- 江澤 雅彦 助教授
- 早稲田大学
商学部 江澤 雅彦 助教授(えざわ・まさひこ)
1960年東京生まれ。83年早稲田大学商学部卒業。91年同大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。92年八戸大学商学部専任講師。95年同助教授。99年より現職。
主な著作に『生命保険会社による情報開示』(成文堂)、『新保険論』(共著・成文堂)などがある。
予定利率引き下げを契機に日本の生命保険は変わるのか

- 伝統ある早稲田大学商学部校舎
早稲田大学商学部助教授・江澤雅彦先生が学部で講義をするときは、それが大教室であろうと、しわぶき1つなく静まり返って、学生たちは真剣に聞き入るという。
先生の授業で私語は厳禁。違反すると、妥協のない処断が待っているのだ。
「こちらが真剣に話しているのに、学生が私語をするなどもってのほかです。私の授業では私語を1回でもしたら不可。その場で退場させて、名簿から削除してしまいます。その後、聴講に来るのはかまいませんが、単位は出しません。早稲田に来て7年になりますが、5~6人は該当者が出たでしょうか」
そう言って笑う江澤先生だが、聞きしに勝る厳しさである。
逆に学生に迎合する教員が多くなっているといわれる昨今では、貴重ともいえる硬骨漢ぶりでもある。
その怖い(?)先生に、まず早大商学部の特徴について話してもらった。
「何といっても、セメスター制を採用しているところです。これは1年を春学期と秋学期の2つに分けて、履修する科目を学期ごとに変えられる制度です。春と秋に分けることで夏休みで分断されることがありませんし、春学期を終えてから留学すると、海外の大学の新学期に間に合うという利点もあります」
セメスター制度を上手に使いこなすと、1年間海外に留学しても学部を4年間で終えることが可能になる。同学部は2004年に創設100年を迎え、商学部の中ではわが国最古の伝統を誇るが、その教育制度はいささかも古びていないようだ。
消費者はもっと生命保険の商品知識を知るべき

- 江澤研究室のある9号館建物
江澤先生が研究しているのは生命保険である。
「生命保険は万が一のときに機能するものですが、そのためにほぼ一生をかけて保険料を払い続けます。その支払う額からいえば、住宅に次ぐ大きな買物になります。にもかかわらず、あまり中身のことを知らずに契約する人が多い。内容を理解しないで買われる例外的な商品が生命保険だといわれ、それが後にトラブルを発生させる原因になっています」
もっと生命保険の商品知識を身に付けてほしいと訴える江澤先生。
それと同時に保険会社への注文もある。
「契約のときに保険会社も商品内容をよく説明して、消費者の理解を求めたうえで契約を結ぶべきですね。それに情報開示。大手の生命保険会社は相互会社の形態をとっていますから、一般の企業にくらべて情報開示が遅れています。見せない部分が多すぎますね」
いま生命保険業界は、規制緩和・情報開示それに予定利率引き下げ問題……と、めまぐるしい変化の真っ只中にある。
「まさにナマ物の研究です(笑)。情報収集が大変で、毎日の新聞のスクラップに1時間半はかかってしまいます。インターネットの時代なのにという声もありますが、情報というのは自分で読んで切り抜いた記憶がないと、いざ必要なときになかなか出てこないんですね。そういうプリミティブな努力も必要だろうと思っています」
そう言って、江澤先生は夥しい新聞記事のスクラップの山を見せてくれた。この分野の研究には、こつこつと地道な努力を惜しまない「アナログ人間」の面も必要であるようだ。
いま一番ホットな国民的話題でもある予定利率引き下げ問題については、次のように語る。「これが保険業界へのある種の試みになればいいと前向きに捉えています。実際に利率を引き下げることになると、利用者を納得させるためには相当な説明が必要になってきます。これは私が主張し続けている情報開示にもつながりますからね」
いまはその推移を見守っているところだという。
まず情報収集と分析・発表の方法を身につける
早稲田大学商学部のゼミ演習は3~4年次の学生が対象である。江澤先生のゼミでは例年15人前後のゼミ生を受け入れている。ゼミは3年次の学生だけを対象にしたものと、3~4年次合同ゼミの2本立てで行なわれている。
「3年生だけのゼミでは、生命保険に関するテキストの講読をしていく一方で、毎週当番を決めてその学生が集めた生命保険に関する新聞記事やトピックスについて全員で討議するスタイルで進めています」
3~4年次の合同ゼミでは、4つのグループに分かれた共同研究形式で同じテーマをグループごとに研究内容を競い合うことになる。ちなみに、研究テーマは2002年度が「生保離れの解決手段」、2003年度は「競争環境下における生保業の進むべき道」となっている。
「グループ研究では2~3万字程度の論文にまとめてもらいます。4グループの研究の中からもっとも優れたものを選んで、都内8大学が参加して行なわれる学生オープンゼミナールに出品しています。それがいい目標になって研究にも熱が入るようです。また、出品された研究は他大学の学生の批判にも晒されるわけで、これもいい刺激になっているようですね」
先生の学生指導方針については次のように話す。
「学生の主体性に任せて、私のほうからはあまり指示はしないようにしています。生命保険について学ぶことを通じて、情報・資料の収集と分析方法、プレゼンテーションの能力などを身につけてほしいと思っています。これは生保業界ばかりでなく、どんな企業に進んでも必要になることですからね」
参考までにいうと、江澤ゼミの卒業生は大半が大手生命保険会社に就職しているそうだ。 先に学部の講義では学生に厳しいと紹介した江澤先生だが、小数精鋭のゼミでは一転して穏やかな先生に変じるらしい。「ゼミの学生たちからは、よくコンパに誘われましてね。ほとんど断ることはありませんよ」と笑う。
どうやら学生に慕われている姿こそが、先生の本来の姿のようだ。といっても、不真面目な学生への厳しい方針は変わらないようだから、早稲田大学商学部をめざしている諸君には、「心して臨む必要がある」とだけはアドバイスしておこう。
こんな生徒に来てほしい
本気で商学部で学びたいのでしたら、刻々変化する経済・社会の動きに敏感であってほしいですね。ですから、日々の新聞をよく読んで関心をもつ習慣はつけておいてください。それに、将来ビジネス界で活躍するつもりでしたら、大学時代から自分で問題を見つけ、自分で解答を模索し解決して発表できるような積極さが必要になります。

