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Good Professor

原 武史

原 武史 教授
明治学院大学
国際学部

原 武史(はら たけし)
1962年東京生まれ。86年、早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社入社。92年東京大学大学院博士課程中退。同年同大学社会科学研究所助手。97年山梨学院大学助教授。2000年より現職。

主な著作に『「民都」大阪対「帝都」東京』(講談社)』、『大正天皇』(朝日新聞社)、『可視化された帝国』(みすず書房)などがある。

「その渦中にいたらどう選択するか」という視点で歴史をとらえる

明治学院大横浜キャンパス
明治学院大横浜キャンパス

今回登場する原武史先生は気鋭の政治学者である。同先生が2000年に出版した『大正天皇』は、日本の近代史を塗り替えるほどの著作として大評判になった。同書は、これまで病弱とされて歴史上あまり語られることなかった大正天皇にスポットを当て、その実像に迫ったものだ。

「これまでの天皇制についての研究は、右翼的あるいは左翼的なバイアスがかかったものが中心でした。私は右でも左でもない立場から、あくまでも客観的な史料に即して、等身大の大正天皇像を探ってみたんです」

そう語る原先生だが、その結果見えてきたのは、気さくで家族の団欒を大切にする大正天皇の姿。しかし、それはまた、カリスマ的な明治天皇の衣鉢を継ぐ者にふさわしからぬ天皇として周囲から封殺されていく過程を炙り出すことにもなった。

「天皇制というのは我々自身の問題であるのに、あまりにも日本人は実態を知らなすぎますね。日本の研究者より、海外の研究者のほうがよく知っていたりして不思議な感じがします。日本の研究者の怠慢ですよ。いわば知的怠慢です」  

「開かれた皇室」などといいながらも、実際には禁忌のベールに包まれた領域である日本皇室。そこに踏み込んだ先生の研究には壮たるものを感じる。この気鋭の歴史学者は、また大いなる気骨もある。同じ手法を用いて、つぎは昭和天皇の実像に迫ってみたいと語る。

その原先生は歴史を学ぶことの意味を、次のように言う。  

「歴史を学ぶには、史料から何が見えてくるのか、そうした思考力が重要です。年表を丸暗記したような知識だけとか、自分とは関係のない昔のことといった態度も歴史研究者としてはダメです。その時代に自分が生きていたらどうであっただろうか、などと主体的にコミットして、自分自身の問題として歴史をとらえることが必要です。歴史というのは結果であって、それが唯一のもののように見えますが、その当時の進むべき選択肢はいろいろあったわけです。その渦中にいたとして自分はどんな選択をしていただろうか、そこまで考えるのが歴史を学ぶということでしょうね」  

どうやら原先生は人見知りをするタイプのようである。取材を始めたときの原先生はややぶっきらぼうな感じであった。それが具体的な研究の話をするに連れて、その語り口は熱く熱を帯びてきている。

日本の私大有数ともいえる国際学部の充実ぶり

原研究室のある横浜キャンパス9号館建物
原研究室のある横浜キャンパス9号館建物

話が前後するが、原先生は明治学院大学国際学部の教授である。同学部は国際学科だけの単科学部で、国際化の時代にあって世界市民として通じる人材の育成をめざした学部だ。その特徴について、先生は次のように語ってくれた。  

「人文系・経済系・法律政治系の3群でこの学部は構成されていて、学生はこの中から興味のあるものを学ぶことができます。それに学んでいる学群が意に反したものであるとわかれば、途中で群の変更も自由です。非常に柔軟性のある学部といえますね」

明治学院大学国際学部の特徴として、教員スタッフの充実ぶりもあげられる。同学部は幅広い知識の習得をめざした学部なだけに、狭い専門領域に捉われない学際的な教育が施される。そのため、国内外のさまざまな専攻の教員が集められているのだ。原先生もそうした教員の一人である。   さらに海外体験を含めた校外学習の機会が多いこと、海外の大学との提携が多く留学チャンスの多いということもある。また、学部内に全カリキュラムが英語で履修できるコースも用意され、希望者は居ながらにして海外留学と同じ環境で学べるようにもなっているという。

「この学部の充実ぶりは、日本の私大でも有数と言っていいと思います」と原先生。ここが出身母校ではない先生だが、手放しの礼賛を惜しまない。それだけに掛け値なしの評価とみていいだろう。また、これだけ誇って語れる先生の許で薫陶を受けられる学生は幸せともいえよう。

なお、明治学院大学の学生は1~2年次を横浜キャンパスで学び、3年次から都内の白金キャンパスに移るのが普通だ。しかし、国際学部だけは1~4年次を通じて横浜キャンパスで学ぶ。それについても、「誘惑の多い都心に移ることなく、この横浜で4年間勉学に勤しめるのは最高の環境ですよ」と笑った。

天皇そして「皇居前広場」の隠れた歴史の一面

法大法学部<a href='http://www.wasedajuku.com/wasemaga/good-professor/2005/09/post_85.html'>杉田 敦</a>ゼミとの合同ゼミでの打ち上げ会にて
法大法学部杉田 敦ゼミとの合同ゼミでの打ち上げ会にて

国際学部のゼミが始まるのは2年次からで、少人数制が特徴である。原ゼミでも6~10人程度の人数で、研究テーマは先生から出され、それについてゼミ生全員で調査研究し論議していくスタイルとなる。  「ゼミでは校外学習を多くして、なるべく学生を外に連れ出すようにしています。研究テーマに関連する場所ですとか、建物を見て回ります。夏のゼミ合宿でも大学の施設ばかり使わないで、出雲、京都・大阪、北海道など毎年場所を変えています。それに他大学のゼミとの交流もやってまして、2002年は法政大学法学部のゼミと交流しました。こうした試みは学生たちに緊張感を与え、いい刺激にもなっているようです」

ちなみに、2002年度2年次後期の研究テーマは「芸術と政治」。戦前の日本あるいはナチス・ドイツなどにみられる政治プロパカンダに利用された芸術の研究などが中心となる。非常に興味深いテーマだが内容も膨大で、後期のゼミ期間だけでは収まりきらず、03年度も引き続き研究していくことになるという。

最後に、原先生の次の著作だが、取り上げるのはなんと「皇居前広場」。

戦前の国威発揚のさまざまなイベントをはじめ、戦後の占領軍GHQのパレードや労働運動のデモなどに盛んに使用された広場だが、52年の「血のメーデー事件」を最後になぜかほとんど使われなくなってしまっている。その広場の謎に迫る書だそうで、またもや歴史の隠れた1頁が先生によって解き明かされることになりそうだ。

こんな生徒に来てほしい

大学で学ぶためには、高校までに学ぶ基礎知識が不可欠になります。とくに歴史を学ぶためには重要です。その前提のうえで教科書レベルだけに満足しないで、さらに自分の興味のあることを踏み込んで読み調べてみようという人、あるいは自分の足で歩いてみようという人。そういう積極的な人にぜに来てほしいですね。

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