慶應義塾大学指定校推薦の課題レポート
指定校推薦というと、評定平均をクリアして高校内の他のライバルを退ければ合格が保証される、と安易に思い込みがちだ。たしかに結果としてそうなる場合も多々ある。しかし多くの大学には「指定校で取りたい学生像」があって、単に成績が取れているからという者を望んでいないのも事実だ。慶應義塾大学にはそうした傾向が鮮明にある。08年入学予定者の場合を例に解説する。
例年9月下旬になると「指定校が決まった」という報告がある。しかしそれは「高校側に割り振られた指定席に推薦された」を指すだけで、そこに座った生徒の入学を大学が認めたのとイコールではない。その後の行いや課題をおろそかにすると「まさか」の失敗を喫する。むろんその可能性は指定校では小さい。でもあり得る。したがって慶應の指定校枠を高校側が割り振ってくれた後に、生徒が本番さながらにレポートに取り組むという事実はあまり知られていないのだ。
例えば慶應義塾大学法学部の「高等学校校長推薦による入学者選抜制度」の「趣旨」には
高校生活で示された何らかの分野における「優れた実績」を重要な評価の対象とします。一定水準以上の学力(筆者注:評定平均4.3以上)に加えて、こうした実績をもつ生徒の推薦を本学部の選定する高等学校の校長にお願いするのが、この制度の趣旨です。
とあり、「優れた実績」としては
- ①運動・芸術・技芸等の分野において優れた成績や成果を残した者
- ②学外活動や課外活動において高いリーダーシップを発揮した者
- ③ボランティア活動や地域の社会的活動などを熱心に行った者
- ④国際交流や途上国援助などの渉外的な活動に積極的に取り組んだ者
- ⑤入試科目に限られない全般的な学業分野できわめて優秀な成績を収めた者
が例示されていた。さらに「提出書類を通じて、それぞれの生徒の慶應義塾に学ぼうとする意欲、ならびに高校生活そのものを充実させるためにどれほど努力してきたかを確認したい」と志望理由や意欲もはかっている。
その理由として「一般入試の結果には現れない多様な能力と豊かな個性を持つ者の入学を図りたかったからであり、そうした個性と能力の基礎づくりは、高等学校時代にこそなされうるとの考えから、そのような機会を積極的に作り出したかったから」としている。要するに「一般入試の結果」ではわからない能力を知りたいとの動機は他のAO・推薦と変わらない。頭でっかちのガリ勉さんを指定校推薦で集めたいという意図ではなさそうなのだ。
入試を秋に行うのも「高等学校校長推薦による入学者選抜制度」は次のような意義を唱えていた。
「入学者の内定は本年11月に行います。これは、入学内定の生徒を受験準備から解放し、内定に際して主要な評価の対象となった努力と自主的な勉学を、それまでにもまして鋭意充実させてほしいと考えているからです」
要するにサッサと指定校で進学先が決まって、後は入学まで遊んでいられるなどという発想は、もしあったとしたら不心得もいいところであり正反対。大学側は入学する価値がある「努力」と「勉学」を「充実」させるための措置として指定校の内定を早めているのを忘れてはいけない。
慶應義塾大学法学部の場合は提出書類の一つとして「小論文」も課す。08年入学予定者の内容を1つ紹介すると
「最近、教育再生会議など政府レベルで教育改革が大きな話題となっています。政府レベルの議論を参考にしながら、あなたの経験を交えて、どのような教育改革が望ましいか論じてください」
で本格的な内容を求めている。
同じような傾向は商学部にもある。商学部は慶應のなかでは珍しくAO型の入試を行わない。10学部のうち経済学部と医学部、薬学部の3学部は推薦入試がなく、文学部は自主応募推薦というAO型に近い試験がある。残りの法、理工、総合政策、環境情報、看護医療はAO入試が存在する。つまり「推薦入試は指定校のみ」は商学部だけである。
10年度入学予定者にも課題リポートがすでに発表された。内容も「商学部」という言葉から狭くイメージされるテーマではなく、「どうしたらいいの?」と戸惑うくらいユニークな設定である。もちろん志望理由書に位置づけられる書類も別途に存在し、それも単に「志望理由書を作れ」といった大ざっぱな仕組みではなく、内定者の過去・現在・未来のしてきたこと、したいこと、めざす目標などを区分けして問うている。その理由は法学部で触れたのと同じく「学校の成績が良かったから行きます」といったスタンスではダメだよとのメッセージであろう。









