- 直井 勝彦 教授
- 東京農工大学
大学院 共生科学技術研究院 1958年香川県生まれ。88年早稲田大学大学院理工学研究科応用化学専攻博士課程修了。82年独BASF社・87年日本学術振興会特別研究員・88年米ミネソタ大学博士研究員をへて、90年東京農工大学工学部講師。95年同助教授、98年同大学院応用化学専攻助教授。01年同大学院教授。06年より現職。主な著作に『電池革新が拓く次世代電源』(監修)『電気化学キャパシタ』(訳書・監訳代表)『電気を操る・電気が操る高分子』(分担執筆・著作はいずれもエヌ・ティー・エス刊)などがある。
直井先生が主宰する研究室のURLアドレスはコチラ →
http://www.tuat.ac.jp/~naoi/index.html
次世代エネルギー貯蔵デバイスの世界的研究者

- 直井研究室のある1号館北棟

- 溶液調整設備など実験装置が立ち並ぶ
フロンティア・ケミストリー――。これこそが、東京農工大学工学部応用分子化学科が研究・教育目標として掲げ続けるキーワードだ。この基本コンセプトのもと、最先端化学の世界で活躍できる基礎力と、創造性をもった人材育成をめざす。同学科で教鞭を執ってきた直井勝彦教授(所属は大学院共生科学技術研究院)は以下のように語ってくれた。
「現代の人類や地球環境が直面している諸問題に対して、その本質的な解決をめざして、次の世代につなげる発展への道を残していかなければなりません。そのためにも物質・材料について原子・分子レベルで理解し、制御し、応用していく能力・リテラシーが求められます。この学科はそうした力をもった人材の育成を目指しているのです」
この応用分子化学科の大きな特徴については――。直井先生を含む教員の多くが、企業の研究所勤務を経験しており、基礎化学の知識や最先端の化学知識が実学面からも指導されていることだという。
「ですから、本学応用分子化学科は、未来を切りひらいていく『夢とロマン』に満ちているんですよ」
直井先生らが手掛ける研究の数々、ここには人類と地球環境の未来をひらく夢とロマンにあふれている。
「私たちが扱っている研究分野の大半は、環境エネルギーの分野です。それも地球環境に調和させたエネルギー問題の解決を目指すものばかりです。最近おもに取り組んでいるのは、『キャパシタ』という新しいエネルギー貯蔵デバイスになります。電気を電荷のままで蓄える方式を採用する新デバイス・キャパシタは、これまでの電池などと違って、短時間で蓄電と放電が行なえるのが特徴です」
すでに電気二重層型のキャパシタは実用化されてもいた。ただし、蓄えられる電気量(エネルギー密度)が小さいという決定的な弱点があり、その用途は限定的にならざるを得なかった。
地球の未来を救う「ナノハイブリット・キャパシタ」

- 東京農工大キャンパス正門

- ハナミズキとケヤキの並木が続く
直井先生が主導する研究グループは、そうした弱点の克服に挑んだのである。
「従来の電気二重層型は、正・負極ともに活性炭電極が用いられます。そこで私たちは、正極にそのまま活性炭電極を用い、負極にチタン酸リチウムのナノ結晶を、カーボンファイバーのなかに取り込んだものを用いることにしました。それによって高エネルギー密度と、高パワー密度を兼ね備えた新型の『ナノハイブリット・キャパシタ』の開発に成功したのです」
この「ナノハイブリット・キャパシタ」と従来の電池とを比較してみると、①充・放電で約10倍の高速化②容積で約3分の1への小型化③蓄電容量で3倍に増加④充・放電サイクル約10万回と長寿命化(従来電池は約500~1000回)⑤反応熱が小さく安全⑥作動温度範囲が広く、南極や砂漠(あるいは宇宙空間)での使用も可能(-40度C~+75度Cまでに対応)⑦主材料が活性炭(炭素)のため、無尽蔵に入手可能⑧同じく、炭素のため廃棄しても環境への負荷がほとんどない――など良い事ずくめな特長をいくつも列挙することができる。
これらが世界初の快挙であることは言うまでもない。この新型デバイスの開発手法にあたっては、直井研究室独特の方式の産学連携プロジェクトが構築され、この面でも直井先生のリーダーシップが注目された。
「わたしの研究室を中心として、東京農工大と同大学のベンチャー組織、それに民間企業の4者がリンクすることにより、このプロジェクトは遂行されました。新型キャパシタの研究開発や、そのための人材育成・社会的認知活動・実用商品化など、それぞれ具体的な課題を独自に(あるいは協働して)、推進するスタイルを採用してみたのです」
すでに実用化への計画も次々と動き出しているそうだが、いまや人類共通の課題ともなった地球温暖化対策にとっても、新型キャパシタの用途範囲は広大無辺といえよう。
モチベーションと協調性を相もった研究者を育てる

- 緑陰ゆたかな小金井キャンパス

- 落ち着いた雰囲気の附属図書館
東京農工大の工学部応用分子化学科の学部学生が、研究室配属になるのは4年次に進学してからで、それぞれの研究室に均等配分される。1研究室5~6人というのが毎年の例のようだ。
「研究室入りをした学生には、まず基礎的なトレーニングとして、エネルギーに関する情報収集の方法やコンピュータなどの基礎的スキル(技能)を身に付けてもらいます。次いで、我々の研究に必要な基礎トレーニングの実験を経験してもらうことになります。そのあとグループ分けをし、先輩である大学院生の研究グループに入って具体的に各研究に参加します。そこでの成果が各自の卒業研究や卒業論文へと結び付いていきます」
ここで直井先生が重視するのが、事前のポートフォリオの提出だ。これは各自の研究上の達成目標を記したもの。これによって、実験研究の雑事のなかに埋没してしまったり、方向性を見失ったりすることが少なくなるという。
あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。
「大事なのは各自のセルフモチベーション(自己動機づけ)ですね。それぞれしっかりした達成目標をもって、実験研究に取り組むことを学生には求めます。ただ私たちの研究室では、すべてがチーム研究となりますから、おのずから協調性も求められます。チームのメンバーらと協調しつつ、自らの達成目標にも意欲的に挑んでいく。そうした学生・院生を実際に育ててきたという自負も多少はありますよ(笑)」
こんな生徒に来てほしい
オープンキャンパス時には、毎年うちの研究室でもデモンストレーションで実験をして、現役高校生の皆さんにも参加してもらっています。これらの実験に参加したうちの幾人かは、必ず本学を受験してくれています。ですから、この分野に興味をもっている人には、ぜひオープンキャンパスに参加してほしいですね。「こんな面白そうな実験をしているんだ」と実感してもらえると思いますよ。

