- 松元 明弘 教授
- 東洋大学
理工学部 機械工学科 まつもと・あきひろ
1958年鹿児島県生まれ。’83年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修士課程修了。’83年東京大学工学部助手。’88年東洋大学工学部講師。’90年同助教授。’04年同教授。’09年学部改編により現職。’94年仏ストラスブール大学客員研究員。日本規格協会標準化文献賞奨励賞(’95年)。経済産業大臣表彰(工業標準化功労賞 ’03年)。NPO自動化推進協会会長。NPOロボカップ日本委員会理事。主な著作に『ロボットメカニクス――構造と機械要素・機構』『おもしろメカワールド』(前著ともにオーム社)『中型ロボットの基礎技術』(共立出版)などがある(著作はいずれも共著)。
松元先生が主宰する「ロボット工学研究室」のURLアドレスはコチラ →
http://www.eng.toyo.ac.jp/~akihiro/robolab/
人間と共生する「ロボット工学」

- 松元研究室のある「1号館」建物

- 東洋大学川越キャンパスの西門
’09年4月、時代や社会からのニーズの変化を受ける形で、東洋大学工学部は新たに「理工学部」として生まれ変わった。
この新学部のカリキュラムの総まとめ役をしたのが、今回紹介する機械工学科教授の松元明弘先生だ。
まずは、生まれ変わった理工学部機械工学科の特徴からお話しいただこう。
「機械工学は熱エネルギーからマイクロメカトロニクスまでを扱う分野ですが、本学の学科は、『人間サイズ』のものからミクロの世界までの研究が得意といえます。人間サイズのものは、いま学生たちに一番人気のあるロボットに代表されますね」
「理工学部には『学科横断型教育プログラム』という制度があるのも特徴といえるでしょう。機械工学科の学生は学科内の主専攻のほかに、『ロボティクスコース』か『バイオ・ナノサイエンスコース』のどちらかを副専攻に選択できます」
とくに教育面では「スパイラル教育方式」を採用していることも、新学部の特徴だという。
「工学を本格的に学ぶためには基礎知識を固めるのが重要です。だからといって学生を机に縛りつけて、知識だけを詰め込む教育ばかりではモチベーションも上がりません」
「そこで基礎教育と応用教育を繰り返しながら進んでいく『スパイラル方式』を採用しています。基礎教育で学んだことを次々と応用実験で実感してもらう。このように興味をつなぐカリキュラムを用意しているのです」
この方式は学生たちにも好評で、その実行効果も大いにあがっているらしい。
「自律分散型ロボット」がロボカップで大活躍

- 松元研究室の学生たちとともに

- ヒューマノイド型ロボットと松元先生
さて、そんな松元先生のご専門は「ロボット工学」「メカトロニクス」で、その研究テーマは大きく分けて2つある。
第1が「自律分散型ロボットシステム」の研究開発だ。
「基本的なことでいえば、メカトロニクスシステムを駆使した車輪型であったり、歩行型のロボットを組み立てて動かしたりということです。それで単体のロボットを組み立てて動くようになれば、つぎは複数のロボットを連動させて作動させます」
松元先生の研究の特徴は、そのロボットが「自律分散型」ということである。
「その象徴的なものに『ロボカップ』という、ロボットによるサッカー大会があります。うちの研究室は国内大会の第1回から参加していて、’06年には世界大会で『テクニカルチャレンジ賞』第3位に入賞しています。この入賞で確信したことは、1チーム5~6体からなるロボットそれぞれが、故障なく最後まで動き切ることの重要性です」
「すべてのロボットに最高の機能を搭載してしまうと、最高のパフォーマンスを発揮できる時間は極めて短くなります。むしろ各ロボットの機能が最高のものではなくても、最後まで1体も故障しないでチームとして戦えたほうが勝利や成績につながるということですね」
車輪式の中型ロボットリーグへの参加から始めて、もう10年になる。
最近ではヒューマノイド(人間型)リーグにも参加し始めている。
そのため松元研究室では研究開発を鋭意進める日々だという。
存在主張せず人間支援するロボットを実用実験

- 車輪型中型ロボット(左)と松元先生

- キャンパス内には武蔵野の林が残る
これらロボカップ用のロボットは、その存在を主張するロボットの代表のようなものだと言えよう。
一方で、松元先生たちは「存在を主張しないロボット」の研究開発にも力を入れている。
それが第2の研究テーマ「ロボット工学の人間支援への応用」へとつながっていく。
「こちらの研究における主役はあくまで人間です。支援ロボットたるもの、人間の邪魔をしてはいけないという考え方です。今はややもすると人間のほうが機械の仕様に合わせる傾向にありますが、これでは全くいけません。ロボットは脇役に徹して、さりげなく主役である人間を手伝う。人間と機械の共生。存在を主張しないロボットの開発。これらこそが我々の理想とするところなのです」
この存在を主張しない独創的な支援ロボットは、すでに実用実験にも入りつつある。
松元先生も中心メンバーとして参加する「東洋大学 共生ロボット研究センター」がそれだ。
このほど「モデルルーム」までが完成して、さまざまな実験が日々なされている。
ここでは室内照明の点滅はもちろんのこと、ベッドの起居動作からお茶の運搬や簡単な会話も理解して実行できる試作ロボットが、すでに配置されている。
こうして、さりげない人間支援のための理想のロボット開発が進められていく。
「この部屋で生活する人間は、ふだん通りの生活をそのままキープするというのがコンセプトになります。ロボットがいるからといって妙に意識したり気を遣ったりすることのないようにする。まさに存在を主張しないロボットですね」
体育会系の「ノリ」で鍛えられるロボット研究室

- 川越キャンパス点描
東洋大学機械工学科学部生たちの研究室への正式配属は4年次からとなる。
だが希望者には3年次後期から研究室への出入りが許されている。
松元研究室への配属は例年10人前後となる。
「わたしの研究室ではイベントを日々やっては、そのたびに打ち上げコンパをすることにしています。そのイベントやコンパの幹事を学生たちが交代でやることで、段取りや交渉などの社会性が身につけばという思いがあります。また研究室の全員がひとつになって何か活動することの重要性も意識しているつもりです」
「卒業研究のテーマについては、あまり早い時期に決めてしまうと、それしかやらなくなるのが困ったことなのですね(笑)。若い人たちにはなるべく広い視野でロボット工学研究に日々臨んでほしいと、いつも感じています。ですので、4年次の夏くらいまで試行錯誤しながら決めればよしともしています」
あらためて学生たちへの指導方針については以下のようにも語る。
「どんなに勉強ができても、情熱と体力がないと研究は続けられません。つまり心・技・体を鍛え上げるということです。こんなことをいつも言っているせいか、学生たちからは『先生は体育会系ですね』なんて言われてしまいます。まぁ、実際にそのノリなんですけどね(笑)」
こんな生徒に来てほしい
使いやすいロボットを開発するためには「技術を知ること」と「人間をよく知ること」が大切です。
それらの技術の基礎になってくるのは高校で学ぶ数学と物理です。
それは三角関数や微分方程式であり、振り子やバネの原理だったりもします。
さらに理系で学ぶ者だとしても、国語や英語の学習も侮れません。
いまや社会的コミュニケーション能力は理系であっても不可欠の要素だからです。









