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Good Professor

植田 隆子

植田 隆子 教授
国際基督教大学
教養学部 国際関係学科

植田 隆子(うえだ・たかこ)
津田塾大学学芸部国際関係学科卒業後、津田塾大学大学院国際関係学研究科博士課程修了。ジュネーブ大学高等国際問題研究所客員研究員・国際基督教大学準教授を経て、現在に至る。また国際政治学の専門家としてメディアでも活躍。主な著書に「ユーゴ空爆は正しかったのか」(『世界』1999年6月号)、「NATOのユーゴスラビア空爆――識者座談会」(『毎日新聞』1999年3月27日朝刊)など多数。

卒業してからも役立つ講義ノート

暖炉まであるこの素敵な部屋は卒業したら使えるとのこと。卒業後も母校が待っているようで、かなり嬉しいかも。
暖炉まであるこの素敵な部屋は卒業したら使えるとのこと。卒業後も母校が待っているようで、かなり嬉しいかも。

植田隆子先生は、渋谷のデパートで若い女性からいきなり声をかけられた経験があるという。
「私の講義を受けたことのある卒業生だったんです。『植田先生、西欧外交史のノートは、今でも読んでいますよ』と言われ、うれしかったですね」

大学を卒業して学生時代のノートを引っ張り出すことなどないものだ。しかし植田先生の講義なら、話は違ってくるらしい。

新聞の外信記事を読んですっと理解できるようになるのが、先生の講義の目標である。一見簡単なようだが、これが意外と難しい。新世紀早々に目まぐるしく国際的大事件が頻発する昨今、必死に新聞を読んでも、なかなか全体像を理解できないはずだ。特に先生の専門であるヨーロッパ問題は、一筋縄ではいかない。

「日本から見ると欧州は重要度が低いため、系統立てて報道されていません。どうしても報道の中心は、アメリカや中国・東南アジアになりますから。そのためヨーロッパの問題は、歴史的な知識がないと理解できないのです」

歴史を勉強するといっても、細かく調べていけばきりがない。だからこそポイントをしっかりとピックアップし、体系的に理解する必要がある。そうした要望に、先生の講義はしっかり応えてくれる。

「知識を得たいだけなら、百科事典を読んでいればどうにかなります。そうではなく、自分なりにどう理解するのか、モノの考え方の筋道がわかるように講義をしています」

日本の報道の盲点---EUの実態

夕暮れの大学礼拝堂がICUの正門をくぐった真正面に厳かに立っていた
夕暮れの大学礼拝堂がICUの正門をくぐった真正面に厳かに立っていた

EU統合は進み、2002年からは統一通貨ユーロも発行される。国際政治を動かす主役の一人として、ヨーロッパの影響力はどんどん大きくなっている。しかし日本人の多くは、そうした問題にあまり関心を持っていないようだ。また本来なら世界情勢の動きを伝えるマスメディアも、EUをきちんとした視点から論じていないと、先生は語る。

「EU統合に関する日本の報道は、変に理想化されたものか、あるいはその重要性を無視したような論調が目立ちます。EUの実態について、きちんと捉えていないのだと思います」  

ヨーロッパ問題を理解しなければ、世界情勢をきちんと見極められない時代が来ているのに、多くの日本人がその重要性に気づいていない。どうだろう?
卒業後、先生のノートがなぜ役立つのか、少しはわかってきただろうか。

軍事力に寄らない安全保障もある

美しい紅葉に包まれる秋は、広大なICUキャンパスが1年で最も美しい時期でもある
美しい紅葉に包まれる秋は、広大なICUキャンパスが1年で最も美しい時期でもある

しかし先生の講義がすごい理由は、これだけではない。

安全保障問題を国際的な視野から論じられる日本で数少ない専門家の一人が、植田先生なのである。日本のマスメディアは、安全保障問題を幅広く論じてこなかった。安全保障を論議すれば、どうしても軍事的な問題に突き当たる。そのため、安全保障が憲法と武力行使の問題にすり替わってしまった。

たとえばアフガニスタンへの自衛隊の派兵問題は、ここ1ヵ月連日のように報道されてきた。しかしそのほとんどは、武力行使を禁止した憲法9条と派兵との関わりについてであった。

「日本では、安全保障が法律的な観点のみで論じられていました。だから、現実の政策として無理のある論議が起こったのだと思います」

こうした日本の状況に対して、安全保障が現実問題となっているヨーロッパでは、軍事力に寄らない安全保障も実施されているという。

「『民主主義の安全保障』というのは、西欧的な民主主義が根付くことで、国際レベルでの安全保障を増進する考え方です。たとえば、民族紛争防止のためには、民主主義の根幹である『法の支配』を定着させる目的で、民主的な警官を育成したり、裁判官を訓練する。こういった教育によって地域紛争の悪循環を断ち切ることも、安全保障の問題になります」

驚いたことに、「民主主義の安全保障」よりさらに細やかな視点に立つ安全保障もある。それが、最近日本政府が提唱している「人間の安全保障」だ。人間を中心に置くこの安全保障の概念は、紛争の防止だけではなく、環境問題への取り組みなども視野に入れているという。こうした分野で日本が国際貢献できる余地は、かなりあるに違いない。

インターネットに接続すれば、世界各国の報道に目を通すことができる。また電子メールの普及によって、世界中の人々と意見を交換できる時代にもなった。しかし、大量の情報を整理・分析するために必要な国際的な視野を、この日本にいて身につけるのは結構大変だ。だからこそ、「日本の中だけで通用する教育ではしょうがありませんから」という先生の言葉が頼もしく感じられた。

こんな生徒に来てほしい

「知識のない学生でもいいんです。そのために高い授業料を払っているのですから(笑)。
指導のとおり勉強してもらえれば、世界で通用するレベルになります。国際機関で活躍する学生はもちろん、優秀なジャーナリストもぜひ育てたいですね

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