- 柏崎 尚也 教授
- 東京電機大学
理工学部 情報システムデザイン学系 1962年栃木県生まれ。’84年東京電機大学応用理化学科卒。’86年同大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。’88年東京電機大学理工学部助手。’96年同工学部第一部講師。2000年理工学部助教授。’07年より現職。現在、理工学部次長。工学博士。
柏崎先生が主宰する「感性工学研究室」のURLアドレスはコチラ → http://www.kansei.ia.dendai.ac.jp/
「感性工学」研究の世界的パイオニア

- 柏崎研究室がある鳩山キャンパス2号館

- 最新マックがずらり並ぶ実習室
埼玉県鳩山町にある東京電機大学鳩山キャンパスは、武蔵野の丘陵に広がる伸びやかな学び舎という印象がある。ここは理工学部と大学院専用のキャンパスで、理工学部では全9学系の学生たちが学んでいる。今回の一生モノプロフェッサーは、同学部情報システムデザイン学系で教鞭を執る柏崎尚也先生である。まず、同学系の特色から話してもらった。
「東京電機大学では07年に学部の再編成を実施しまして、そのときに、各学部に分散していた情報系の学科をすべて理工学部に集め、情報システムデザイン学系としました。つまりコンピューターからシステム制御、コンピュータ・サイエンス、コンテンツ、それに社会コミュニケーションまでをまとめて、それぞれのコースにしたものです」
「なかには情報など文系的な色合いの濃いコースもありますが、この学系に入った学生は全員コンピューター・プログラミングを必修で学んでもらいます。この学系で学ぶための基礎的な教養であるということで、この知識を身に付けてもらっています。これがひとつの特色になっていますね」
理工学部情報システムデザイン学系は5つのコースからなり、柏崎先生が所属するのは「アミューズメントデザインコース」になる。
「快適な人間生活を送るための情報を、コンピューター中心にマルチメディアを使用してつくり出していこう――これこそが本コースのコンセプトになります。具体的には、ゲームや映像、芸術的な作品、あるいは癒やし・服飾・化粧などについても研究されています。理工系の大学でこうしたことを研究し、教えているのは、おそらく日本では最初の試みだと思われます」
先進のパイオニアとしての誇りと自信が伝わってくるようだ。そんな柏崎先生ご自身の専門は「感性工学」。「あの人はいい感性をしている」「感性に訴えかけてくる作品だ」のように使われる「感性」について、これらを工学化しようという意欲的な研究分野ということになる。
「いわゆる職人の仕事というのは個人個人の力量に左右されてしまいます。それに対して工学というのは、理論的な裏付けによって方法論が確立されているものを指します。したがって、作業者が違っても均質な結果を得られるようにしたのが工学になります」
人の感情と感性に関わる全領域に及ぶ可能性

- 「ブルーマット合成」もできる設備

- ゼミ伊豆旅行でのスナップ写真
それでは、人間の感情である「感性」を工学化するとは一体どういうことなのか?
「たとえば売れ筋の車というのは、いわゆるカッコいい車です。排気量や装備よりもカッコよさでユーザーの感性に訴えかけるものが多い車ほど売れています。車に限らず商品開発や流通販売するときには、ユーザーの感性にどれだけ訴えかけられるのかというのが重要なファクターになります。さらには商品を購入したユーザーの感性までを追究して、それを商品化や産業の仕組みに生かそうというのが感性工学になります」
この工学を巧みに使いこなすことで、必ずヒットする商品の開発手法の実現も夢ではない――そう柏崎先生は力強く語る。また感性工学は、医療現場の治療行為をはじめ、人の感情と感性に関わるすべての分野に及ぶ可能性があるとも。そこで先生の目下の研究課題だが、感性の数値化という試みに取り組んでいるという。
「ある商品についての感性を、人間の五感や第六感などいろんな観点から数値化していきます。すると各商品のあいだに関わる感性の相関性が分かってきます。たとえば商品Aを好む人は、商品Bには好感をもつが、商品Cには関心を寄せない――というような傾向がわかってくるわけです」
こうした研究テーマは柏崎先生が世界の研究者に先駆けて始めたものだ。すでに調査方法は確立され、今後はより多くのデータを収集する段階だそうだ。そして先生の研究は、すでに次のテーマに進もうとしている。
「感性には2つの側面、つくり手側の感性と受け手の側の感性というのがあります。その双方を満足させるものとして、癒やし系や医療・介護系のロボット製作に、この工学を生かせないかと考え始めたところです」
必ず研究結果を導き出させる熱き指導とは

- 鳩山キャンパスの本館建物

- 鳩山キャンパス全景
東京電機大学理工学部の学生は3年次後期から各教員の研究室に配属になる。しかし、3年次のあいだは通常授業もあり、週1回のゼミ演習への出席が中心で、本格的な配属は4年次からだ。柏崎先生の研究室では毎年8~10人ほどの学生を受け入れている。
「ゼミ生は、入室希望の学生にわたし自身が面接をして決めています。その基準は、ずばり本人の意欲。それと、どんなことを研究していきたいか? これらに尽きますね。原則として、それまでの成績は関係ありません」
「4年次になりますと学生は卒業研究に向かいます。それぞれの研究テーマは、学生の希望を聞きながら私が決めて伝えるようにしています。卒研においては、与えられたテーマに最後まで取り組んで、きちんと結果を出し切ることが大切です」
課題に対する取り組みと、他者とのコミュニケーションが重要

- 中庭に置かれたオブジェが印象的
あらためて学生・研究生たちへの指導方針については――
「どこでも通用する問題解決能力を身に付けてほしいと思っています。物事について自ら深く考え抜いて、どうすれば解決できるのか? そのためには何が必要か? これらの課題を解決していく能力を重視します。それにリーダーシップ、あるいはメンバーシップです。その場面・場面において自分がいろんな立場から活躍できるような実力と、リテラシーを培ってほしいですね」
こんな生徒に来てほしい
自らを高めて将来必ず活躍するんだ、という意欲的な人に来てほしいです。そうした向上心のある意欲的な若い人たちといっしょに学び研究することは、指導する側にとっても愉しいことですからね。私のほうから分かり切ったことを一方的に教えるという関係でなく、お互いが啓発される関係でありたいと思っています。

