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Good Professor

篠崎 道彦

篠崎 道彦 教授
芝浦工業大学
システム工学部 環境システム学科

しのざき・みちひこ1960年千葉県生まれ。84年東京大学工学部都市工学科卒。90年同大学大学院工学系研究科博士課程修了。90年芝浦工業大学システム工学部助手。95 年同助教授。01年より現職。03年シドニー大学客員研究員。主な著作に『アーバンデザインの現代的展望』『都市デザインとシミュレーション』(ともに鹿島出版会)『新しい都市居住の空間』(放送大学教育振興会)などがある(著作はいずれも共著)。

先進国らしい街づくりに貢献する環境システム学

芝浦工大篠崎道彦研究室のある大宮キャンパス「システム工学」棟
芝浦工大篠崎道彦研究室のある大宮キャンパス「システム工学」棟

芝浦工業大学が誇る広大な埼玉県大宮キャンパス。今回の取材で篠崎道彦先生を訪ねた時ちょうど新1年生の実験授業中で、まずその様子を見学させてもらった。

さて今回登場願う篠崎先生だが、その所属はシステム工学部環境システム学科の先生だ。

「環境システムといっても聞き慣れないかもしれませんね。都市計画プラン・市街地再開発などが計画立案されたとき、工学的な手法を用いながら周辺まで含めた環境問題についてより良いシステムづくりを考えていく――そうした学問領域なのです」

街づくり・都市計画といった問題には、建設会社や建築オーナー・行政それに周辺住民までそれぞれ複雑な思惑が絡み合う。そうしたときに科学的な根拠を示しつつ調整し折り合いをつけていくのがプロの研究者・専門家の役目ともなる。しかも、その折り合いは完成時にとどまらず5年後・10年後の環境変化までをも予測しなければならない。いやはや実に遠大というか責任の重い話でもある。

周辺規制ルールについて国と共同研究

芝浦工大新1年生の卵落下実験
芝浦工大新1年生の卵落下実験
残念ながら結果は失敗
残念ながら結果は失敗

その計画段階から参加した東京都中野区の「平和の森公園」周辺地区の街づくりは篠崎先生の環境システムの考え方がよく反映しているという。

「これからの建築物は今までのように古いものを壊して新しいものをどんどん作るわけにはいかなくなりつつあります。今あるものに手を加えてどう再利用していくかという方向に進んでいくはずです。そのときに周辺を含めた環境システムをどう考えるのかが重要な問題になります。最近では環境の各部門ごとにチェックして点数化してラベリング(仕分け)する試みも始められています」

資源小国ニッポンが21世紀も先進国としてあり続けるには「環境立国」を視野に入れるしかないようにも思えるが、欧米先進諸国とくらべて環境に配慮した都市空間が日本に広く存在しているかと言えば、あいかわらずのスクラップ&ビルド型ばかりで地震防災対策もふくめて正直かなり疑わしいといわざるを得ない。

だからこそ篠崎先生はさらに1歩進め、新たな建物を建築したり改築するときに周辺環境に及ぼす影響をきちんと規制するルールづくりに取り組もうとしている。

「いまでも建物単体の建設については建築基準法等によって厳しく規制されています。ところが、建物によって周辺環境がどう変化するのかについては十分に考えられていないのがこの国の実情です。いったい周辺にどんな影響が予想されてどんな規制が必要なのか、そうした早急なルールづくりがいま求められています」

こうした研究を篠崎先生は国土交通省と共同で最近行なったところだという。

最適な組み合わせ求めシステム工学的手法で研究

新緑がまばゆい芝浦工大大宮キャンパス図書館
新緑がまばゆい芝浦工大大宮キャンパス図書館

かつて工学研究といえば、ひとつの目的を設定して徹底的に掘り下げて研究することが常であった。これに対して、設定された目的のために最良・最適な組み合わせについてシステマティックに研究していくのがシステム工学であり、こちらは比較的新しい研究分野とされる。

芝浦工業大学のシステム工学部は、電子情報と機械制御・環境の3つのシステム学科からなる。篠崎先生が所属する環境システム学科の特徴について聞いてみよう。

「芝浦工大の環境システム学科にはいろいろな専門教員スタッフがバランスよくそろっています。システム工学のバックグラウンドになる研究設備である①情報処理装置②地図と環境情報を重ね合わせるGIS③計画模型の内部まで接写できるシュノーケルカメラ装置なども用意されていて、私立大学としてはかなり整えられた研究環境にあることも特徴でしょう」

こうした中で、システム工学部環境システム学科4年次の学生は卒業研究のために各教員の研究室入りをする。各研究室の定員は7~8人程度だ。

「卒論テーマについては私のほうからいくつか提示してそれぞれの関心のあるテーマを選んで研究してもらいます。いきなりテーマを決めて研究に取り組めというのも酷な話ですので、前年の暮れに行なわれる研究室説明会あたりから研究室入り希望の学生を絞って各自テーマについて相談を始めるようにしています」

現代学生に欠けがちな「空間をイメージする力」

晩春の芝浦工大大宮キャンパス全景

それで学生たちは4月の研究室入りと同時に研究に取り組むことができるわけだ。なお、篠崎研究室ではグループによる研究も認めているという。そこで篠崎先生の学生たちへの指導方法だが……

「まず、学生自身が自分で考え抜くということですね。自分で考えるというと単なる放任主義と思われるかもしれませんが、そうではないのです。それぞれ大学4年間で学んだ成果を自分の納得のいく形に表現してもらうということなのです」

そもそも環境システムについて学ぶことの意義について篠崎先生は次のようにも語る。

「この学問は非常に間口が広くて奥行きのあるのが特徴です。最近は個別の環境問題などへの住民参加もなされるようになり、一見すると素人の人でも簡単に参加できそうに思われがちです。しかし、そこには研究者・プロでなければできない専門的な役割もあります。そのためには基礎から積み上げた学識の体系をもっていないと現場で役立つ存在には到底なれません」

その環境システム学の学識体系とは、①建築学②法律や制度③補助金や資金調達の方法など実務的なことはもちろん、空間をどうイメージできるかといったセンスを問われるテーマまで思いのほか広範囲だ。そして、いまの学生にとかく欠けがちなのはこの空間をイメージする力ではないか――篠崎先生はそう語る。

「環境システムを学ぼうというのであれば様々な現場を見て回ってほしいですね。この大都会・東京には何かと話題の〝六本木ヒルズ〟やら〝表参道ヒルズ〟などと新しい建物や空間が続々と誕生しています。我々が学生だったころは新しいものが完成すると競って見に行ったものです。いまの学生たちは自ら見に行こうとなかなかしないのに逆に驚いてしまいます。実物を見てその空間を体感することが何より重要なのに、もっと好奇心をもっていないと学ぶにしても味気ないだろうと思うのですが……」

篠崎先生はとても穏やかなお人柄とお見受けしたが、最後のほうの話は学生諸君にはちょっと耳が痛いかもしれない。

こんな生徒に来てほしい

建築とか都市・環境などは現役高校生の皆さんでも実物を見に行けるわけですから、実際に訪ねて「自分ならこんなこともできるのに」といった具体的なイメージを持つようにして来てほしいです。我々の学科は建築系のデザインから環境問題まで幅広く扱いますので、物事を多面的に見たり考えることのできる人にも来てほしいですね。

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