慶應義塾大学法学部FIT入試の変更点
これまで存在した制度をA方式とし、新たにB方式を設ける。法律学科・政治学科とも最大80人と大きく、定員が増えたものの、過去の制度を単に拡大したわけではないので注意したい。
B方式は、マスコミに対して大学側が語った内容などを総合すると、センター試験利用入試を廃止した代わりに設ける。その理由として、センター利用は本来、東京圏のみならず地方の優秀な学生にも参加してもらいたいとの発想で推進してきたが、近年は思惑を外れて東京圏に再び集中するようになったため、当初の意義を失ったとか。
確かに東京圏以外の高校生がセンター試験で優秀な成績を修めた場合に、その利用法を「慶應へ」とはなかなか考えないであろう。ならば地元の国公立大学へとかじを切り直してもおかしくない。例えば法律学科から法科大学院へ進んで法曹になろうとの志望があったとして、その実績をみると東大、中央、慶應義塾、早稲田という東京勢は京都を含んだ5強を形成している。半面で大阪、北海道、東北、名古屋、神戸、九州などの旧帝大勢を中心とした非東京圏の大学も、十分な結果を残してきた。学部=法科大学院ではないし、法律学科=法曹志望でないのは承知している。その上でなお、何らかの指標を探すとなると、こうした結果を地方出身者は重くとらえておかしくない。
大学選びをするに際して、地方と東京圏の温度差は大きい。例えば山形県出身としよう。地元の山形大は考える。その上で更にチャレンジしたいと望めば、東北勢の視野にはまず間違いなく東北大が入ってこよう。地理的に近い信越地方の新潟大も目に止まる。では東京はというと、東大はともかく他の私大と東北を秤にかけるかというと案外少ない。
慶應義塾大学自体が長い間、経済学部と商学部の名門で、経済界に人材を輩出してきたのも大きい。そこの出身者は東京一極集中が進む企業の本社がある東京へと出世していく。慶應出身者には「慶應命」の愛校精神あふれる方が少なくない。その方々が多くいるのが東京圏とすると、子どもを慶應へ入れたいとの思いの集積地もまた東京圏となる。
保護者の世代に、現在の法学部と自身が受験生だった時のイメージにギャップがあるというのもあろう。前述の通り「慶應といえば経済」との刷り込みが強く、「法学部?」とクビをかしげる向きも多くいる。今の慶應・法は法科大学院(法律)では前記のような実績を残しているし、政治学科の教員陣も「日本一」ではないかと驚くほど豪華な人材がそろっている。日吉キャンパスはもはや、未来型のオフィス街のごとし。ただそれを知らない保護者世代も数多いと推察される。
そこに近年の不況である。地方出身者で優秀な者は、せっかく近くに身近な地元国公立大があり、背を伸ばせば地域ごとに旧帝大がある。それがない北陸にも新潟大学、金沢大学が、中国・四国地方にも広島大学がある。4年間の生活費や学費などを考え合わせると「それでも法学部は慶應」となかなか盛り上がってこないであろう。
新しいB方式はそこに踏み込んだ。①九州・沖縄、②中国・四国、③近畿、④東海・北陸、⑤関東・甲信越、⑥東北・北海道と6ブロックにわけ、それぞれ法律学科10人、政治学科10人を上限とした定員を設けた。出願条件としてA方式にはない評定平均のハードルがある。全体で4.0 以上かつ指定した科目(外国語、数学、国語、地理歴史、公民の予定)も4.0だ。地方の優秀な学生に来てもらいたいという意図(全体評定4.0)と、センター利用の流れも失いたくないとの意図(科目指定)の両方が見て取れる。
試験はA・Bともに書類選考がある。ただこれまでのFIT入試で必要だった、合わせて4000字前後の細やかな志望理由書などがそのまま引き継がれるか、現時点で未定である。これは在来方式(A方式)にも当てはまるため、詳細が発表される6月~7月当初あたりまでA方式の志望者もヤキモキすることになろう。
1次通過者が会場で受ける2次試験も、在来方式(A方式)からプレゼンや個別面接が消えた。逆に新規方式(B方式)で面接が入った。他に「総合考査」があると発表しているも、詳細がこれまた現時点で不明である。
具体的な発表があって後に改めて本稿で推量するつもりである。









