- 宮﨑 伸光 教授
- 法政大学
法学部 政治学科 学生センター長
みやざき・のぶみつ
1957年東京生まれ。’80年横浜市立大学文理学部文科社会課程卒。’82年同文理学部理科数学課程中退。’86年中央大学大学院法学研究科修士課程政治学専攻修了。’83年から東京都内私立高校・神奈川県立高校非常勤講師。’88年(財)地方自治総合研究所常任研究員。同研究所在職中に(財)連合総合生活開発研究所に2年間派遣。’02年より現職。’08年学生センター長。主な著作に『現代日本の地方自治』(共著・敬文堂)『議会改革とアカウンタビリティ』(編著・東京法令)がある。
日本消防行政のパイオニア的研究者

- 宮﨑研究室のある法政大「80年館」棟

- キャンパス前庭
今回ご紹介する一生モノの恩師プロフェッサーは、法政大学法学部政治学科の宮﨑伸光教授。まずは、所属する法政大学政治学科の特徴についてお話しいただこう。
「本学の政治系学科は、わたしの所属する政治学科と国際政治学科の2学科からなっていて、教員も講座も相互に連携しています。この2学科を合わせますと、政治学という学問カテゴリーにおいては、日本で一番幅広くカバーしているのではないかと思います。ですから、政治学のどんな分野に関心をもっている学生でも満足してもらえるという自負もあります」
さらに法政大学政治学科のWebサイトを見ると、その特徴に、①あらゆる領域の問題を臨機応変に解決・処理できる能力を養う②都市型社会の公共性を担う市民の育成③幅広く設置された専門科目を自由に選択できる――などが謳われている。
つづいて宮﨑先生の話は「政治学とは何か」に移る。
「そもそも政治学は哲学から派生したもので、哲学に次いで古い学問という位置付けがなされます。人間の存在について突き詰めて考えることが哲学だとすれば、人間はいろいろな欲望をもった存在であることを前提として、どのように理想の社会を築き上げていくかを考えること、これが政治学なのです。そういう意味で、自身をふくめて人間という存在を客観的に見ていく必要があり、成熟した「おとなの思考」や方法が求められる学問分野だともいえます」
生身の人間の醜さと崇高さの両面の分析をふくめて奥深い洞察力が求められる学問、それこそが政治学だとも。そう語る宮﨑先生の専門は「自治行政論」と「地域政治論」だ。
「自治体レベルの行政や政治について研究しています。わたしの場合は、とくに『基礎自治体』といわれる市町村について、①その公共政策課題②そこに暮らす人々の課題をどう解決するか③自治体内部の行政や政治の仕組みまでを対象にしています」
『行くか?』と聞かれたら『行きます』とこたえる

- 法政大生の知識の源である図書館
宮﨑先生の具体的な研究項目は、「自治行政制度」「消防行政」「自治体議会」「自治体政策」と広汎多岐にわたる。そのなかでも、①自治体において拘束力ある諸決定はどうなされているのか②消防行政のあり方について――の2点が先生独自の研究として特徴的だ。
前者は、宮﨑先生がそもそも政治学の研究をめざすことになったテーマで、後者の消防行政研究とともに、研究者の少ない分野だという。とくに消防行政については、長いあいだ先生が日本で唯一の研究者であった。
「今も昔も消防行政は自治体行政の分野に違いないのですが、行政学・政治学の視点からの研究者は長くいませんでした。消防組織というのは、365日24時間態勢で備えていなければなりません。現場の勤務態勢はどのように組まれ運用されているのか、そうした基礎的なことから調査研究を進めてきました」
長年のオリジナル調査の結果で判明したのは、旧態依然とした体制のままの自治体が大半という事実であった。宮﨑先生はこれを論文にまとめ学会で発表し、さらに自治体の講演や研修などで訴えていった。そして、これら先生の精力的な活動が消防職員の待遇改善のキッカケにもなった。
このことが機縁になり、全国の消防職員と宮﨑先生とは固いきずなで結ばれている。ゼミ合宿などで各地に行くと、いまでも地元の消防職員たちから歓待されることも珍しくないらしい。
「調査研究においては、消防署に詰めて消防隊員と行動をともして、ニッポンの消防の現実を身をもって体験しました。環境行政の研究で著名な某大学の教授から授かった――『行くか?』と聞かれたら『行きます』とこたえなさい――という教えを実践したものです」
以来、このことばが宮﨑先生の研究・指導における座右の銘にもなっている。
受け継がれていく現場重視のフィールドワーク精神

- 「55年館」からボアソナード・タワーを望む
法政大学政治学科のゼミ演習は2~3年次の学生が対象で、全員必修となる。
ゼミは年度ごとに年間テーマを設定して、それに沿った研究を進めていく。ちなみに’07年度が「地域産業とコミュニティー」で、’08年度は「地域の活性化とコミュニティー」をテーマに掲げた。
「わたしのゼミの特徴は、テキストを講読するだけの座学の研究ではないことでしょう。いろいろな自治体に出かけていって、その政策や施策の実際についてフィールドワークをします。’08年度は、夏合宿を香川県の高松市、冬合宿を北海道の夕張市でそれぞれ行ないました」
また宮﨑先生の方針として、ゼミ生たちの表現力向上にも力を入れている。口頭報告の練習を兼ねて「120秒スピーチ」を日ごろから課す。ワークショップを取り入れたり、多くのリポート提出もある。学生たちへの指導方針については次のように語る。
「わたしのゼミでは絶対に使ってはいけないNGワードがあります。それは、今の若者たちが頻繁に使う『ヤバい』という言葉です。元々これは極道筋の用語で、こんなことばを社会に出てからも使っているようでは見識を疑われます。学生のうちから使わないことに慣れるようにと禁止したのですが、この一言フレーズを禁止しただけで、報告の途中でことばに詰まり話が続かなくなったゼミ生もいます(笑)」
ただし、こうした厳しさだけではなく、遊ぶときには大いに楽しく遊ぼうというのが宮﨑ゼミの方針だとも。年に数回のバーベキューはたいへん盛り上がるらしい。
さて、この冬のゼミ合宿で訪れた夕張市は、大幅な財政赤字を抱えて財政再建団体に指定されたことでも知られている。ここには東京都から2人の職員が派遣されて、市職員とともに財政再建へと必死に取り組んでいる。なんと、そのひとりが宮﨑ゼミのOBだそうだ。
「行くか?」と聞かれたら「行きます」とこたえる――。宮﨑先生の熱き魂は見事なまでに脈々と継承されているようだ。
こんな生徒に来てほしい
現役高校生諸君が今までに学んできたこと、そのすべてが人間としての基礎的な教養を支えるものとなります。高校までの学習の如何によって、その人の人間としての幅が決まるといっても過言ではありません。わたし自身あらゆる試験が大嫌いでしたが、苦しい受験を乗り越えた先の大学生としての素晴らしき日々は今もときどき思い出します。皆さんにもぜひその素晴らしさを大いに味わってほしいですね。

