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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

オリンピックの実績で大学に入学するということ

マイスターです。

色々と議論もあったオリンピックですが、始まってみれば、何事もなかったかのように盛り上がっています。
オリンピックの力というか何というか。

さて、地元・中国の話題で、こんなニュースを見つけました。



【今日の大学関連ニュース】
■「上海 8位以内入賞の五輪選手の大学入試免除を決定」(人民日報)

2008 年上海市成人大学入試オンライン受付業務が12日から始まるのを前に、同市教育試験院は10日、「2008年成人大学入学業務規定」を発布した。同規定によると、オリンピック、ワールドカップ、世界選手権など各種世界的競技大会の試合で、8位までに入った選手の大学入学試験免除枠が約束された。

上記の条件に適合する出願希望者については、本人が出身地の県?省?市級の体育行政部門が審査?発行する「優秀スポーツ選手成人大学学習入試免除申請推薦表」を提出、上海市教育試験院大学入試弁公室の審査を経て、志望校の同意が得られれば、試験免除により入学が許可される。

(上記記事より)

中国の「成人大学」というのは、社会人や出稼ぎ労働者などに大学教育を施すことを主な目的とした教育機関で、通信大学、夜間大学、テレビ放送大学、短期大学などがあるそうです。

入学するためには、入試を突破しなければならないのですが、「オリンピック、ワールドカップ、世界選手権など各種世界的競技大会の試合で、8位までに入った選手」であれば、試験免除で入学させる、と発表したとのこと。

「どんな競技での成果であっても」、「希望するすべての学部学科への入学を認める」……ということなのでしょうか。
一応、「上海市教育試験院大学入試弁公室の審査を経て、志望校の同意が得られれば」という記述がありますが、どの程度まで認められるのか、残念ながらマイスターには詳細が分かりません。

オリンピックで8位入賞というのは、かなり高いハードルであるようにも思えますが……。


ちなみに日本でも、入試要項に「オリンピック」という文字を入れている大学はあります。

例えばスポーツ推薦入試。

■「スポーツ能力に優れた者の特別選抜入学試験 概要」(立命館大学)

↑典型的な例として、立命館大学のスポーツ推薦制度。
競技基準の中に、「オリンピック、世界選手権大会、各種国際大会に出場した者」という文字があります。

■「スポーツ推薦入試」(愛知工業大学入試センター)

↑こちらは愛知工業大学の例ですが、推薦の対象となる競技種目リストの脇に

※オリンピック、世界選手権などの国際試合に出場する競技力がある方については、募集種目以外であっても出願を受付ます。

(上記ページより)

……という文字があります。

実はこういう大学、探してみたら結構ありまして、

5. オリンピック等の国際試合に通用する程の競技能力を有するもので、該当募集種目がない場合は、出願する前に大学に問い合わせること。

「平成21年度 スポーツ推薦入学試験(公募制)」(熊本学園大学)より)

……なんて例も。

スポーツ推薦入試には大抵、対象となる競技が設定されています。大学によっては、大学入学後も競技活動を継続すること、を条件にしているところもあるでしょう。そういう場合は、大抵、大学として、その競技を指導する体制(コーチや施設・設備等)が整えられていたりします。
上記の例は、オリンピック級の選手が入学を希望した場合は、そういった指導体制の整備も検討します、という意味なのでしょうか……? うーむ。


ちなみに入試において、オリンピックに対して最も強いこだわりを見せているのは、体育大、ではなく、早稲田大学。
福原愛選手の入学で話題になった「トップアスリート入学試験」の要項には、「オリンピック」という文字がこれでもかと登場します。

■「2009年度 トップアスリート入学試験(AO方式)概要(PDF)」(早稲田大学スポーツ科学部)

冒頭、この入試の説明を語る部分から、

本入試制度では、スポーツ科学に強い関心を持ち、オリンピックでの活躍が期待できる、優れた能力 を持つスーパーアスリートを求めています。本制度により、将来の日本スポーツ界をリードしていく情 熱を持つ人材に、早稲田の門を叩いてもらいたいと願っています。

(上記ページより)

……と、「オリンピックでの活躍が期待できる」選手を求めているとハッキリ書かれていますし、出願資格にも

2) 出願時点で、オリンピックへの出場経験、あるいはオリンピック出場につながる国際的レベルの競技大会への出場経験、もしくはそれに相当するレベルのオリンピック種目の競技能力を有すること

(上記ページより)

……と明記されています。

オリンピックに出たことがあるか、または現時点で出られるだけの実力を持った学生を対象にした入試制度なのです。
日本体育大学のスポーツ推薦ですら、ここまでの条件は課していません(上海市成人大学には負けますけれど)。

また他大学の場合は、「これまでの実績」等を求めてはいるものの、入学したらオリンピックに出てくれとは明記されていないケースが多いです。
それに対し、早稲田大学のトップアスリート入学試験では、「(早稲田大学の学生あるいは卒業生として)オリンピックに出場してください」という期待がより明確に込められているように思います。


ところで、こういった大学は、「なぜ、オリンピックを条件にするのか」ということを、大学として説明できるのでしょうか。

それ以前に、「いかなる意義・目的に従い、大学としてスポーツ推薦制度を運用しているのか?」ということを聞いてみたいところです。

■「ちょっと画期的な、早稲田大学の推薦制度」

↑過去の記事でも述べましたが、マイスターは、個人的には従来型のスポーツ推薦制度そのものに疑問を感じています。

大学がスポーツ活動の実績で学生を選抜して入学させ、学位を与えることに、どういった意義があるのか。特に、スポーツ系以外の学部に入学させる場合は、なおさらです。
(「オリンピック」を条件にしている大学の中にも、体育・スポーツ系の学部学科がない大学がありました)

「スポーツで活躍した人材は、人格的にも素晴らしい」という主張もあるでしょう。確かに、それは一理あります。しかし、それなら「オリンピック出場」という部分にこだわる理由は何でしょうか。
過去の実績のみならず、「これからオリンピックで活躍できそう」な学生を大学が集める理由も、やっぱり個人的には、(「大学のPR」を除けば)今ひとつよくわからないのです。

トップアスリートに学びの場を提供するということ自体にも、意味はあるでしょう。
でもそれなら、先日の記事で述べたように、プロ選手、あるいは実業団やクラブチームの選手としてスポーツ活動に専念しながら、少しずつ自分が学びたいことを学ぶ、というスタイルの方が、大学の本来の役割に合っているように思うのですけれど。

オリンピック選手を集めている大学の関係者の方々、どなたか教えていただければ幸いです。

以上、冒頭の記事を見ながら、そんなことを考えたマイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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