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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

教員が一斉退職 大学存亡の危機!?

以前、大学職員として働いていたことがあるマイスターです。

ある年、大学の教員と職員、さらにその家族を対象とした懇親旅行の企画運営を担当したことがありました。毎年、職場の方々が交代で担当している役割で、たまたまその年、マイスターに順番が来たのです。
旅行代理店を通すとはいえ、100人以上の方々が参加する旅行ですから、それなりに気を遣うところも多いこの役割。
前任者から色々な注意事項を引き継いたのですが、中でも一番印象的だったのは、

「飛行機、バス、その他の交通手段は、すべて必ず二便以上に分けること」

というものでした。

理由、おわかりでしょうか?

「それぞれの学部学科から、教授や助教授、講師が、大勢参加する旅行である。
 もし何か深刻な事故があった場合、大学の機能が止まりかねない。
 最悪でもダメージが半分に収まるように、二便以上に分けること」

……というのが、マイスターが聞いた「理由」。
生々しい言い方になってしまいますが、つまるところこれ、「全滅を避けるための措置」なのです。
ひえぇと思いつつ、ああでも大学というのは、やっぱり「人間」で構成されているんだなぁと感じたのを覚えています。


さて、今日は、↓こんな報道をご紹介します。


【今日の大学関連ニュース】
■「教員10人一斉退職 愛媛県医療技術大」(MSN産経ニュース)

愛媛県立医療技術大(愛媛県砥部町、池谷東彦学長)で教授4人、准教授2人ら教員計10人が昨年8~12月に相次ぎ退職願を出し教授会が承認、3月で退職することが10日、わかった。教員は現在計57人。大学は教員の公募をはじめたが、少なくとも教授2人を確保しないと大学設置基準を満たさなくなるという。

大学によると、理由はいずれも「一身上の都合」。

(上記記事より)

偶然なのか意図的なのかはわかりませんが、愛媛県立医療技術大学で一気に教員の1/6以上が辞職するという事態が発生しました。

そのためでしょう。
同大は昨年12月19日付で、教員公募のお知らせをwebサイトに掲載しています。独立行政法人・科学技術振興機構が運営する研究者向けの人材データベースにも、募集の案内が掲載されているようです。

■「教員公募」(愛媛県立医療技術大学)
■研究者人材データベース JREC-INによる検索結果

MSN産経ニュースの記事でも取り上げられていますが、これ、大学にとっては本当に、「大学存亡の危機」です。

大学には、「大学設置基準」によって定められた条件があります。
規定の教員数を確保できなければ、この設置基準に違反することになります。
違反すると、どうなるでしょうか。

【学校教育法】

第15条 文部科学大臣は、公立又は私立の大学及び高等専門学校が、設備、授業その他の事項について、法令の規定に違反していると認めるときは、当該学校に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

2 文部科学大臣は、前項の規定による勧告によつてもなお当該勧告に係る事項(次項において「勧告事項」という。)が改善されない場合には、当該学校に対し、その変更を命ずることができる。

3 文部科学大臣は、前項の規定による命令によつてもなお勧告事項が改善されない場合には、当該学校に対し、当該勧告事項に係る組織の廃止を命ずることができる。

4 文部科学大臣は、第1項の規定による勧告又は第2項若しくは前項の規定による命令を行うために必要があると認めるときは、当該学校に対し、報告又は資料の提出を求めることができる。

段階的な手順を踏みはしますが、問題が解決しなければ最終的には組織の廃止、つまり「廃校」になるのです。
ちなみに現在までにこれらの規定が適用されたのは、ちょうど一年前に起きた、株式会社立・LEC東京リーガルマインド大学の「勧告」のケースだけです。


そんなわけで愛媛県立医療技術大学は、何が何でも不足している教員を確保しなければなりません。

しかし時間がない中で無理に人を集めようとすれば、「質」の低下を招きます。
仮にそうでなかったとしても、そういう印象を受ける人は、いるでしょう。

本格的な受験シーズンを前に、大学総務課は「学生に説明はしていない。公募に対し問い合わせも多く、教育水準は維持できる」としている。

大学によると、理由はいずれも「一身上の都合」。総務課は「引き抜きや、故意にまとまってやめるわけではない。ほかの学校で勉強したいなどの理由でやめるのは他大学でもよくあること」としている。

「教員10人が一斉退職、愛媛県立医療技術大」(nikkansports.com)記事より)

愛媛県立医療技術大学はまだ平成16年に開学したばかり。今年の3月に、ようやく1期生が卒業するという、まだまだ若い大学です。
たとえ理由が「一身上の都合」であっても、完成年度の終わりと同時に設置基準を満たせなくなり、あわてて募集をかけているというこの事実自体、あまり体裁のいいものではないでしょう。

また、確かにどの大学でも教員が辞めることはあるでしょうが、教員数57名のうちに10名という割合は相当、特殊だと思います。


小規模大学には、小規模ならではの様々な強みがあります。
しかし今回は小さいがゆえ、この10人という人数が、大学の評判に影響を与えかねない事態につながりました。

毎年、比較的規模の小さいな単科大学がいくつか開学していますが、小さい大学ほどリスク回避の仕組みを入念にやっておく必要があるのかな、と思います。


以上、マイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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