公設民営の名桜大学が、公立大学法人への移行を検討?
マイスターです。
学部の廃止、キャンパスの撤退といった話題が続いていますが、こんな動きもひろがっているようです。
【今日の大学関連ニュース】
■「名桜大、公立移行を検討 授業料減、学生増狙う」(琉球新報)
北部12市町村と県が設置し、学校法人名護総合学園が運営する「公設民営」の名桜大学(瀬名波栄喜学長)が、運営形態を現行の公設民営から公立大学法人への移行を検討していることが26日までに分かった。公立法人化で授業料を安くし、学生や保護者の負担を減らすのが目的。経済的に学びやすい環境を整備し、少子化などによる志願者数減少を食い止め、厳しい経営事情を打破したい狙いもある。
(略)全国的には、高知県が1997年に設置した高知工科大学が、4月から公設民営の大学としては国内で初めて公立大学法人化する。同大は公立法人化で授業料が従来の半額以下になる見通しで、近年減少傾向だった志願者が2009年度入試で急増した。名桜大は08年10月、同大に職員を派遣し視察するなど、学内の大学改革委員会を中心に公立法人化の検討を始めた。
金城正英同大総務部長は「公立大学法人化で文部科学省からの私学助成金はなくなるが、運営母体となる地方自治体には総務省から交付税が交付される。(名桜も)地域がつくった大学だからこそ(公立法人化で)地域に還元できるのではないか」と、利点を強調した。
名桜大は1994年、県と北部12市町村が経費を拠出し設立した。志願者数は2005年以降減少傾向が続き、08年度は募集定員520人に対し、入学者424人で22・6%の定員割れだった。
(上記記事より)
名桜大学は、1994年に沖縄県、および沖縄県北部の12市町村が創設経費を拠出して解説した、公設民営の大学です。
もともと国際学部だけの単科大学として運営されてきましたが、
・2005年 人間健康学部スポーツ健康学科開設
・2007年 国際学部を改編し「国際学群国際学類」に
・2007年 人間健康学部に看護学科を開設
……と、ここ数年、にわかに動きが激しくなってきていました。
上の記事では、「2005年以降減少傾向が続き、08年度は募集定員520人に対し、入学者424人で22・6%の定員割れ」とありますが、学部や学科を拡充していったにもかかわらず、志願者は減少の一途を辿ってきたようです。
こうして手を尽くしたけれど学生が集まりそうにない、という判断でしょうか。
現在、公設民営から公立大学法人への移行が学内で検討されているとのことです。
記事で紹介されている高知工科大学の事例は、↓以前のニュースクリップでも少しご紹介しました。
■ニュースクリップ[-2/24] 「秋田の『博士』教諭募集に全国から57人 就職難が背景」ほか
■「私大から公立大へ 全国初の転換を高知工科大と県が準備」(Asahi.com)
公設民営方式で運営されている高知工科大学(高知県香美市)を公立大学法人化させる準備を高知県と同大が進めていることが21日、分かった。順調にいけば09年4月にも、事実上の「県立大」となり、私立大が公立大に転換する全国初のケースになるという。県は、財政への影響などを含め慎重に検討した上で、県議会の議決などを経て国に申請する方針。
高知工科大は、97年4月開校。土地代や建設費など計約268億円を県が提供し、開校後の運営費用は、県が中心になって作った財団が前身の大学法人が負担している。大学間競争の激化で受験生は減少傾向で、07年度の入学者は定員の8割程度だった。
同大事務局によると、年間の運営費約42億円のうち、約29億円は授業料など学生納付金、12億~13億円は国からの私学助成金。公立法人化すると私学助成金は打ち切られるが、大学側は「私学助成金の倍程度の地方交付税が県に支給される」と見込んでいる。
これにより、授業料や実習費などを合わせて現在年約124万円になる学生の負担は、年約50万円程度に抑えられる見通し。同大の橋本大二郎理事長は「受験生の国公立志向も強まっている。前向きに取り組んでいきたい」と話す。同大事務局は「私学特有の就職指導や学生育成のノウハウを『県立大』として生かせれば、学生増加につながる」と期待している。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)
この高知工科大学は、公設民営の大学が公立大学法人化される、全国初のケースでした。
私学としては、定員まで学生を集められず、少しピンチ。
