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Good Professor

升田 純

升田 純 教授
聖心女子大学
文学部 歴史社会学科 国際交流専攻

ますだ・じゅん
1950年島根県生まれ。74年京都大学法学部卒。同年農林水産省入省。75年司法研修所入所。77年から地方裁判所・高等裁判所の判事を歴任。途中、法務省参事官などをへて、97年判事を退官。同年より弁護士および聖心女子大学教授。主な著作としては『詳解 製造物責任法』(商事法務研究会)『実務民事訴訟法入門』(民事法務研究会)など多数。

実務経験を元に"退屈ではない"法学講義を

聖心女子大学は設立当初から国際的に開かれた大学を目標に掲げてきた。これは1916年に開設された前身校以来の伝統で、同校が外国人修道女たちによって開かれた経緯もあるようだ。

現在、その伝統を受け継いでいるのが歴史社会学科国際交流専攻で、ますますグローバル化する社会にあって世界のさまざまなシーンでリーダーシップをとれる人材の育成を目標に専門教育が行なわれている。そのため同専攻では、①国際関係法・法学②国際政治③国際経済④情報科学⑤コミュニケーション⑥国際文化 ――の6系統を多角的に学習する体制をとっている。

ここで国際関係法と法学を教えて活躍しているのが升田純教授である。その略歴からも分かるように、これまでの人生の大半を法曹・立法の現場を渡り歩いてきた強者だ。どんないかめしい人物が登場するのか緊張気味に待っていると、あらわれた先生は非常に物腰の柔らかな穏やかな人柄の人であった。まず、国際交流において法律を学ぶ意味から聞いた。

「現代は社会全体がますます法律化していると言えます。国際社会に出て経済活動や生活をするとき、その社会の基盤を形成している法律を知らないと、活動や自分の主張ができないことになります。それに普段の我々の生活でも、法律知識の必要性は増えていると思います」

先生は国際交流や国際社会に出ていくために、法律は必要不可欠な知識であると語る。しかしまた、受験生である高校生にとっては、法律はややなじみの薄い分野でもあるのは確かだ。

「高校までの授業では、政治経済のなかで若干学ぶ程度でしょうからね。しかし、人は生まれながらに法律に関係するわけですし、高校生といえども無関係ではありません。特にこれからの時代は、トラブルを抱えないためとか、自分の権利を守るためには法律的素養はますます必要になってくると思います」

高校生もぜひ関心を持てということだが、法理論や条文解釈など法学の勉強というのはややもすると無味乾燥、なかなか学ぶのは大変そうな感じもある。

「わたしが学生だったころの経験からもそうでしたが、法学の講義というのはかなり退屈なものが多いのは事実ですからね(笑)。当時の講義も教授が一方的に教科書を読んでいくだけでしたから、非常に退屈でした。わたしの講義ではそうならないように工夫しているんですがね……」

と先生は苦笑する。判事時代、升田先生は若いころ長くスモン訴訟にかかわった。キノホルム薬害による大規模集団訴訟で、被害者の恒久的救済措置を盛り込んだ和解を成立させたとして大変注目された裁判である。

また、法務省民事局参事官時代には 「製造物責任(PL)法」 や阪神大震災で被災した借地・借家人の保護を目的にした 「罹災都市借地借家臨時処理法」などの法案作成に携わった。

そして現在は、大学教授のかたわら弁護士として山一証券の破産管財事務を担当するなどの法律実務にも携わっている。じつに豊富な法曹・立法の実務経験をもっている升田先生の講義では、こうした豊富な経験の実例から語られることも多い。

「なるべく実践的な例で講義するようにしています。わたしの法律実務家としての経験から、基礎的ではあるが汎用性のある知識として教えるということですね。学生のなかには法律は単なる言葉だと考えている人がいます。しかし、条文を言葉として、民法の何条に何が書いてあるかを覚えても駄目なんですね。条文の意味や理念・常識を身につけることが大切です。どう考えてもこれはおかしい。こういうケースではこうなるはずだ。そういう常識で瞬間的に判断するようにならないと不十分です」

先生の講義に必修科目の憲法があるが、定員200人のところ例年250~280人もの受講希望者が殺到するという。豊富な実務経験を例にした「退屈ではない講義」が多くの学生たちを惹きつけているのだ。」

変革期にこそ法律的素養をもってしたたかに

升田先生は学生たちによくこんな話をするという。

「人の一生のあいだに1度か2度は必ず大きな変革期に遭遇する。そのときどう対応するかで人生が決まる。この変革期を乗り切るためには、古いものを捨て去るようにしたほうがいいことが多い――よくそう言っているんですが、学生たちは不思議そうに聞いているだけですね(笑)」

今まさに時代はうねるような大変革の只中にある。社会の制度も体系も価値観までもが変わってしまいそうな勢いだ。

「まあ、いまの学生は大変だと思いますよ。我々が大学を出たころは、30年後にこんな時代になろうとは思ってもみませんでした。人生をコツコツ蓄えていけば、将来それが報われ生かされるときがくる。そう思ってやっていました。ところが、いまはただ蓄えるだけでは無駄だと言われてしまう時代ですからね。こういう事態もあるんだということですね。いまは変革の過渡期なんでしょうが、過渡期なだけに何を支えにして生きていくのか、いまの若い人は本当に大変だと思います」

悩める21世紀女子大生の生き方のヒントになればと、升田先生は法学以外にも、社会の動きや世の中の実態についても逐一教えるようにしている。

この激動の時代、女子大生の就職受難の時代にあって、聖心女子大学の就職状況は例外的にすばらしいのだという。2002年3月の卒業生の就職率は99.2%。国際交流専攻の卒業生も銀行・証券はじめ、総合研究所・航空運輸・商社・マスコミなど大手企業への就職が目立つ。

ただ、就職活動など目先のことばかりにあまり捉われないほうがいいとも升田先生は話す。

「名の通った大企業に就職するのは、それはそれで結構ですが、むしろもっと中長期的な視点に立つことが必要ですね。就職して働く機会を得たのなら、そのあいだに知識や資格・経験を蓄えて、次のステップ・次のステップを目指すようにするくらいしたたかな生き方のほうが結局いいんじゃないかな。そのほうが変革期に遭遇したときに普遍的に役立つと思いますよ」

近い将来聖心女子大をめざすかどうかを問わず、これらは悩める受験生諸君への升田先生からのアドバイスである。

こんな生徒に来てほしい

やはり自発性・積極性のある学生でしたら、教え甲斐がありますね。法律を学びたいという人には私はいくらでも手助けします。ただ、こちらから一方的に知識を押しつけても身につきませんから、自発性・積極性がないと困ってしまいます。それに何といっても市民としての常識ですね。法律を学ぶには、いわゆる知識よりも社会常識のほうが重要とも言えますからね。

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