Profile/Taichi Ando
早稲田塾第18期生。1997年、神奈川県立上溝南高校を卒業、その後、早稲田大学理工学部機械工学科、早稲田大学大学院(現在の早稲田大学理工学術院)理工学研究科機械工学専攻を経て、2003年日産自動車株式会社に入社。現在は、同社パワートレイン開発本部 パワートレイン実験部 ガソリンエンジン性能適合グループに所属し、エンジンの開発を手がけている。
より早く、安全に、燃費よく!
理想の自動車をカタチに
自動車のエンジン製品を開発する――。これがぼくのミッションです。
「リッターあたり○kmで走る自動車を開発する」という命題のもと、何秒で加速できるか、そのためには抵抗をどれくらい減らすか……。最適なエンジンの構成を考え実験し、部品を試作する。想定と違う結果が出たときは、原因を突き止め対策を考える。ときには、想定外の結果に青ざめてしまうこともあるけれど、経験豊富な先輩に聞いたり教科書を引っ張り出し、思い違いはないかと試行錯誤しながら結果を出していきます。
「どうやったらもっと性能があがるだろう?」「こんな方法はどうだろう?」そんなことを四六時中考えている。だからこそ、結果が出たり、手がけたエンジンが搭載された自動車が世の中に出ることは、無上の喜びです。
サーキットで抱いた「車開発」の夢
絶対かなえると入塾を決意
車の開発に携わりたい。初めてそう思ったのは、中学時代におじと従兄とともに富士スピードウェイでのレースを観戦したときでした。目の前を颯爽と走るスポーツカーのしなやかなボディ、沸き立つ声援。手に汗握る興奮は、次第に「いつか、ぼくも車を開発したい」という思いに変わっていきました。そして、得意な数学を活かしたいと考え、〈開発〉という具体的な夢が定まった。
せっかく見つけた夢。だからこそ、やり残したり諦めたりはしたくないと、塾に入ってしっかり大学受験に備えようと考えた。自宅近くの塾を一通りまわって早稲田塾に決めたのは、塾生が明るくてスタッフも丁寧に接してくれたから。
早稲田塾で特にタメになった講座は、理系科目はもちろんですが、「EEC(Extensive English Class)」ですね。翌週の範囲の英文を訳すだけでも相当なボリュームで、確実に語彙力が増え、読解のスピードが上がっていくのがわかりました。毎週のことなのでしんどいけれど、周りの友だちがちゃんとこなしているから、自分だけサボるわけにはいかない。ただがむしゃらに課題をこなすという繰り返しでしたが、今思うと、計画をたてて勉強するという習慣が、この頃に身についたと思います。
早稲田塾は未来の縮図
切磋琢磨した友人は一生モノ
早稲田塾では勉強の習慣はもちろん、10数年来、縁がつづく友だちを得ることができました。高校時代、一緒に励ましあった塾の仲間は今、弁護士、会計士、保育士……など専門性を活かして活躍しています。つい先日も、当時の恩師を交え皆で集まりました。膝を付きあわせ、何時間も高校時代の思い出を語り合ったり近況報告をしたり……。皆、頑張っている場所や状況は違うけれど、こうして親交を深め、共有できる機会があるのは、かけがえのないことです。
また現在は、後輩に仕事の内容を教える機会が少しずつ増えてきました。そのときに思い出すのは、早稲田塾のインターンシップに参加していたときのこと。塾生が問題の解き方などを質問してくると、どうやったら伝わるかなと悩みながら、噛み砕いて伝えていました。その塾生たちが「大学に受かった!」と息せき切らして報告しにきてくれたことは忘れられません。現在も相手の気持ちを想像しながら、後輩や仲間に接しています。
よく学び、よく遊ぶ!
そのパワーが飛距離を伸ばす!
子どもの頃に描いた車開発の夢を実現するため、進路選択では迷うことなくエンジン開発の学部・専攻に進みました。早稲田大学・大学院と在籍した研究室では、自動車会社から委託を受けて自動車エンジンの開発に取り組みました。天然ガスエンジンによるエコ化や効率化などに向けて、実験や試作を繰り返したことは、今の素地となっています。
また、大学時代はサークルにも注力しました。早稲田大学宇宙航空研究会では、琵琶湖で毎年開催される鳥人間コンテスト選手権大会で、作製した人力飛行機の飛距離やスピードを競いました。大学3年最後の年は、577m飛んで4位に入賞。自分たちが作った飛行機が空を飛ぶ、この感激は今の車開発にも通じるものがあります。そうそう、この頃に買った車が、日産のプリメーラでした。小学校の社会見学で訪れた日産座間工場の記憶も常に脳裏にあり、日産での車開発は、自分にとって必然のめぐりあわせだと感じています。
将来の<夢>エンジン開発に継続的に取り組み、
車全体の構成を考えられるエンジニアに
これから発売される日産の車には、安全性・燃費・走りとこだわって、性能の向上に手をかけてきたエンジンが搭載されています。このエンジン開発に継続的に取り組みながら、将来は車全体の構成を考えられるエンジニアになりたい。
開発に注力できるのは会社の先輩や仲間のおかげ。仲間とはオフに釣りにいったりしながら、バランスのとれた生活を送れています。これからは、昨年入籍した妻とともに、仕事はもちろん、2人の好きな料理やジョギングなどの趣味を楽しみながら、互いに成長していきたいと思います。
――子どもの頃の憧れを現実のものとしながら、エンジニアとしてのキャリアを積み重ねる安藤先輩。丁寧に話される様子から、仲間や家庭を大事にするお人柄が伝わってきました。これからも、日本の製造技術の向上に大いに寄与されていくことでしょう。
一生モノの仲間と切磋琢磨し
エンジン技術の向上を目指す