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Good Professor

高田 秀重

高田 秀重 教授
東京農工大学
農学部 環境資源科学科

たかだ・ひでしげ
1959年東京生まれ。’86年東京都立大学(現首都大学東京)大学院理学研究科化学専攻博士課程中退。’86年東京農工大学農学部環境保護学科助手。’97年同助教授。’07年より現職。この間’90年米ウッズホール海洋研究所客員研究員。主な著作に『環境ホルモンの最新動向』(ブックレビュー社)『沿岸の環境圏』(フジ・テクノシステム)『東京湾―100年の環境変遷』(恒星社厚生閣)などがある。海洋学会岡田賞・水環境学会論文賞・環境化学会学術賞など受賞多数。
高田先生が主宰する「Peace on Earth――水環境保全学/環境有機地球化学研究室」のURLアドレスはコチラ → http://www.tuat.ac.jp/~gaia/Index.html

プラスチック廃棄物汚染対策の先駆者

高田研究室のある府中キャンパス5号館
高田研究室のある府中キャンパス5号館
歴史を感じさせる東京農工大学本館建物
歴史を感じさせる東京農工大学本館建物

いま世界的ベストセラーとなっている書物のひとつに、『人類が消えた世界』(A・ワイズマン著 日本語版・早川書房)があるのをご存じだろうか? この書を要約すると、「人類が姿を消したら残された地球はどうなるのかを、米国人ジャーナリストが世界中の科学者に取材し、その知見に基づいてさまざまに構成した近未来予測の数々」ということになろう。ここに日本人の科学者として唯一登場しているのが、東京農工大学農学部環境資源科学科の高田秀重教授だ。

高田先生は現在、廃棄されたプラスチックの海洋汚染問題に関心を持たれている。

「プラスチック製品を利用して廃棄しますと、経時変化によって小さな破片になります。これまで廃棄プラスチックがどんな形状になっても、そこから有毒性のものが発生するとは考えられていませんでした。ところがプラスチックの破片は非常に軽いため、大半が海に流れ出し海水中に浮遊して、何十年も存在することになります。その過程でプラスチック片に海洋中の汚染物資が付着することが分かってきたのです」

その廃プラスチックに付着する汚染物質として、PCB(ポリ塩化ビフェニール)やDDT・HCHなどの農薬類が挙げられる。いずれも毒性が強く、微生物から魚介類までがこれらを摂取して食物連鎖を繰り返し、最終的に我々ヒトの食卓に載ることになる。この海洋中のペレットに、汚染物質が付着していく事実を世界で最初に発見したのが高田先生なのだ。

「汚染物質は油に吸着しやすい性質があります。そもそもプラスチックは石油から精製されて作られますから、汚染物質と結び付きやすい性質をもっているわけです。いまやプラスチックは世界中で毎日大量に廃棄されているため、人類および地球環境にとって非常に由々しき問題です。地球規模でモニタリング(監視)する仕組みの構築が急務といえます」

医薬品による水汚染問題の深刻さ

農工大学生たちの知を支える附属図書館
農工大学生たちの知を支える附属図書館

こうして、高田研究室には世界中の海岸で採取されたプラスチックが送られてきて、その分析に忙しい日々を送る。実はプラスチック廃棄物汚染問題に着目すると共に、先生は水の汚染問題についての分析研究も長年行っている。とくに最近注目しているのは、医薬品による水汚染問題である。

「医薬品による水環境の汚染というのは、ますます世界的に広がっており、見逃せない問題になっています。この汚染源は我々一般の人間です。私たちが病院で処方された薬や売薬を服用したとき、その全てが体内に吸収されるわけではありません。その一部は体外に排泄されてしまいます。ところが現在の下水処理施設の装置では、すべての医薬品を除去するのは不可能に近いのです」

よって人工的な医薬品の一部は河川に流れていってしまう。全国40河川の調査でも、ほぼ全河川から何らかの反応があったという。汚染源が一般の人間なのだから、問題解決も非常に厄介だ。この、医薬品による水汚染問題について日本で最初に取り組んだのもまた高田先生なのだ。

ほかにも、東南アジア諸国の有機汚染物質動態調査や、東京湾における有機汚染物質の解析調査などの調査研究をはじめ、日本海洋学会海洋環境問題委員会委員長として「羽田空港拡張工事における環境アセスメントへの緊急提言」をするなど高田先生は非常に精力的な活動を続けている。

日本初「環境」専門に研究する「環境資源学科」

研究室の学生の指導をする高田先生
研究室の学生の指導をする高田先生

高田先生が学部で担当しているのは農学部環境資源学科になる。同学科の前身は環境保護学科で、日本で初の「環境」を専門に研究する学科として’73年に誕生した。同学科の特徴について先生はこう話す。

「この学科のほとんどの教員が環境科学を専門にしておられます。しかも20年・30年とやっている方ばかりですから、環境について総合的に学ぶことができます。それに環境問題を単に問題として捉えるだけではなく、その解決方法についても複眼的にとらえて研究しているところが特徴でしょう」

環境資源学科では、学生は3年次後期から各教員の研究室に配属になる。学生数は各研究室とも4~5人。高田研究室では、新たに加わった学生ひとりずつに、先生自らが試料分析や研究の基本を手取り足取り指導するのだという。

「試料の分析や研究には、前処理から複雑な分析機操作・データ解読まで、一連の基本事項があり、それを私が責任をもって教えて身に付けてもらうようにしています。この段階で間違った方法を覚えてしまうと、基本を外してしまうことになりますからね。それに教えながら言葉を交わすことで、その学生の性格や考え方、向き不向きなどが分かるという利点もあります」


「環境の研究で大切なことは、『現場百遍』ということに尽きます。自分でフィールドに赴いて五感を使い、現場で起こっていることを理解することですね。私たちの汚染の調査では、東南アジアの国々に行くことが多くなります。海のにおい、街の喧噪や雰囲気。そうした環境研究のヒントが現場にはたくさんあります。学科の実習においても、多摩川や東京湾での野外実習を行なって、学生諸君に現場を身をもって体験してもらうようにしています」

そう語る高田先生。これこそが研究室の基本方針なのだ。

「私たちが扱っている環境問題では、毎年のように新しい環境汚染事例が発生しています。逆に、突然として汚染問題がなくなって、急転直下解決してしまったという例もあります。そうした動向をしっかり把握していないと、時代に付いていけないことにもなります」

そのへんが難しいところであり、またやり甲斐でもある――と高田先生は語った。

こんな生徒に来てほしい

とにかく環境問題に関心のある人に来てもらいたいですね。偏差値とか大学名などに囚われることなく、本当に自分の学びたい学部・学科であるのかを見極めて来てほしいです。といっても、はじめから専門的な知識をもっている必要はありません。環境全般に対する関心があればいいと思います。あとは大学に入ってから、知識を習得し関心を深めていけば良いのですから。

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