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Good Professor

岡野内 正

岡野内 正 教授
法政大学
社会学部 社会政策学科

1958年広島県生まれ。’80年大阪外国語大学アラビア語学科卒。’86年同志社大学大学院経済研究科経済政策博士課程単位取得満期退学。’86年法政大学社会学部助手。’90年同助教授。’96年より現職。’97年英シェフィールド大学。’98年ポルトガル・ホルトカレンス大学。’05年ニュージーランド・オークランド大学(いずれも客員研究員)。主な著作に『狂気の核武装大国アメリカ』(編訳・集英社)『ナショナリズムとトランスナショナリズム』(法政大学出版局)『21世紀国際社会への招待』(前著ともに共著・有斐閣)などがある。
岡野内ゼミのURLアドレスはコチラ → http://prof.mt.tama.hosei.ac.jp/~otadashi/index.htm

全地球人を救うかもしれない「グローバルBI」の提唱者

岡野内研究室のある多摩キャンパス社会学部棟
岡野内研究室のある多摩キャンパス社会学部棟
法政大学多摩キャンパスの全景
法政大学多摩キャンパスの全景

今週ご登場ねがう一生モノのプロフェッサー・法政大学社会学部社会政策学科の岡野内正教授。取材の場に現われた先生は、なんとピンクのTシャツにジーンズ・わら草履という姿であった。

「ニッポンの夏はこのスタイルが一番涼しいですから」

形式に囚われない自在な人間性。岡野内先生は社会学者だが、これといった専門の研究テーマをもたないという。激動すさまじい21世紀初頭の現代社会にあって、先生にとって気にかかる地球上の問題、放っておけない社会事象――これらの全てが研究テーマになってきた。

「まぁ、狭い専門で学問を捉えたくないということでしょうか。人間はなぜ仲良くできないのだろうか、というのが私の研究の根底にあるような気がします。お互いが仲良く暮らしていけるための知恵を探りたい。せっかく人として生を享けたからには、だれもが人に生まれて良かったと思えるような世界にしたいですからね」

これまで岡野内先生が研究してきたテーマを列挙してみると、中東パレスチナ問題をはじめ、ユダヤ人のナチストラウマ問題、クルド人問題、ニュージーランドのマオリ族問題などで、無理やりカテゴリー分けすると「第三世界文化論」ということになる。

そんな先生がいま最も関心を寄せているのが、「ベーシック・インカム」(BI)という新たな政策思想である。

「すべての国民に、毎月生活に必要な最低限の所得を支給して保障する政策のことです。唐突な夢物語のように思われるかもしれませんが、真剣に検討している国や研究機関も多く、すでに財源確保の途を付けているところもあります。このBI政策が実施されますと、国民は失業しても生活に困らなくなります。学生も、いまのように就職活動に血まなこにならずに、自ら納得のいく仕事が見つかるまで勉学に集中できるようになります」

ユニークかつ画期的な政策だが、現在は各国ごとに実施が検討されている。これをもっとグローバルに汎地球的規模で実施するべき――岡野内先生はそう提唱してきた。

「わたしはこれを『地球人手当』と名付けまして、地球人であれば誰でも毎月この手当が支給され、最低限の生活が維持できるようにしたいと考えています。いま地球上では富が偏在し、飽食に満ちた地域があれば、飢えに苦しんでいる地域もあります。これを公平に分配することで、貧困問題や難民問題、ストリートチルドレン問題、ドメスティックバイオレンス問題など、相当数の問題や犯罪が一挙に解決します。ですからグローバル化することに意味があるのです」

この「グローバルBI」を提唱しているのは、岡野内先生のほかには、世界的にもオランダのNPO財団と若干の研究者だけだという。先生はさっそく研究者たちとコンタクトをとり、この取材の翌週にチリで開かれる国際学会で会うそうだ。壮大なこのプロジェクトの今後の動向について注目したい。

多摩キャンパス敷地を開墾する「有機農業実習」とは

多摩キャン法政大学生の知の拠点たる大学図書館
多摩キャン法政大学生の知の拠点たる大学図書館
岡野内ゼミ・ベトナム研修旅行でのひとこま
岡野内ゼミ・ベトナム研修旅行でのひとこま

法政大学社会学部の専門ゼミ演習は、2年次学生からが対象である。岡野内ゼミでは、履修希望者はすべて受け入れる方針だ。過去2~4年次のゼミ生が最高で200人を超える年度もあったそうだ(ゼミ授業は学年別に行なわれている)。

今年度も100人を超えるゼミ生が参集して履修している。2~3年次のゼミは「古典を読もう」がテーマで、2年次がフォイエルバッハ(ヘーゲル左派を代表するドイツ人哲学者)とマルクスで、3年次がマルクスやフロイト、ウェーバー(ドイツの経済・社会学者)の3人。そして、4年次ゼミ生は卒業論文作成に集中する。

こうしたアカデミックな文献講読などに加え、岡野内ゼミの真骨頂はサブゼミにある。その一番は「有機農業実習」だろう。これは法政大学多摩キャンパス内の敷地を先生とゼミ生で開墾して畑を作り、有機農業栽培を始めたものだ。この農業実習は、いまや岡野内ゼミ生以外にも開放され、法政大学生であれば誰でも参加できる。

岡野内ゼミの本領は「食らうべき学問」の場・サブゼミにあり

サブゼミ「ダンス・レッスン」の拠点EGG DOME
サブゼミ「ダンス・レッスン」の拠点EGG DOME
多摩キャンパスの象徴「法政Vブリッジ」
多摩キャンパスの象徴「法政Vブリッジ」

このほか岡野内ゼミのサブゼミは、プロの講師が指導する「ダンス・レッスン」(クラシックバレエからジャズダンス、ヒップホップ、太極拳まである)、通学用バスの無料化を訴える署名活動「フリーバスプロジェクト2009」、「足元から平和を」を合いことばに、自分たちが暮らし学ぶ地域コミュニティーや大学キャンパスを愉しい場に変えていこうという運動、またホームレス支援のボランティア活動参加など、驚くほどのバリエーションを誇る。

「本ゼミで文献講読や論文作成などアカデミックなことを学び、サブゼミでは外に出て身体を使い、農作業やダンス・フィールドワークに汗を流して体験する。岡野内ゼミの本領はこのサブゼミにあります。社会学部の学生を学内に閉じ込めておくのは可哀想ですからね」

岡野内先生には「食らうべき学問」という持論がある。それを最後に伺った。

「難しい本が読めたり、論文が書けたりするようになることも大切ですが、三度、三度の飯のように、おいしくって元気の素になるような楽しい勉強も必要です。どんなにひどい状況のなかにあっても、美しいものを見つけ出し、生きる悦びを創り出して、それを人々と分かち合っていけるような人生を送りたい。そうしたヒントを得るためにこそ私たちは学問を学んでいるのです」

こんな生徒に来てほしい

基本的にどんな学生さんであっても拒まないことにしています。まぁ私自身がかなりヘンな教師として自覚しておりますから、それを超えるヘンな人でも構いません(笑)。私なんかよりもっと面白いことを考えている人、あるいはもっと、素敵な人生を送るための何かを見つけたい人、そんな人が来てくれたら素晴らしいと思います。

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