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Good Professor

腰岡 政二

腰岡 政二 教授
日本大学
生物資源科学部 植物資源科学科

1950年兵庫県生まれ。’75年大阪大学大学院薬学研究科博士課程中退。’75年静岡県立薬科大学(現静岡県立大学薬学部)助手。’80年カナダ・カルガリー大学理学部招聘研究員。’84年農林水産省入省。農水省附属研究機関研究室長や農研機構・花き研究所所長など歴任。’07年より現職。薬学博士・農学博士。植物化学調節学会賞受賞。主な著作に『最新農薬データブック』(ソフトサイエンス社)『農業技術事典』(前著ともに分担執筆・農文協)がある。
腰岡先生が主宰する「花卉園芸学研究室」のURLアドレスはコチラ → http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~kaki/

農業植物研究の世界的パイオニア

腰岡研究室のある「12号館」建物
腰岡研究室のある「12号館」建物
日本大学湘南キャンパスの正門
日本大学湘南キャンパスの正門

日本大学湘南キャンパス(神奈川県藤沢市)は、江ノ島に程近い自然豊かな立地条件を誇る。この広々としたキャンパスで学ぶのは生物資源科学部(11学科)の学生たちだ。今回の一生モノのプロフェッサーは、日本大学生物資源科学部植物資源科学科の腰岡政二教授。まずは同学部と学科の特徴からお聞きした。

「生物資源科学部は母体が旧農獣医学部でして、それが発展的改組をして現在の学部に生まれ変わったものです。我々が所属する植物資源科学科は、農学の本質的学問分野を扱う学科になります。つまり作物や園芸・造園・遺伝・病理・昆虫についての研究で、農業研究の中心を担っているといえるでしょう」

植物資源科学科は各研究室や教員・学生がよくまとまり、非常にいい雰囲気と環境のなかで学習や研究ができることが大きな特徴とも語る。

腰岡先生の専門は「花卉(かき)園芸」研究だ。この花卉というのは出荷販売やアメニティを目的に栽培される観賞植物のことで、先生は花卉の生育・開花調節について研究している。その研究テーマというのが実に多様なのだ。

「わたしが一番力を入れているのは、花卉の生育開花のメカニズムについての研究です。なかでも『植物ホルモンのメタボローム』に注目して研究しています。このメタボロームというのは、植物内での諸ホルモンの生合成・代謝や移動などの動態のことをいいます。このメタボロームに対して化学的あるいは分子生物学的な手法、さらには栽培環境の調節などで働きかけて、生育・開花時期を自由にコントロールできるようにしようといった研究をしています」

..花卉園芸研究の基本は常に農業生産にあり
こうした研究過程において、腰岡研究室ではコチョウランの花の付き方に変化が生じることを発見している。これは世界初の発見だ。

腰岡先生にとっては前職・農林水産省研究所勤務のころから、幾つもの世界的な品種改良や生育法の開発経験がすでにあったため、世界初もことさら珍しいことではないとのことだ。たとえば、植物の生育にかかわるホルモンに「ジベレリン」というのがある。現在までに発見されている136種のうち約20種は先生の研究グループによる発見なのだ。

このほか腰岡研究室の研究テーマを挙げると、①試験管(実際は小型のビン)内でバラを培養栽培して花を咲かせ卓上観賞用に商品化する試み②房状の花の観賞期間を数値化して評価する試み③デジタルカメラで葉の色の濃さを測定して非破壊方法で肥料の過不足を判定する試み④絶滅危惧種である「クゲヌマラン」の保存・増殖の研究(キャンパスのある藤沢市からの依頼)――等々とその守備範囲はじつに多様だ。先生はどの研究も、基本は農業にあることを忘れてはならないと説く。

「私たちの研究は、理学研究のような純粋サイエンスとは違います。あくまで農業生産に結びついて、消費者に結びつく実践的な研究内容であることを求められているからです」

..そもそも花卉園芸研究に失敗はつきもの
日大植物資源科学科において、学部学生が各教員の研究室配属になるのは3年次からで、ひとつの研究室の定員は1学年20人前後だ。

「3年次で研究室入りをした学生は、一般講義のないときは研究室にやってきて、実験や実習・勉強会を行います。まず、学年前期に研究室で進められているすべての研究プロジェクトについて4年次の先輩たちを手伝い、それぞれの研究テーマを把握します。そして、その中から自分の興味ある研究テーマを絞っていき、3年次後期から本格的な卒業研究を始めることになります」

そもそも花卉園芸についての研究は、生物・植物が相手であり5年がかり・10年がかりというものも珍しくない。だからこそ、先輩から後輩へ研究成果を申し送りながら継承されていくことに大きな意味があるのだ。こうした学生指導において、腰岡先生が常日ごろ心掛けていることについて、次のように語る。

「自分自身でやっている研究内容について、責任をもって説明できるようになりなさい――ということに尽きますね。植物相手の研究に失敗はつきものです。ですから、たとえ研究が失敗に終わってもいっこうに構いません。その失敗の原因について、ちゃんと説明できれば良いわけです。これを学生指導の第一としています」

失敗を恐れず挑戦し1歩ずつ積み重ねていく

日大湘南キャンパス本館の前
日大湘南キャンパス本館の前
小田急・六会日大前駅より校舎遠望
小田急・六会日大前駅より校舎遠望

ところで、日大湘南キャンパスでは毎年秋に学園祭が開かれる。花卉園芸学研究室で学ぶ学生たちにとって、これはただの展示やレクリエーションではない。彼らが自主的に栽培してきた作物を、来場者に販売して収入を得、4年次の研修旅行費用の一部に充てるのが恒例になっている。そのため学生たちも花の栽培に熱心に励むことになる。

「これだけは私たち教員はノータッチというのが原則です。学生たちは自分の小遣いの中から種子を買って育てていきます。それで学生たちのやることを見ていますと、風変わりといいますか、妙な方法で栽培したりしていることが多くて、これが気になってしょうがないのですね(笑)。そんな方法では失敗するかもしれないし、あるいは劇的な成果を生み出すかもしれません。まぁ、それでも黙って見ているように自制しているわけですが、若い頭脳から生まれる発想は、とても面白いと思いますね。もちろん未熟な面は多々あるとしても、その柔軟な考え方には本当に学ぶべき点があります。ですから、日々、学生諸君といっしょに研究をしていると、私自身じつに愉しいわけですよ」

学生たちを見守る厳しくも温かいまなざしが、腰岡先生の最大のモットーともいえよう。そして農業・植物について学んだことが、農業以外の仕事や人生・生活に役立ってくれたらとも語る。

インタビューの最後、腰岡先生はこうも語ってくれた。

「研究室のホームページもブログも、共に高校生に向けた分かりやすい内容に心掛けて発信しているつもりです。ぜひアクセスしてもらって、高校生らしい意見や感想もどしどし投稿してほしいですね」

こんな生徒に来てほしい

植物に興味があるに越したことはありませんが、物理や化学に興味のある人でもいいと思います。植物や農業などについては大学に入ってからでも詳しく学べます。要は本人の意欲でしょう。わたし自身も元々は薬学を学び、それから農学をやってきた人間です。だからといって、薬学の知識が無駄になったということは全くありませんからね。

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