玉川大学AO型入学審査
玉川大学のAO入試は文学部、経営学部、教育学部、芸術学部、リベラルアーツ学部、農学部、工学部の7学部で行われている。うち前5学部が「記述型」を、農・工が「体験型」を採っている。
一般的に玉川は教育学部と農学部が知られている。どちらも伝統が深くて教育学部が輩出した教員も多い。農学部は東京都では珍しい。他にも芸術・パフォーマンスなどの分野に広く学域を広げている。
同大のAOは、要項に「まったく新しい入学審査システム」とうたうように実にユニークだ。「記述型」は11ページ、「体験型」は8ページの「コミュニケーションシート」を作成する。通常の推薦入試は、この後に小論文なり面接なりがある。だが玉川はそれもない。面接に関しては高校教員の「志願者評価書」を重視する、とある。理由は「短時間の面接で判断をせず、長い時間あなたを見守ってきた」(要項より)者だから、ということだ。 「コミュニケーションシート」を書くには創立者の小原國芳著『全人教育論』は必読である。
では「記述型」を例に、コミュニケーションシートの対策を考えていこう。
●項目1 大学進学の意味
問:高校を卒業すると、その先の進路は様々です。すぐに社会に出て働く人もいれば、専門的な技能を身につけるための学校に進学する人もいます。その中で、なぜ、あなたは今あげたような進路ではなく、大学に進学することを選びましたか。あなたにとっての大学進学の意味を聞かせてください
多くの受験生、とくにその大半が進学する高校で学ぶ者は、しばしば「大学に進学することを選びましたか」という質問に対して、「みんながそうだから」としか答えられない。そこを許さないという姿勢は、当然とはいえ忘れられがちな視点である。「大学進学の意味」は「玉川大学を選んだ理由」ではない。厳密にいえば前者が後者を含む。そこを勘違いしないように。
●項目2 玉川大学の教育について
問いは3つある。
問1:玉川大学には12の教育信条があります。その一番目にあるのが『全人教育』です。『全人教育』とは、学問・道徳・芸術・宗教・健康・生活の6方面の人間文化を豊かに形成することです。それを実現するために、玉川大学では独自性の高いカリキュラムを編成しています。あなたは、玉川大学の教育信条および活動をどのように評価し、玉川大学を第一志望校にしたのでしょうか。あなたの考えを述べてください
前述の通り、ここでは『全人教育論』が必読書であろう。各学部への志望は次の項目にあるので、ここでは「学部」ではなく「玉川大学」を志望した理由を聞く。しかも「教育信条」を全面に押し出している。
これまで他の大学でも述べてきた通り「建学の精神」や「教育理念」は特に私大の場合はアイデンティティーである。本来の大学選びは、そこへの共感なくしてあり得ない。偏差値というまやかしの指標によって、まるで考え方の違う大学を「同レベル」とする悪弊がのさばって久しいなかで、原点を聞いている。当然ながら原点は何かを、自分なりに探らなければならない。
「大学を知る」ために玉川大学はさまざまな用意をしている。キャンパス見学会はもちろんのこと、AO型入学審査ガイダンスや体験授業、個別相談などなど。平日は自由に見学できる。こうしたアクセスを活用するのがもっとも効果的だろう
問2:玉川大学の各学部が求める人物像と問いが巻末にあります。志望する学部学科の問いに関するあなたの考えを述べてください
ここで学部学科の適性や目指す方向性などを詳述する。「巻末にあ」る「各学部が求める人物像と問い」もかなり踏み込んでいて、特に「問い」は思わず「うーん」と考え込んでしまう人も多かろう。2ページにわたるので、例年志願者が最も時間をかける個所である。
問3:玉川大学の教育を受けた方が身近にいますか
これなどは簡単に答えられよう。
●項目3 社会とのかかわり
問いは3つに分かれる。いわゆる「将来像」に関わるところだ。
問1:多くの人は学校を出て一定の年齢になると社会で働きます。人はなぜ働くのでしょうか。食べるため、という人もいるでしょう。夢の実現、生き甲斐のために働くという人もいるでしょう。しかし、自分のやりたい仕事がなくて、なおかつ金銭的に豊かであれば人は働かなくていいのでしょうか。働くことの意味はどこにあるのでしょう。あなたの意見を述べてください
まさに就職活動の際の「エントリーシート」さながらである。「なぜ働くの」か、とか「働くことの意味はどこにある」か、という質問を簡単に答えられる人はまずいない。下手をすると社会人でさえ難しい。ここまで将来像を根底から問う質問は珍しい。項目2-2に続いて、悩むポイントになりそうだ。
問2:あなたは、社会に出て行く前に大学での4年間、どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか。あなたの考えを述べてください
ここは他の大学でもよく聞かれる「大学での学び」に近いので、3-1よりは想像しやすい。玉川大学のカリキュラムなどを参考にイメージしていこう。
問3:あなたにとって豊かな社会とはどのようなものだと思いますか。その豊かな社会を作るためにあなたはどのようにかかわっていこうと思いますか。具体例をあげながら、あなたの考えを述べてください
これは「具体例」で悩み抜く志望者が結構いる。そうした人は好例を探すのに汲々として、肝心の「豊かな社会とはどのようなもの」かを定義していない場合が目立つ。
●項目4 高校生活について
1つ目の「現在までに取得した資格・検定・特殊技能」や「これまでにどのような努力をしてきましたか」は、一種の活動記録報告なので、正確に事実を述べれば大変というところではない。むしろ2つ目の「現代は情報化社会といわれています。私たちの周りにはいろいろな情報が溢れていて、しかもそれらは日々変化しています。あなたは、情報をどのように選択し、理解し、将来の計画に役立てていますか」が難しい。
●項目5 自由記述
1つ目の「書き足りなかったことやアピールしたいことがあれば自由に述べてください」が「別にない」という人が時にいるので驚く。そんなはずはない。じっくり思い出せば1つや2つはある。
2つ目の「あなたは大学入学に向けて、どのような準備をしたいと思いますか。あなたの考えを自由に書いてください」も「想像がつかない」と訴える方がたまにいる。「入試に向けて」ではなく「入学に向けて」が遠く感じるようだ。しかし本来の大学進学は「入学に向けて」が先にあって手段として入学試験がある。そこを考えておくのは玉川大学進学希望者に限らず有益なはずだ。









