
SFC時に起業。老舗企業の経営者を目指し
「100年愛される革製品」をデザインしたい
レザーバッグブランド・グラネス株式会社 代表取締役兼デザイナー 伊藤妃実子

SFC時に起業。老舗企業の経営者を目指し
「100年愛される革製品」をデザインしたい
レザーバッグブランド・グラネス株式会社 代表取締役兼デザイナー 伊藤妃実子
Profile/Himiko Ito
グラネス株式会社 代表取締役 兼 デザイナー、All Aboutファッションガイド、慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)。 早稲田塾27期生。2003年より、日本人建築家からデザインを学ぶ。都立晴海総合高校を卒業後、慶應義塾大学環境情報学部在学中の2007年に「グラネス株式会社」を設立。銀座・神戸・百貨店などで展示会を開催。2010年、SFC STUDENT AWARD 受賞。2012年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。同年、創業300年の有田焼販売・香蘭社とのコラボテーブルウェアをデザイン。2013年、軽井沢・脇田美術館とのコラボ絵画バッグをデザイン。2014年、ジュエリーブランドSAINT RIVERとのコラボジュエリーを発表。ART BOXバッグデザインファイル『世界の、日本のバッグデザイナーたち』 招待作家。
100年後も愛され続ける
革製品をデザイン・販売
レザーバッグブランド・グラネス株式会社 代表取締役兼デザイナーとして、デザインや製品を日々生み出す――。それが、今の仕事です。
ラベンダーやオレンジのレザーにヌメ革をコラージュしたバッグ、パールエナメル革の財布、花をかたどったチャーム……。それらの「デザイン」をとおして日本のものづくり技術を次世代へと伝え、100年後も愛されるブランドを確立したい。
商品のデザインは、コンセプトの立案からスタートします。建築の画集や図集から着想を得たり、対象となるモチーフの歴史などを勉強したり。コンセプトが固まると、「誰のために、どのような使われ方をするのか」を想像しながら、真っ白な紙に線を引き、パソコンで図面を仕上げていきます。一方、経営者としての私は机から離れ、取引先やパートナー企業を訪ねます。そこで新作やプロジェクトを提案し、催事や取引につなぐと、次のデザインに着手。
多くの方の思いを大切にしながら、ひとつのものを仕上げる。そんなプロセスの連続が、私の原動力になっています。

「100年間使いつづけられる革製品を作りたい」
そんな思いでデザインしています
文章を書くことのできる
「10%」の人間になる!
「100年後も愛されつづけるブランド」を目指すうえで欠かせないのが、心に訴えるデザイン。そして、多くの方に支持をいただくうえでは「文章力」が不可欠となります。デザインの裏にある意図、デザインの特性などを伝えるコンセプト資料や事業計画書、営業資料などでは、「文章」が会社の方向性を大きく左右するためです。
この「文章力」の必要性を感じた最初のきっかけが、早稲田塾で受けた「論文作法(さっぽう)」でした。書く、読む、批評する、議論する、もう一度書く……というプロセスをつうじて、いったいなにが一番言いたいことなのか、主張を表すうえで最適な言葉は何かを常に考えつづけました。当時の講師の言葉、「文章を書くことのできる、10%の人間が生き残る」――この言葉の重みをいま、強く実感しています。自分のデザインやビジネスを正しく相手に理解してもらううえで、文章力を鍛えた経験が、しっかりと生きているからです。

制服の違う私たちがなぜ、
こんなに仲良しなんだろう?
早稲田塾で得た財産は、文章力だけではありません。かつての同志であり、生涯の仲間たちです。受験前になると、慶應義塾大学SFCの1次試験を突破した塾生だけが集まって、口頭試問・ディスカッション対策をし、連日、「こう話したほうがいいよ」、「もっとこの点を強調したら」とお互いを高め合いました。2次試験当日は、SFCを受験するメンバー全員が藤沢駅に集合して受験会場へ。緊張と沈黙が漂うバスの中、私たちだけが和気あいあい、リラックスした雰囲気のまま会場まで辿り着きました。一緒にバスに乗っていた他の受験生は、制服の違う私たちが、なぜこんなに仲良しなのだろう、と疑問に思っていたかもしれませんね。それほど一致団結していました。あれから月日は経ち、当時のメンバーはそれぞれ、さまざまな業界で活躍していますが、いまでも集まるとなんともいえない居心地のよさを感じます。

慶應在学中に「グラネス」を設立、
学生経営者に
建築家を目指していた高校時代、憧れの建築家・坂茂さんがSFCで教鞭をとられていたことから、出願のわずか1か月前にSFCへの受験を決意。スカラシップ(授業料全額免除)で現役合格することができました。
SFCには、さまざまなチャンスが満ち溢れていました。授業の一環で出場したビジネスコンテストで入賞したことをきっかけに、在学中にいまの「グラネス」を設立。
当時はまだ、20歳の学生社長です。職人の方には「小娘」とバカにされ、なかなか製作を受けていただくことができませんでした。負けん気だけを頼りに下町の工場をまわり、ようやく浅草の職人さんにご協力いただいて、最初のバッグを完成! NHK「東京カワイイ★TV」や「@キャンパス」、TV東京の「ブリコレ Brilliant Girls Collection」という番組で特集を組んでいただき、百貨店での取り扱いもいただけるように。また、大学院に進学したころからは、有田焼や美術館、ジュエリーなどとのコラボレーションに事業を広げることができました。
いまでは、企業の創立・周年記念品や贈答品のデザイン・製造なども行っています。「贈って喜ばれるもの」に選んでいただけるのは、デザイナーとしてとてもうれしいことですし、50周年・100周年を迎えた会社に、自社のデザインと製品を選んでいただけることを、とても誇りに思っています。

将来の<夢>大好きな会社と革製品が、
100年後も愛されるように……
夢は、グラネスを「100年続く会社」にすること。その目標に向けた取組みの一環として、現在、慶應義塾大学SFC研究所にて、老舗企業について研究しています。成功も失敗も味わい尽くしている先輩企業には共通して、「私利私欲なく創業の理念を次代に伝える」という思いがある。「グラネス」は、祖父が30年以上使っていた革ベルトを見て、「100年間、使い続けられるデザインを生み出したい」という思いでつくりました。その創業の思いが、100年後も変わらないように……。ですが、いまから100年後というと、私はその成長を見届けることができないでしょう。いつの日か、自分の子供や孫が会社を継ぎ、グラネスの100周年を祝ってくれたら、うれしいですね。
―― 女性ならではの気遣いと、経営者としての意志の強さを兼ね備える伊藤先輩。お人柄が、愛される革製品を生み出していると感じました。女性の起業や社会進出をリードする存在として、今後のご活躍を大いに期待しています。

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