2009年2月8日 開催
特別公開授業
「しごととは何か?」くらしと経済シリーズ2009
東京大学 社会科学研究所
玄田有史 教授
早稲田塾 秋葉原校にて

- 玄田有史 教授(げんだ・ゆうじ)
1964年、島根県生まれ。
専門:労働経済学
略歴:
東京大学経済学部卒。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。学習院大学経済学部助教授、教授などを経て、2007年より現職。著書:
『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若者の現在』(中公文庫、2005年)、『14歳からの仕事道』(理論社、2005年)、『ジョブ・クリエイション』(日本経済新聞社、2004年)、『働く過剰―大人のための若者読本』(NTT出版、2005年)、『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』(共著、幻冬社、2004年)など
ゆるやかな絆の中で見えてくること
「私は、“仕事”について研究しています。今、大学4年間を過ごした学生たちが就職活動を経て、就職しますが、3人に1人が3年以内に辞めています。転職もあります。しかし、リストラもあります。
日本における“働き方”は長い間、“終身雇用、年功賃金”と言われてきましたが、現在、成果主義と言われるようになってきた。“年齢じゃないよ、実力だよ”という風に変化してきています」
現在の労働環境のあり方から、講義を始めた玄田教授。経済学を学ぶ意義について、「どうしたら今よりも皆がHAPPYになるのか? HAPPYに生きていけるか? HAPPYに仕事ができるか?”ということに、愚直なほどまっすぐに考える学問です」と語る。
「こうすれば、皆さんHAPPYになれますよ、とは言えません」
と、玄田教授。
しかし、スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッター教授の説を紹介しながら、“weak ties”(弱い つながり・絆、ゆるやかな 絆)で結ばれる人とのつながりが、その答えのヒントになるという。
「“strong ties”(強いつながり・絆)で結びついている社会で閉じていては、安心だけど情報がない。自分の可能性に自分でも気付けない。自分と年齢が違う、持っている情報が違う世界に、ゆるやかにつながることが大事なんです」
この“情報”。漢字二文字で表されているが、働くときに気になる給料や休日、福利厚生などは「報」にあたる。数字になるデジタルな情報だ。今はこういった情報は手に入りやすくなっており、仕事選びにおいても失敗するリスクをマネージメントできる。
しかし、デジタルなことが分かっても、「情」の部分、すなわち、“やりたいことをやりたい” “いいな、と思う仲間と一緒に頑張りたい” など、働きがいや生きがい、自己有用感を仕事に求めるとき、デジタル化できない、アナログでしか表現できない情報が必要となる、と教授は言う。その時にこそ、「たまにしか会わないくらいの、けれど、信頼できる友達とのコミュニケーション=“weak ties”でつながる情報が大切で、このつながりが仕事の問題と密接に関わっているのです」と。
教授は自らの研究テーマについて、何度も、「まだ分からん」と、確かに、「愚直なまでにまっすぐ」な姿勢で参加者に語りかける。
「仕事って何? 分からんですよ。社会に出ると分からんことがたくさんある。でも、大事なのは、『分からんこと』から逃げないこと。みんなで考えていると、良い案が出てきたりする。分からないから、一生懸命研究する。仕事をする上で、一番大事なのは、『分からんこと』から逃げないことです。壁にぶつかったら、逃げずに壁の前でウロウロしていることが大事。自分の弱さを認めて、日々謙虚な気持ちでいろんな人の話を聞く。そうするとみんなが助けてくれます。weak tiesでつながる誰かが見てくれています」
村上龍氏が「希望の国のエクソダス」で、「現代はあらゆるものがあるが希望だけがない」と書き、山田昌弘氏は、希望も格差社会と言う現代日本。
「日本に希望がないとは思いません。日本社会は変わってきています。変化の中で、安心は持てない時代になり、やりたいことを見つけることが大事になってきています。出会いの中で、本当の自分を見つけていく。わからないのはいいこと。でも逃げ出さない、すぐにあきらめない、ウロウロすることが大切です。自分のゆるやかなつながりが助けてくれます。」
玄田教授のまっすぐな言葉に、「希望」が場内に満ちた2時間となった。











