- 網谷 龍介 教授
- 明治学院大学
国際学部 あみや・りょうすけ
1968年山口県生まれ。’93年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(政治学専攻)修了。’93年東京大学大学院法学政治学研究科助手。’96年神戸大学法学部助教授。2000年同大学院法学研究科助教授。’04年同教授。’06年明治学院大学国際学部助教授。’07年同准教授。’09年より現職。主な著作に『ヨーロッパのデモクラシー』(共編・ナカニシヤ出版)『国境を越える政策実験』(東京大学出版会)『規整と自律』(前著ともに分担執筆・法律文化社)などがある。
網谷先生のWebサイトのURLアドレスはコチラ → http://homepage1.nifty.com/amiya/
21世紀初頭のいま「民主主義」を相対的に比較してみよう

- 網谷研究室がある横浜キャンパス8号館

- 明治学院大横浜キャンパス
明治学院大学国際学部は、国際的な政治・経済・社会、それに個別の文化・芸術に関する理解のための、学際的な総合学部(単科学部)である。開設されたのは’86年で、この種の学部としては、わが国の大学ではフロンティア的な存在である。この国際学部の特徴等について、同学部の教壇に立つ網谷龍介先生は次のように語る。
「この学部の一番の特徴は、教員と学生の距離がとても近いことでしょうね。ここは2年次からゼミが始まりますので、少人数で教員とかかわる機会も多く、自然に距離感が縮まるのだと思います。最近の若者には内向きな人が多いとも言われるなかで、この学部に入ってくる学生さんは、社会や海外など外の問題に関心を寄せる人が多い。私としては非常に教えやすくて大いに助かっています(笑)」
さらに明治学院大学国際学部では、英語や中国語、朝鮮語をはじめ外国語教育に力を入れているのも特徴である。
「明治学院大学では米カリフォルニア大学と交換留学の協定を結んでいまして、一学期ごとに双方の大学から25人ずつ留学生の交換をしています。カリフォルニア大学からの留学生は国際学部が全員受け入れていますので、アメリカの学生といっしょに学んだり、触れ合ったりするのにも良い環境ではないかと思います」
このほか国際学部では、長期認定留学制度や、海外実習、国際インターンシップなど、海外体験の制度が充実している。
さて、網谷先生は、「比較政治学」と「ヨーロッパ(欧州)政治」が専門である。比較政治学は高校までは学ばない学問分野である。一体どんな学問分野なのか? このあたりから説明してもらおう。
「わたしたちが暮らしている日本は、基本的人権の尊重や三権分立・主権在民が憲法で保障されている民主主義(デモクラシー)の国です。これは高校まででも学習することですね。デモクラシーと一言でいっても国によって個性があって、どの国のかたちが真のデモクラシーの姿であるとまでは言い切れないところがあります。そうした、国による違いを調べるのが比較政治学です。つまり、デモクラシーにもいろんなかたちが存在することを知り、それを比較することで自分の立っているところを相対化してみる学問ということになります」
似ているようで違う日独を比較政治学でとらえ直すと

- 明治学院大学横浜キャンパスの建物群

- キリスト教系大学ならではのチャペル
そんな網谷先生が主に研究してきたのは、ドイツを中心にした欧州の国々の政治である。
「ドイツという国は、ヨーロッパのなかでも日本によく似ているといわれます。ともに第2次世界大戦の敗戦国で、戦後めざましい経済復興を遂げたところなども似ています。他方、政治の方法などはまったく違っていて、ドイツの主要政党は、市民団体や労働組合など下部組織までがっちり抱え込んで、強大な力をもっています。そんな両国の似ているところ・違うところについて研究しています」
その日独両国の最新の政治潮流における、似ている部分をお聞きした。
「ここ数年の日本政治情勢は、小泉純一郎首相による郵政解散総選挙で与党側が圧倒的議席を獲得した後も、衆参両院のねじれ現象によって法案がなかなか成立しないという問題を抱えていました。ドイツでも2院制を敷いていますが、やはり第二院で与野党のねじれ現象を起こしていて、日本と同じような問題を抱えています」
「また日本では『消えた年金』問題が未解決のままで、大きな問題となっていますが、同様にドイツでも年金制度が大きな問題になっています。こちらは、東西ドイツの統一による経済負担もあって、本来の制度上の弱点が前面に出てきたからですね」
似たような政治諸制度による問題を抱える日独両国だが、そこから双方の差異を明らかにして、互いに参考にすべきところや指針などを導き出そうというわけだ。なお最近の網谷先生の研究領域は、EU(欧州連合)におけるデモクラシー制度についての研究にシフトしつつあるともいう。
テーマは環境・多文化・社会福祉と毎年フレキシブル

- 明治学院建学の父・ヘボン博士の銅像
先にも述べられたように、国際学部のゼミ演習は2年次から始まる。網谷先生のご専門は比較政治学だが、ゼミではゼミ生たちが望まない限り、それを研究テーマに押し付けることは一切ないという。
「この国際学部で学んでいる学生さんには、将来、海外に出てNGO活動に携わりたいとか、国内での外国人問題の運動を手伝いたいとか、様々な希望をもっている人が多いのです。ですから彼らの関心が高いのは、環境問題や外国人問題などを含んだ多文化・異文化共生の諸問題、それに社会保障・社会福祉問題などになります。ですので、ゼミにおいては私自身の研究からちょっと離れて、もっとソフトなテーマを自由に設定するようにしています」
その年度ごとにゼミ生たちが関心のあるものを網谷先生が判断して、ゼミとしての研究テーマはフレキシブルに設定される。ある年度は環境問題になり、明くる年度は多文化・異文化共生問題、あるいは社会保障・社会福祉問題などとシフトしていく。
学生たちへの指導方針についてはこう語る。
「現実をよく見る目を養ってほしいということに尽きますね。たとえば卒業論文をつくるときでも、世の中の成り立ちは教科書どおりに単純では全くないということを感じてほしい。『論文なんて失敗したって構わない』とゼミ生たちにはよく言っています」
「論文作成において、論理を組み立てていくその過程にこそ発見すべきものがあるはずで、それを見つけることのほうが能率や効率性などよりもずっと重要なのです。そのためにも、研究テーマについて一歩引いたところから全体を見回す余裕のようなものが必要だ、と指導しています」
こんな生徒に来てほしい
私のほうから、こうでなくてはならないといった希望は特にありません。この学部に興味をもって来てくれる人には、視野を広くもって結論を急がないようにしてほしいですね。結論それ自体よりも、結論に至るまでのプロセスのほうが大切だと考えています。世の中にはいろんな可能性がありますから、それを信じて、若者らしく色々な可能性に懸けてみる姿勢でいてほしいですね。










