早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東京外国語大学
外国語学部

新熊 隆嘉 助教授

新熊 隆嘉(しんくま・たかよし)助教授
1970年大阪生まれ。93年慶應義塾大学経済学部卒。95年京都大学大学院人間・環境学研究科前期博士課程修了。98年同後期博士課程研究指導認定退学。98年岐阜聖徳学園大学経済情報学部助手。99年同講師。00年同助教授。02年より現職。98年京都大学博士(人間・環境学)取得。

  • mixiチェック

いまこそ出番! 環境経済学からのアプローチ

東京外国語大学は、高度な外国語運用能力が身につけられる国立単科大学として知られる。しかし、どんなカリキュラムでどんな語学教育が行なわれているのかは案外知られていないのではないだろうか?
東京外大では、まず1・2年次に7課程26言語から選択する主専攻語と副専攻語について徹底して習得することになる。この26言語には、英語やフランス語・ドイツ語をはじめカンボジア語やウルドゥー語・ヒンディー語などまでに及ぶ。

3・4年次になると「言語・情報」「総合文化」「地域・国際」の3コースに分かれ、それぞれの専門分野について学んでいく。また、これとは別に04年度から「特化コース」が設けられ、学部3年次から大学院までの5年制の一貫教育もスタートしている。特化コースは

①日本語教育
②英語教育
③言語情報工学
④国際コミュニケーション
⑤国際協力 ――の5分野のコースからなる。

その校名から外国語習得だけを目的にした大学のように思われがちな東京外大だが、言語習得とともに幅広い教養と深い専門知識も得ることもできる大学として定評もある。さらに「多摩地区国立5大学単位互換制度」によって、多摩地区にキャンパスのある一橋・東京学芸・東京農工・電気通信・東京外国語の各大学間で相互に授業の履修もできる。それぞれ単位に認定されるのは言うまでもない。

環境諸問題のメカニズムに迫る環境経済学

新熊研究室のある東京外大研究講義棟

さて今回登場願うグッド・プロフェッサー新熊隆嘉先生だが、3・4年次の学生を対象にする「地域・国際コース」で経済学を教える。じつに70年生まれという若々しい新進気鋭の先生だ。はじめに地域・国際コースについて説明してもらった。

「地域・国際コースは学生たちに一番人気がありまして、それぞれの地域や国について歴史や経済・社会など多様な視点から切り込んで理解を深めていこうというものです」

新熊先生は静かな口調で確かめながら語ってくれた。その専門はいまトレンドの「環境経済学」だ。

「環境問題というのは人間の経済活動が生み出したもので、その背景には経済活動のメカニズムがはたらいています。そのメカニズム」 を解明していくと、どこをどう処方すれば環境問題が解決に向かうかが分かるはずなわけです。

現在の環境問題の解決技術についてはほぼ出そろってきたといわれる。そこで課題となるのはコストと採算性。だからこそ経済学の知識が不可欠であり、そこで環境経済学の出番となる
「いま地球上では温暖化という深刻な環境問題があって、温室効果ガスの排出削減の課題を抱えています。これを経済手段によって削減しようという試みが“排出権取引制度”という制度です。国ごとに割り当てられている排出量を超えて排出したいときには排出権を購入してから排出するという仕組みとなります」

この排出権取引制度がうまく運べば、最小の費用で地球上で削減すべき温室効果ガスの排出量を達成できるはず。環境問題解決に環境経済学からアプローチした典型的な例で、すでに世界中で運用が始められている。

都内5大学の環境研究ゼミが集う「インゼミ」

晩秋の東京外大キャンパス中央広場

東京外大のゼミは3・4年次の学生が対象となる。新熊先生のゼミでは例年13~14人のゼミ生を受け入れるというが、国立大学のゼミとしては異例の大人数といえよう。やはり学生からの人気が高いのだ。

ゼミ演習では4年次の学生が卒論に向けた個人研究、3年次の学生は前期がテキストの輪読で後期がグループ研究となる。この3年次後期のグループ研究は毎年11月に開催される「インゼミ」に向けたもので、ゼミ生にとっての最大イベントともなっているという。

「都内5つの大学である慶應・上智・東京工業・早稲田・東京外国語において環境問題を研究しているゼミが一堂に介して研究発表し、それぞれ活発な討論を行なうのがこのインゼミなのです」

新熊ゼミでは例年2~3グループがインゼミで研究発表をする。ちなみに03年度は「自動車メーカーの企業戦略とエコカー補助金政策」「都市部におけるロード・ブライシング導入の可能性」「電力自由化の新エネルギー利用・二酸化炭素排出量に与える影響」の3つの研究が発表された。

「インゼミの研究発表では優劣はつけません。しかし発表を聞いていますと、どの大学のどのグループがよかったのか自ずとわかってきます。インゼミで発表する3年次学生ははじめての経験ですから、彼らを指導する4年次学生のほうが責任重大な気分になるようですね」

卒業後の方向性を見据えた実りある学生生活を

学食や売店がある憩いのスペース・大学会館

インゼミの季節が近づくと、それに向けて新熊ゼミは全員が熱く燃えてくる。その学生指導について新熊先生は次のように語ってくれた。

「バランスのいい人間として社会に出ていってほしいと思っています。大学生になると、勉強やサークル活動に加えてゼミやバイトなども増えます。非常に忙しくなるわけですが、だからといって、そのどれかを切り捨てるようなことはして欲しくありません。『部活が忙しくてゼミのリポートができなかった』というような言い訳はできれば聞きたくないですしね(笑)」

やると決めたからには、勉強も部活もバイトも全力でぶつかってやり遂げてほしいという。さらに目的意識をもって大学で学ぶ姿勢も重要と語る。

「東京外国語大学には多様な学習機会が用意されています。それが逆に、いろいろなことに手を出して広く浅く学んでしまう危険にもつながります。大学を卒業した後の方向性を見据え、その踏み台になるべく学習計画を選択して身につけるべきです。モヤモヤした気分のままで卒業していくのだけは止めてほしいですね」

大学の学部2年次のときに環境経済学に出会い、以来ひとすじに研鑽を重ねてきた新熊先生からの心からのアドバイスだ。

こんな生徒に来てほしい

やはり主体性のある学生に来てもらいたい。いまの学生たちを見ていると、いわゆる「マニュアル人間」が多いような気がします。いい意味で私たち教員を驚かしてくれる学生が少ない。ちょっとくらい暴走気味でもいいですから、元気あふれる学生らしい姿を見ていたいものです。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。