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Good Professor

家城 和夫

家城 和夫 教授
立教大学 
理学部 物理学科

いえき・かずお
1955年三重県生まれ。83年京都大学大学院理学研究科物理学第2専攻博士課程単位取得退学。83年東京工業大学理学部物理学科教務員。87年立教大学理学部物理学科専任講師。90年同助教授。98年より現職。91年米ミシガン州立大学客員助教授。94年より毎年春・夏休みを利用して、同州立大の実験に5年連続で参加。

原子核物理学の世界最先端

家城研究室のある4号館「理学部」棟
家城研究室のある4号館「理学部」棟
学生たちの質問に答える家城先生
学生たちの質問に答える家城先生

立教大学理学部物理学科の家城和夫教授は一見して素朴な印象を受ける先生だ。そんな先生の専門は「原子核物理学」で、世界の最先端をいく実験グループのメンバーでもある。まずは立大物理学科の特徴から話してもらおう。

「本学物理学科は1学年の入学定員が70人ほどですから、文字どおりの少人数制です。そのためもあって教員の側から学生の顔がよく見え、とてもアットホームな雰囲気なのが一番になります。それに1年次から各学年とも演習に力を入れていて、とにかく実験が多いのも特徴でしょう」

同学科は原子核と宇宙線・理論物理の3分野からなるが、いずれも「ビッグサイエンス」といわれるもので、私立大学でこうした分野が学べるのは珍しい。このうち家城先生は大学院時代から一貫して「原子核」(atomic nucleus)について研究してきた。

「ここでいう原子核というのは、原子の中心にあって、陽子(proton)と中性子(neutron)が核力により緊密に結びついている非常に小さな核になります。私がこの研究に入った時すでに原子核の基本的な性質はほぼ解明されていました。それで重イオンなどから成る重い原子核同士を衝突させたら、どういう現象が起こるのかという研究を中心にやってきました」

初期の実験において家城先生は、衝突された側の原子核がコマのようにスピンして回転する様子をガンマ線を使ってキャッチすることに成功した。これは世界初の快挙だったが、これは先生がまだ大学院生だったころのことだった。

その後この研究には多数の研究者が参入し、抜きつ抜かれつの状態になっていく。そんななか米国ミシガン州立大学のグループの研究が他に先んじていて、ハンガリーのエトヴェシュ大学のメンバーとともに家城先生は招かれ共同研究に参加してきた。

「このミシガン州立大では、大型の中性子検出器(ニュートロン・ウォール)を使用して重イオン核反応における中性子の相関や分解反応の実験をしてきました。リチウムやヘリウムの原子核を衝突させてどう壊れるかといった実験です。94年から毎年の春・夏休みに渡米して実験に参加し5年間続きました」

これらの諸実験も一応の成果をみて、同州立大ではさらに高精度な中性子検出器の構築に入っている。今後はさらに重いマグネシウムや酸素などの原子核について実験・分析する予定だという。

教授室つねに開放する熱血指導

冬の立教大学池袋キャンパス正門
冬の立教大学池袋キャンパス正門
冬を迎えた立大キャンパスの外景
冬を迎えた立大キャンパスの外景

先にも書いたが、立教大学物理学科では各学年とも演習授業に力を入れ、ここの学生たちは実験に臨む機会が多くなる。この演習のクラスは10~20人ほどで、文系のゼミ演習のような雰囲気で学べるらしい。

「学生は4年次になりますと、各教員の研究室に配属になって卒業研究を行ないます。配属メンバーは各研究室とも5人くらいです。わたしの研究室の中心テーマは新たな中性子検出となりますが、学生を3つのグループに分け、それぞれが別の角度から研究する方法をとっています」

こうした研究においては、個人研究よりもお互いに補い合って研究するグループでの研究のほうが向いているとも語る。そんな家城先生の指導方針だが、学部での講義で心掛けていることについて語ってくれた。

「わたしの講義では、授業の節目ごとにいきなり学生を指名して内容をどこまで理解しているのか確認するようにしています。学生にしてみれば誰がいつ指名されるか分かりませんから(笑)、おのずと受講態度は全員が真剣となります。その段階でまだよく理解できていないようでしたら、さらに詳しく教えるようにしています」

それでも理解できないという学生もあろう。そのため家城先生は教授室を常に開放して時間の許す限り個別指導をしている。そのため分からないところのある学生たちは何時でも教授室を訪ねて良いことになっている。そうした徹底した学生指導には本当に頭が下がる。

「今も昔も学生さんは高い授業料を払っているわけですから、できるだけ理解できないことを後に残さないようにサポートしてあげたいと思っています」

大学理学部で学ぶということ

名曲で知られる「鈴懸の道」は理学部の前
名曲で知られる「鈴懸の道」は理学部の前
師走の立大名物クリスマスイルミネーション
師走の立大名物クリスマスイルミネーション

また立教大学理学部では、キャンパスのある東京・豊島区の小・中学校と協力して「理数教育連携を通じたCBLSプログラム」を実施している(CBLSとは「地域に根差した科学教育」の英語略)。これは区内の小・中学校の先生と協力して理数系授業を立案するもので、07年度は理学部学生による授業企画の実践も行なわれた。学生たちが実際に小・中学校の児童・生徒を指導することになる。

「実践に参加した感想としては『小・中学生を教えてみて初めて自分自身で理解できていないところが分かりました』などと述べる学生が多いですね」

今も昔も「科学立国」以外に生きる道のない「少資源国家」たるこの国に蔓延するサイエンス音痴やトンデモ科学(テレビメディア等で無原則にもてはやされるスピリチュアル・占い・超科学など)の弊害を憂える識者の声は高まるばかり。なかでも小・中・高校生の「理科離れ」が深刻な社会問題とされる。そんななか非常に興味深い試みで、また参加した学生たちにも大好評だったようだ。

インタビューの最後に大学の理学部で学ぶことの意味についても語ってくれた。

「じつは理学部で学んでも他の工学系学部のような特別な資格などが取れるわけではありません。また将来理学部で学んだことを生かせる仕事に就ける等という保証もありません。しかし理学部を卒業した人で理学とは直接関係のない分野で活躍している人は昔からたくさんいます。そうした関係ない分野であっても、課題解決にあたって理学的手法を用いて解決することができるのです。理学部で学ぶことの意義としては、これが大きいと思いますね」

この取材を終えると、廊下で待っていた3人の女子学生が研究室に入ってきた。例の「アポなし質問」らしい。そんな学生たちの表情は真剣そのもの。それに対応する家城先生がまた実に懇切丁寧な説明をしてくれる。

「学生の質問には時間の許す限りこたえていきたい」

そう語っていた実践版であり、まさに真の教育者の姿だ。こうした研究者にして教育者というベストプロフェッサーがいかに稀な存在か、君たちもやがて思い知ることだろう。

こんな生徒に来てほしい

高校までと違って大学というところは、「公式」をただ暗記するような学習ではなく「自ら考える」ことが重要にとなります。そのためには様々なことに興味をもって情報を集め、その情報を自分のなかで組み立てて構築する力が必要になります。それが「自ら考える」ということになるわけです。
現役高校生の皆さんも受験勉強で大変でしょうが、あまり目先のことに囚われないでその先に広がる世界・人生のために必要な知識を学んでいるのだという意識が大切です。そのためには自分は将来何をするのかを見据えてどんどん面白いことを開拓していって欲しいですね。

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