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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

ロシアの国立大学の日本分校が、函館の市立大学に?

マイスターです。

昨日は、「海外大学の日本校」についてご紹介しました。

■「外国大学 日本校」をご存じですか?

例えば「アメリカの大学の日本校」であるなら、それはアメリカの学校制度に則り、アメリカ式の教育で、アメリカの学位を出す、れっきとしたアメリカの大学。
ただ「日本のキャンパスで、本国と同じ授業をしているだけ」なんだとご説明しました。

文科省から「外国大学の日本校」として正式に指定を受けると、日本の大学への単位互換および編入、大学院への進学なども認められ、学生は、外国の大学だとあまり意識することなく学べます。
しかしその一方で、税制面では未だに学校として見なされていないため、こうした学校は非営利事業をしておきながら、実際には「企業」として法人税や消費税を支払っている……。
昨日の記事では、そんな現状をご紹介しました。


さて、そんなご説明をさせていただいた上で、今日はこんな話題をご紹介します。



【今日の大学関連ニュース】
■「ロ極東大分校を市立大に 函館市が検討始める」(中日新聞)

北海道函館市は3日までに、ロシアの大学分校として設立された日本唯一の学校「ロシア極東国立総合大学函館校」(専修学校ロシア極東大函館校)を、市立大へ移行させる方向で検討に入った。学生の定員割れが続く中、国内的にも大学と位置付けることで学生増を図り、日ロ交流の拠点として維持したい考えだ。

函館市は4月にも有識者の懇談会を設置、約1年で結論を得る方針だ。文部科学省によると外国大学日本校の公立大移行は実現すれば初めて。

同校は、大学本校のあるウラジオストク市と姉妹都市提携を結ぶ函館市が誘致し、1994年に開校。4年制のロシア地域学科と2年制のロシア語科があり、ロシア人教授の講義が中心。市民向けロシア語講座や企業・官庁向けの語学研修などを通じて日ロの民間交流にも貢献してきた。

(上記記事より)

「ロシア極東国立総合大学 函館校」は、その名前が示す通り、ロシアの大学の日本校です。

■ロシア極東国立総合大学函館校

「専修学校ロシア極東大函館校」という専修学校、つまり日本の専門学校と同じ扱いで運営されている点が昨日ご紹介したテンプル大学等とは異なりますが、これもれっきとした外国大学の日本校なんです。
(ややっこしいですか? はい、マイスターもそう思います)

ちなみに日本に分校を持っている多くの外国大学の例に漏れず、母体の「ロシア極東国立総合大学」は、ロシア屈指の名門大学なのだそうです。

ウラジオストク市にある極東国立総合大学は帝政時代に創設され、24の付属大学と28の分校を有し、47の学部からなるロシア極東地域最大の由緒ある総合大学です。
学生数は約39,000名、1,300名を超す教授陣の約8割が博士号を取得しており、米国、日本、中国、韓国からの派遣教授や科学アカデミー会員などを多数起用しています。
ロシア連邦教育科学省によると、教育・研究レベルではロシア全国の約700の大学のうち第2位にランクされました。

(「極東大学紹介」(ロシア極東国立総合大学函館校)より)

■Far Eastern National University(英語版サイト)

ロシアについて不勉強なマイスターはこれまで存じ上げなかったのですが、上記の説明の通りなのだとしたら、国内では相当なエリート大学なのでしょう。

さて、このような名門校が、日本に分校を設立したのは1994年。もう14年前になります。
ウラジオストク市と姉妹都市提携を結ぶ函館市が、誘致したのです。

学生は全員ロシアの本校に短期の留学をするカリキュラムのようで、結構、面白そう。
日本の他の大学ではなかなか体験できないような、ちょっと変わった学びを体験できるかも知れません。

