神戸大学経営学部の新しく始まる推薦入試
2012年入学者から開始する。
「神戸大学」は東京圏で生まれ育った者は意外と知らない。しかし「知らない」で済ませるのはとんでもない! というほどの名門である。したがって関西圏在住の方にはいわずもがなの講釈と知りつつ、略述したい。
神戸大学は旧制高等商業学校(高商)をルーツにもつ。旧「帝国大学」(帝大)が「国家ノ須要ニ応スル学術技芸ヲ教授シ及其蘊奥ヲ攷究スルヲ以テ目的トス」(帝国大学令1条)と「国家ノ須要」を担う人材育成を目指した。戦前の「国家」とは、主として官僚(エリート公務員)群が支える形となっており、最初の帝大である現在の東京大学など今なお色濃くその要素を残している。
それに対して高商は、主として産業界を担う人材を養成するのを目的とした官立(国公立)の学校である。第一号の東京高等商業学校は現在の一橋大学の前身、そして2番目に設立された神戸高等商業学校が神戸大学の前身となる。経営学部は日本で初めて神戸大学が設けた。
したがって帝大と高商の関係は、首都圏だと東大と一橋で関西だと京大と神戸となる。出自から高商は経済・商学系に強く、事実そうなのだが、経済学部と経営学部はもちろん文、国際文化、発達科学部、法、理、医、工、農、海事科学部の11学部を擁する総合大学にまで発展した。この点は商、経済といった出自をうかがわせる学部以外に、法学部と社会学部までしかない一橋大学と違う。
つまり神戸と一橋の関係は、歴史を比較すると東大、京大との関係において似通っているものの、現在の規模は相当に異なる。東京圏は旧帝大の東大がドカンとあって、文系は一橋、理系は前回まで述べた東工大、医学部は東京医科歯科、農学は東京農工、芸術は東京芸術などなど、他の国立が各々の得意分野を中心とした専門性の強い大学群を築くのに対して、関西圏は旧帝大がまず京都と大阪と2つあり、さらに神戸が加わって文学部から医学部までそろっている国立総合大学が近隣に3つもある。他に「文学部から医学部まで」というならば、公立の大阪市立大学も存在する。この辺の感覚が東京圏で生まれ育つとわからない。
話を神戸大学に戻そう。そのルーツ学部といえる経済は、以前から推薦入試を行ってきた。定員は60人でセンター試験(セ試)あり型である。学校長(1高校で2人まで)の推薦が必要な公募制推薦で、評定平均は4.0以上必要だ。校長の推薦書以外に自己推薦書を提出し、セ試の成績と合わせて合格が決まる。2013年入学者からはこの推薦の定員が10人増える。前期試験も40人増。代わりに後期を廃止する。セ試を課すという点で後期と推薦入試は似通っており、「前期・後期」から「前前期・前期」へと変容しようと意図しているのが明確だ。その理由については前回掲載した東工大の同期とほぼ同じと察せられる。
それに先んじて、2012年入学者から後期試験を廃止して代わりに丸ごと推薦入試へ置き換えるのが「日本初の経営学部」である。仕組みは経済学部とよく似ている。評定平均4.0以上で学校長が推薦(1校1人)し、セ試あり。ただし現在発表している限りでは、自己推薦書や志望理由書のように志望者が自書する書類はなさそうだ。校長の推薦内容と高校の成績とセ試を組み合わせて合否を決定する。
その趣旨として同大WEBサイトでは、「学力試験では判断できない意志と意欲については出身の高等学校及び中等教育学校の先生方に認定してもら」うとする。かなり指定校推薦に近い形だ。目標としてアンダーラインを引いてまで強調しているのが「神戸大学経営学部で経営学を学ぼうとする強い意志と意欲」だ。「ゼッタイ神戸大学」との学生が欲しいという意図がありありと感じられる。
前述したように、関西の国公立は京都、大阪、神戸、大阪市立と総合大学が4つもある。それだけに偏差値的価値観も容易に持ち込まれやすい。おおよそ「上下」は京都→大阪→神戸→大阪市立となっている。東京の場合は例えば東工大は東大の理1・2との比較で済むし、一橋は文1・2となる。それに対して関西の「京都→大阪→神戸→大阪市立」は、各々が総合大学ゆえに万般にわたって比較対象になってしまう。偏差値的価値観の弊害は東京圏よりむしろ大きいといえよう。
神戸大学の場合はとくに、原点学部である経済と経営が我慢なるまい。「京都も大阪も及ばないから仕方なく後期試験は神戸にするか」という学生がウジャウジャ後期試験に集まってくるのは耐えられないはずだ。「うちは高商を出発点とする名門なのだ」と叫びたいであろう。こうした感覚自体は、前回も書いた通り健全である。偏差値で選ぶ方が不健康なのだから。
東工大と違うのは、経済・経営とも公募制推薦で、「推薦入試」で合格したら他の国公立は(むろん私立も)受けられない。よって文字通り「神戸大学経営学部で経営学を学ぼうとする強い意志と意欲」がなければ選択できない試験である。もっとも不合格であればセ試自体は受けているので、前後期ともども受験可能となる。









