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Good Professor

早川 吉尚

早川 吉尚 教授
立教大学
法学部 国際比較法学科 大学院 法務研究科

はやかわ・よしひさ
1968年新潟県生まれ。91年東京大学法学部卒。96年同大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。98年立教大学法学部国際比較法学科助教授。05年同教授および同大学院法務研究科教授。98年米コロンビア大学客員研究員。99年英ロンドン大学客員研究員。主な著作に『国際私法』(有斐閣)『ADRの基本的視座』(不磨書房)などがある(著作はともに共著)。

「国際私法」研究はやっかい?でも面白い!

早川研究室のある立教大学12号館
早川研究室のある立教大学12号館
初冬の立教大学池袋キャンパス全景
初冬の立教大学池袋キャンパス全景

今回ご紹介するグッド・プロフェッサーは立教大学法学部教授の早川吉尚先生である。まず同学部の特徴から話してもらおう。

「立教大学そのものがマンモス校ではありませんから、法学部も少人数制を敷き、教員と学生の距離の近いことが第1の特徴ですね。それに1年次から導入ゼミを含めた専門科目の教育が行なわれ、『法とは何か』という基礎的なことからみっちり学べるようになっています。このあたりも特徴でしょうか」

さらに、ビジネス法務あるいはグローバルな視点を強調した指導も立教大学法学部の特徴だろうと語る。なお早川先生が所属する国際比較法学科では、カリキュラムの見直しがいま行なわれており、それに合わせた新しい学科名も近く発表される見通しともいう。

さてその早川先生だが、「国際私法」の研究が専門である。はたして、どのような法律分野なのか……

「国際化の進展に伴って国籍の違う人同士が結婚したり、企業の国際間取引などが盛んになっています。これらがもし紛争に発展したときは、どちらの国の裁判所に訴えて、どちらの国の法に準拠して裁かれるのかといった問題が生じてきます。それらを解決するためにあるのが国際私法ということになります」

一見すれば単純明快な話のようだが、これが実に複雑なのだ。国際私法は各国別にそれぞれのルールが決められていて、各国ごとに法制度も裁判制度も違う。そのうえ、当事国以外の第3国の裁判所に訴えられるような場合すらあるのだ。そうなると係争のケースは膨大な数にのぼり、さぞや研究も大変だろうと思われる。だが、早川先生は……

「日々新たな問題が発生する世界ですから、面白いくらいです」

かえって楽しんでいるふうなのだ。そうした国際化に伴う新たな問題を最近の例から挙げてもらうと、
①一従業員が業務のなかで特許を取得したときの対価支払い
②代理母の問題
③宇宙空間にある人工衛星をめぐる紛争
④ペーパレス化された外国株を担保にした融資でのトラブル等々……

「こうしたことから国際間に統一的なルールをつくれば便利ですし、それが理想でもあります。しかし、実際にはなかなかそうはいきません。たとえば、重婚が罪になる国があれば許されている国があり、労働者の解雇が容易な国があればそうでない国もあります。それぞれの国々によって法制度が違い、価値観が違い、宗教観が違っています。ですから、国を超えた統一的なルールづくりというのは現実にはほとんど不可能なのです」

結局は、紛争が発生するたびにある国の法制度に則って解決を図る現行の方法よりほかないのだそうだ。なかなかやっかいな研究領域だが、逆にそれを楽しむくらいに前向きでアグレッシブな早川先生でもある。

国際展示会でゼミ研究成果を発表

シックなレンガ造建物が目立つ(第一食堂)
シックなレンガ造建物が目立つ(第一食堂)

早川先生のゼミ演習は3・4年次の学生が対象で、その3・4年次同時に合同で行なわれる。各年次の定員は20人だが、多い年度は総勢60人になることもあるという人気のゼミなのだ。

「わたしのゼミではゼミ生を10チームほどのグループに分けまして、国際電子商取引を実際に体験してもらっています。それを通してITを中心にした社会のさまざまな変化、とくに国際的な視点から社会制度や法制度に与える影響を調べるのが最近のテーマとなっています」

さらに、同じチームごとにそれぞれの研究テーマを決めてグループ研究も行なっていく。

「研究テーマについては、それぞれのチームの自主性に任せています。テーマは何でもありなのですが、何を伝えたいのか、それが他の人の興味や知的好奇心をかき立てることができるのか――それだけにはこだわっています」

このグループ研究の成果は、毎年10月に幕張メッセで開かれる「シーテック ジャパン」の展示会に出展展示される。映像や情報・通信に関するアジア最大級の国際展示会において、なんと早川ゼミはひとつのブースを貸し切って展示・発表しているのだ。

「シーテックへの出展に関してはゼミ生たちだけでやっています。ですから、私はただ展示されたものを見に行っているだけです(笑)。あくまで学生がしていることですから、一流企業の展示に交じるとどうしても見劣りがしてしまいます。これからは、どう見せていくのかその工夫が課題でしょうね」

法学の分析手法を身につけてほしい

ある日の立教大池袋キャンパス点描
ある日の立教大池袋キャンパス点描

ともあれ、国際展示会での出展・発表がゼミ生たちの大きな励みになっていることは間違いない。その学生たちへの指導方針について、早川先生は……

「法学における分析手法を身につけてほしいと思っています。つまり、①調査して分析し②結論を導き出して③アウトプット(報告)する――その一連の分析手法ですね。これは法学における分析ばかりでなく、社会的な現象や制度変化に伴う各種分析などにも応用できて一生使えますから、ぜひ身に付けてほしいですね」

という。最後に、法学を学ぶ意味について早川先生は次のように語ってくれた。

「法学部で学ぶからといって、法律用語や法律知識をいたずらに覚え込むだけでは意味がありません。法律というのは社会のルールですから、なぜそういう法律が存在するのか、それを法学の分析手法を用いて解き、他人にも説明できるようにすること――そうしたことが法学を学ぶ意味でしょうね」

今回の取材のあいだ早川先生は常にテンション高く語ってくれた。熱き心をもった前向きで意欲的なお人柄がうかがえる。また「わが立教大学」をこよなく愛する先生として他の追随を許さない。とにかくすごい惚れ込みようなのだ。

「とくに池袋キャンパスは都会的なセンスにあふれ、日本における私立大学キャンパスの理想的なものが備わっている気がします。非常に居心地のいいキャンパスですよ(笑)」

こんな生徒に来てほしい

わたしの講義では常に学生に質問します。その質問で知識の多寡を問うことはありません。ある問題や事象について「あなたはどう考えますか?」「なぜ、そう考えるのですか?」というような聞き方をします。高校までの暗記学習に慣れている人は多少とも戸惑うようですが、じつは大学で学ぶということはその種の質問に答えられるようになるということなのです。そのあたり、大学に来たらどんどん意欲的に学び取ってほしいと思います。

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