函館校は、極東国立総合大学の分校として1994年に開校し、ロシア語はもちろんロシアの歴史・文化・政治・経済などロシアのスペシャリストの育成を目標に教育を行っています。
めまぐるしく変化する国際環境の中でグローバルに対応できるようロシア語だけでなく英語教育にも力を入れ、語学+アルファの能力を持った新のエキスパートを世に送り出すことを目指しています。
ウラジオストクの本学から派遣された教授陣のほか、日本語、日本文化を学ぶ本学からの留学生等、身近にロシア人と触れあい、さらに本学への留学により、ダイレクトにロシアを体験し、日ロ交流の懸け橋となる人材の育成をめざす特色ある学校です。

(「学校紹介」(ロシア極東国立総合大学函館校)より)

このように、ロシアのスペシャリスト、「日ロ交流の懸け橋となる人材」の育成を行ってきたとのことです。
しかも、ロシアと(やっかいなものも含めて)縁が深い北海道で、です。

これは、それなりに社会的な意義を持つ取り組みだと思います。
函館にとっても、北海道にとっても、貴重な人材を送り出してきたのかな、なんて想像します。
こういう学校が、日本に一つくらいあってもいいですよね。


しかし!

冒頭でご紹介した報道によると、この学校、ずっと定員割れを起こしているのだそうです。
理由はこの記事からだけではわかりませんが、なまじ個性の強い存在であるだけに、志望者を集めるのは確かに大変そう。
それにここ数年、「国際性」を打ち出す大学は増えています。これまでの外国大学日本校よりも、よほど外国大学っぽいぞ、というところもあるでしょう。もしかするとこういった競合の台頭にも、影響を受けているかも知れません。


そして!

このロシア極東国立総合大学函館校がなんと、函館市の市立大学に移行されるかも知れないというわけなのです。函館市が、検討に入ったのだとか。

ロシアの国立大学が日本に設立した分校で、日本国内では専修大学であると同時に「外国大学の日本校」でもあるロシア極東国立総合大学函館校が、函館市の市立大学に移行。

もう一体、誰が経営しているのやら。

何だかとても複雑なことになっています。
本当に移行されたら、校名は「函館市立ロシア極東国立総合大学函館校」でしょうか……。

しかし、「検討に入った」なんてサラリと報道されていますが、想像以上にこれ、大変なことなのではないでしょうか。
何しろ、ちょっと考えただけでも、よくわからないことばかりです。


○市立大学になったら、ロシアにある本校との関係はどうなるのでしょうか。ロシアの国立大学の分校を、函館市がお金を出して運営してあげているような形になるのでしょうか。

○これまでロシアの学位を出していたわけですが、今後は日本の学位になるのでしょうか。

○カリキュラムはこれまでと変わるのでしょうか。

○ロシア人教授達の処遇はどうなるのでしょうか。

○現在学校が持っている資産(校舎や土地等)は、誰のものになるのでしょうか。


……などと、少し考えただけで、「?」マークがたくさんアタマの上に浮かびます。

もっと根本的な疑問もあります。


○市立大学になったら、経営が改善されるのでしょうか。

○函館市には、既に「公立はこだて未来大学」がありますが、二つも大学を維持できるほど、市の予算にゆとりがあるのでしょうか。

○移行について、住民の支持は得られそうなのでしょうか。

○入学希望者が減少し定員割れを起こしているこの学校を、今後も函館市は本当に必要とし続けるのでしょうか。函館市や北海道の住民の皆様は、必要とするのでしょうか。


……挙げ出すとキリがなさそうなので、このくらいに。

しかし、この学校がこれまで果たしてきた意義・役割には敬意を払いつつも、外国大学日本校を公立大学に移行するというのには、個人的には違和感も覚えます。
それぞれの制度の基盤にあるものが、何もかも違いすぎるからです。

ロシア極東国立総合大学函館校はもともと、「函館市が誘致した」学校だとのこと。
もしかすると、そのあたりで、今さら手を引けない事情もあるのではないか、なんて気もしてしまいますが、本当のところは分かりません。

行われている教育自体は興味深いものですし、個人的には存続して欲しいと思うのですが……色々と、地元で議論を巻き起こしそうな気もします。
さて、一体どうなるのでしょうか。

以上、マイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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