近い状態が続いている。

日銀のこの政策には、①であげたデフレの長期化と大きな関係がある。モノやサービスの値段が下がってしまうと、提供する企業の経営が苦しくなる。そこで日銀は「銀行の銀行」の役割として金利を下げて、企業が借りやすくする。「同じ金額ならば利息が低いほど借りやすい」はずだから、企業はそれを受けて工場を作るなど設備投資にいそしむ。一方、金利の低下は消費者の利子収入低下とイコールなので、「銀行に預けておいても仕方ない」という動機を促して、投資された結果として生み出される製品を買う。かくして経済は好転する……はずだった。

ところがいつまでたってもデフレが克服できないため、企業は設備投資をためらう傾向にある。投資自体に金がかかる上に製品が値下がり続きでは、何もしないか、現金のまま所有するか、借金があるならば低金利のうちに返した方が得である。消費者の側も利息がスズメの涙にせよ、今日100円で売っているモノが明日は90円になるかもしれない(だからデフレ)から、利息をアテにせず預金を取り崩さないで財布のひもを縛る。

金利の実質ゼロ状態は年金問題とも深く関わる。それ自体は近年明らかになったずさんな運用に不信が集まったからであるが、遠因の一つに預貯金金利が老後の足しにならなくなったという事実もある。かつては5%程度は当たり前だったのに、今はほぼゼロ。働かなくても得られる利息は高齢者にとって貴重な生活財源だったのに、それを失い必然的に年金への注目度が高まった。

③赤字国債発行(18年)
以前にも述べたように、使い道を限定しない純粋な国の借金である赤字国債は、財政法で禁止されている。いわば「禁じ手」を日本は1994年からずっと続けてきた。これに公共施設など、資産が後に残る建設国債と地方の借金を合わせた額は、積もり積もって約900兆円にのぼる。国民全員の稼ぎであるGDPの2倍近くあり、先進国(G7)中で最悪だ。

この傾向に少しでも歯止めをかけようと財政再建がうたわれている。しかしその再建策とて、単年度の赤字国債発行をゼロにしようとの目標がせいぜいで、積み上がった莫大なこれまでの借金を返すあてはまったく立っていない。

もしこれを完済しようとすれば国債の購入者へ「もう返せません」と宣言するか、巨大なインフレを起こして(または起きて)借金の重みを相対的に小さくするかぐらいしか方法はない。現在、国債の買い手の95%は国内投資家である。ゆうちょ銀行を含む金融機関や年金、保険会社などだ。しかしそれら投資家の元手の多くは国民の保険料や預貯金である。したがって「返せない」とは銀行などに預けているお金が返ってこないのと同義になる。巨大インフレも結局似たようなもので、10倍物価が上がれば借金の価値が10分の1へ減ずると同時に、国民の所有する資産価値も下がる。

④連立政権(19年)
2つ以上の政党がタッグを組んで衆議院の過半数か最低限比較多数を制して、首相指名選挙で自陣営の候補を選んで与党(首相の味方)になる形式。日本では1993年の細川護煕非自民連立政権から、1998年から翌年まで約半年の小渕恵三政権(自民党単独)を除いて続いている。2009年総選挙で民主党が単独過半数を得ても、主として参議院の議席確保のため国民新党、社民党(後に離脱)、新党日本などの協力を得ている。

とはいえ、民主党政権は他の連立与党の規模を考えれば限りなく単独政権に近い。だが菅直人首相の退陣表明を受けて「大連立」の声が上がってきた。衆参両院で第一党の民主党と第二党の自民党との連立である。

もともと細川内閣の時に成立した小選挙区比例代表並立制の衆議院への導入は、「政権交代可能な2大政党制」を志向した。ところがそれ以降の内閣は基本的に連立である。

連立政権が誕生した当初、それまでの自民党単独政権に比べて密室での政策合意が各党間の協議の場へ移るから、オープンになると予測する声もあった。ところが実際には連立与党間の合意が、単独政権下での党内合意より一層動かしがたくなり、国会の形骸化を招いた。「大連立」になれば衆参両院とも圧倒的多数の与党が好き放題をして、国会など機能不全に陥ると不安視する向きも多い。

⑤福島原発事故(2011年より)

早くも風化のきざしがある。今現在ニュースになっているのは、主に事故の初期で大量放出されたとみられる放射性物質の影響である。それはそれで大変重大なのだけれども、問題は福島第一原発そのものの事故が収束していないという現実が、かなり忘れられてきている点にある。

冷静に考えれば水素爆発で建屋が吹き飛んだ1・3・4号機からは、今も大気中に放射能が放出されているわけだし、炉心溶融した燃料はそのままだし、落下した燃料が地下水などに与えている影響はまったくわからない。汚染水処理も一向に進まない。つまり「たった今」の福島第一原発の状況は、それだけで昼夜の番組を吹き飛ばして報道するほどの重大事のはずなのに、それが毎日そう変わらない(ような感じがする)というだけで、ドンドン主要ニュースから外れているのである。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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