でも公立大学になれば、私学助成金の倍の地方交付税が県に支給され、学費も半額以下になるので、盛り返すはず……という目算が、ずばりその通りになり、近年減少傾向だった志願者を、2009年度入試で急増させることに成功したそうです。
ただ、こうした動きには、賛否両論があると思います。
また、議論になりそうな問題点もいくつかあります。
学生が増え、大学が維持されるのですから、同大の関係者にとっては良いことづくめの話でしょう。
それに、もともと高等教育機関が少ない地域において、貴重な学びの場を守るというのは意味がありますし、重要です。せっかく大金をつぎ込んでつくった施設も有効活用されます。
これらは、間違いのない事実です。
しかし見方によっては、受験生からの支持を得られていない私立大学を、県や国の税金を投入することで生き返らせようとしているという話にもとれなくはありません。
さらに言うと、ここには、「土地や建設費などを出した関係上、高知工科大学が経営にいきづまれば、県知事や県議会の立場がなくなる」という事情も絡んでいます。
↑公費や土地を拠出して皇學館大学のキャンパスを誘致したにもかかわらず、わずか10年程度で撤退されることになってしまった名張市では、現在、市の責任問題を追及する声が市民団体などから上がっています。
誘致に関わった前市長を含め、地元では大きな問題になっています。
全国の大学の中には、設立時に、自治体などから資金や土地を拠出してもらっているところも少なくないでしょう。そこには、多額の税金も投入されています。
それは、地元に対して今後ずっと教育サービスを提供してくれるからとか、人材を供給してくれるからとか、あるいは大学が存在すること自体の経済効果であるとか、様々なメリットを自治体側が大学に期待しているからに他なりません。
市民が公的資金の投入に納得するのも、こうしたギブアンドテイクがあるからこそです。
こうしたメリットが十分に回収されておらず、多額の税金だけかかったままで大学に撤退されたら、そりゃあ地元は問題視するでしょう。
(というか、もし問題にならなかったら、それは地元のメディアや政治のシステムが正常に機能していないのだと思います)
私立大学の誘致でこれなのですから、まして公設民営の大学がつぶれたら、そこに関わった行政や政治家の責任問題は免れません。
県には、大学には「つぶれられたら困る」というオトナの事情があるのです。
公立大学法人になれば、学費を他の私立大学よりもかなり安く設定できますから、学生が急増するのは当たり前。表層だけ見れば、あたかも「英断によって大学が蘇った」かのように見えるでしょう。
しかし実際には、そこで行われている教育にも、研究にも、代わりはありません。
変わるのは、「多額の税金をつぎこみ続けることになった」という点だけです。
大事なのは、そうやって維持しなければならないくらい、地元にとってその大学が、本当に必要不可欠な存在なのかどうか、ということでありましょう。
地元が本当に必要としているのであれば、今後もずっと税金を拠出し、公立大学法人として運営を支え続けても、問題はありません。
問題は、それを議論するのが誰か、ということではないでしょうか。
少なくとも、最終決定権は、その大学の経営陣にはないでしょう。議会を始め、地元に経緯を説明し、議論が尽くされるべきだとマイスターは思います。
高知工科大学の場合、「高知県には国立の高知大学を含め、工科系の大学がない」という大義名分がありました。これは誰にとってもわかりやすいです。
地元の産業活性化のためにも、あるいは最低限の教育機会を地元の人達に提供するためにも、高知工科大学を税金で支える意味はあるかもしれません。
名桜大学が地域にとってどのような価値を提供してくれる大学名なのかは、地元でもっと議論されて良いと思います。
金城正英同大総務部長は「(略)……(名桜も)地域がつくった大学だからこそ(公立法人化で)地域に還元できるのではないか」と、利点を強調した。
(冒頭記事より)
……と大学側はコメントしていますが、これは、大学を存続させなければならない理由の説明にはなっていません。
他にない価値を生み出すのか、あるいは現在の価値をより高めてくれる大学なのか。
大学としてのミッションを、改めて説明された方がいいのではと思います。
地元の人達が、税金を出してでも残したいと思っておられるのなら、議論を尽くした後でも残るでしょう。
例えば大学は、webサイトなどで、大学としてのより明快な主張や説明、情報などを出されてみてはいかがでしょうか。大学として、地域を説得するのです。
今こそ、創設以来の様々な「実績」が問われるときなのかもしれませんね。
以上、そんなことを考えたマイスターでした。

