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Good Professor

浦田 秀次郎

浦田 秀次郎 教授
早稲田大学
社会科学部

浦田 秀次郎(うらた・しゅうじろう)教授
1950年埼玉県生まれ。73年慶應義塾大学経済学部卒業。78年スタンフォード大学大学院博士号取得。78年ブルッキングス研究所研究員。

81年世界銀行エコノミスト。88年早稲田大学社会科学部助教授。94年より現職。現在、経済産業研究所ファカルティフェロー・日本経済研究センター主任研究員・社会経済生産性本部特別参与を兼務。
主な著作に『国際経済学入門』『日本のFTA戦略(編著)(ともに日本経済新聞社)などがある。

国際化・複雑化する経済問題への学際的研究

浦田研究室のある14号棟
浦田研究室のある14号棟

早稲田大学社会科学部教授・浦田秀次郎先生は、日本を代表するエコノミストのひとりである。じつは2003年度は特別研究期間にあたり、早稲田大学の教壇を離れている。それで、今回の取材は経済産業省内にある研究室で行なわれた。

浦田先生の専門は「国際経済学」。まず、その専門分野について話してもらった。

「学生時代からずっと国際経済学を研究しています。これまで日米の経済関係や発展途上国の経済問題、とくに貿易および投資の問題をはじめ東アジアの97年の経済危機などについて調査研究してきました。国内については中小企業の研究をしています。日本経済の発展を研究するうえで中小企業は欠かせない存在ですし、発展途上国における中小企業のあり方についても関心があります」

国内の経済問題の研究にしても、そこには国際経済学からの視点が重要だという。先生は現在インドネシアの経済問題について、同国大統領に提言するエコノミストグループのメンバーでもあり、こうした研究が提言に反映されることにもなる。

目下、その先生が取り組んでいるのはFTA(自由貿易協定)の問題である。

「FTAの最終目標は日本をふくめた東アジア全体を網羅する地域統合、いわばEU(欧州連合)の東アジア版をめざしたものです。ただヨーロッパの場合と違い、東アジアの地域統合にはまだまだいろいろな困難があります。経済格差の問題をはじめ、政治体制・社会環境・安全保障の違いなどが障害になります。それらを乗り越えて統合にまで至るには、なお困難が多いですね」

それでも日本とシンガポール2国間では協定が結ばれて発効しており、徐々にだが東アジア版FTAに向けた動きもタイムテーブルに乗りはじめてきた。こうした動きが停滞している日本経済再浮上のキッカケになればとも語る。

海外大学まで巻き込む「対抗ゼミ」

社会科学部のある西早稲田キャンパス
社会科学部のある西早稲田キャンパス

研究内容について語る浦田先生の口調はともかくソフト。スポーツも万能だということで、いかにも元慶應ボーイらしく実にスマートだ。

社会科学部での浦田先生のゼミは学生の人気が高いことで有名だ。例年定員の倍を超える希望者が殺到するそうだが、その人気の秘密は「対抗ゼミ」だという。

「大半の学生は対抗ゼミが目的で入ってくるようですね(笑)。これは討論対抗でして、私が早稲田に着任したときから始めたものです。当初は学内のゼミを相手にしていたのですが、いまでは学外の大学にまで広がっています」

2003年現在この対抗ゼミに参加しているのは、慶応義塾大学のゼミをはじめ国内7大学13グループにとどまらず、シンガポール国立大学と韓国の高麗大学・延世大学など海外3大学まで広がっている。学内のゼミ対抗で始められたものが、いまや海外の大学まで巻き込んで学生たちを熱く燃えさせている。

この対抗ゼミというのは、それぞれのゼミがテーマを立てて研究し、それを論文にまとめて対戦相手との双方で発表し合い、質疑応答する方式で行なわれる。海外の大学との対抗戦にいたっては、現地まで赴くことになる。

「海外の大学との対抗ゼミでは、英語での発表が条件になっています。論文発表については準備も練習もできますが、問題はそのあとの質疑応答ですね。質問に答える知識はありながらも、それをうまく英語で表現できないことが多い。その現実をあらためて認識するだけでも、学生たちにはいい経験になるだろうと思っています」

実際に、対抗ゼミを経験したゼミ生のなかには海外の大学に留学し直して、語学力を鍛え直すというケースもあるという。浦田ゼミでは、対抗ゼミのために全ゼミ生を3つのグループに分けている。ちなみに、2003年度の3グループが掲げた研究テーマは「開発経済」「国際貿易」「FTA」であった。

「この対抗ゼミを通して、いろんなことに興味や問題意識をもつようになることが大事ですね。さらに問題意識をもつだけでなく、自分で調査・情報収集をして、自分なりのちゃんとした意見が出せるようになってくれれば」 と浦田先生は愉快そうに語る。

自分の専門性の追求もプラスしないと

浦田研究室は経済産業省別館にもある
浦田研究室は経済産業省別館にもある

ところで国際経済学が専門の浦田先生だが、先生が所属するのは経済学部ではなくて社会科学部だ。早大社会科学部とはどんな学部なのだろうか。

「よく社会学部と混同されますが、こちらは"Social Sciences"社会科学全体を学習する学部なんですね。大学に進んで経済なら経済ひとつに絞って学ぶのも一方法ですが、社会科学部では経済・政治・法律・商学の4つの柱をすえています。それぞれの体系を自由に行き来して、社会に影響を与えるあらゆる諸問題について学んでいくことになります」

国内外からいろいろな専門分野の教員が集められ、さまざまな社会問題についての研究体制が整っている学際的なところが社会科学部の特徴となる。

「経済現象というのは、経済以外のさまざまな要因の影響を受けています。たとえば歴史であり、政治・法律などいろいろあります。そうした一筋縄ではいかない経済現象をいろいろな角度から見る目を養うのが社会科学部だといえます。経済学部が経済の側からの視点で社会を見るのに対して、社会科学部は社会全体の側から経済を見ることになります」

この学部で国際経済学を学ぶことについて、浦田先生はこのように語る。広い視野から複眼的に問題をとらえ、その解決に向けての多様な手法を探る――そうした視点が非常に魅力的な学部となるのだ。ただ、そこには危険も潜んでいるという。

「この学部で学んでいますと、いろいろな分野の広く浅い知識を習得するだけで4年間を終えてしまう危険があります。広く浅い知識を学んだうえで、自分の専門性の追究もプラスしないといけません」

これは、この学部をめざしている高校生諸君への浦田先生からの警鐘でもあろう。

04年4月から、浦田先生は早稲田大学の教壇に復帰する予定だ。いま高校3年生の諸君があこがれの大学の門を潜るとき――そのタイミングに合わせたように、早大社会科学部の名物ゼミも再スタートする。

こんな生徒に来てほしい

高校生といえども世界に目をもっと向けるべきです。国内で日々起こる問題ももちろん重要ですが、この国が単独で成立しているわけではないことは知っていてほしいですね。世界には貧しい国がまだ多くありますが、そうした国々と日本がともに成長し豊かになるにはどうすればいいのか、そんなことに関心のある人たちなら大歓迎です。

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