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世界食糧援助量の約2倍の「まだ食べられる品」を廃棄する日本の「食料ロス」

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「食品ロスを減らそう」という動きが、2013年になって加速してきた。10月には日本即席食品工業協会が、2014年当初に “日本のお家芸”である即席めんの「賞味期限」を延長すると発表した。現行では原則6ヶ月の袋めんは8ヶ月に、5ヶ月のカップめんは6ヶ月に延長する。賞味期限の延長は、包装材の技術革新などが後押ししている。

●食品ロスと1500万人の餓死者
「食品ロス」とは、まだ食べられる食料を捨ててしまう行為を指す。国内で年間500万トン~800万トンの食品ロスがあると推計される。この量は、主食であるコメの生産量とほぼ同じ。世界の食糧援助量の約2倍という途方もない「ロス」である。国連食糧農業機関からも「食品ロスの低減は、最も重要な優先事項である」と警告されている。

世界では毎年約1500万人もの人が餓死している。多くは子どもだ。では、「食料の生産が絶対的に足りないか」というとそうではない。日本は食料全体の半分以上(5600万トン)を輸入しながら、そのうち1800万トンを廃棄している。まさに「浪費」ともいうべき行為が、結果的に食料の行き渡らない大量の地域を生み出している。

●いつ飢え死にしてもおかしくない食料浪費国
日本が隠れた「畜産大国」であるのはあまり知られていない。牛、豚、鳥の生産量は世界のトップ10に入る。ただ、自給できているかというと疑問で、餌になる穀物(トウモロコシなど)の大半を輸入でまかなっている。それでも足りず、海外から肉そのものも大量に輸入する。ゆえに日本の食糧自給率はカロリーベースで約40%、生産額ベースで約70%となる。例えば、生産額ベースでみれば、牛は国内産でかなり潤っているものの、餌の大半が輸入なので、総カロリーで換算するとガクッと下がってしまうのだ。

これだけ輸入に頼っていると、仮に地球温暖化の影響などで世界的な不作となり、各国が食料安全保障上の観点から日本への輸出を絞れば、日本で大量の餓死者が出るかもしれない。ほぼ国内で食料自給ができていた江戸時代の総人口は約3000万人。今は生産性が2倍になっていると楽観的に想像しても、約3000万人が餓死線上にさまよう。

このような危機的な状態なのに、もの凄い量を輸入して、バンバン廃棄しているという現実がある。日本は「いつ飢え死にしてもおかしくない食料浪費国」なのだ。なかでも見逃せないのは、冒頭より述べている「食品ロス」だ。日本全体の食料廃棄量1800万トンの中には「危険で食べられない」というものが多く含まれている。その分は「仕方ない」とするにせよ、「食品ロス」の対象になる500万トン~800万トンの食品を「まだ食べられる」にもかかわらず廃棄しているというのが罪深い。

●「賞味期限」と「消費期限」
なぜ食品ロスが発生するか。まず覚えておきたいのは「賞味期限」と「消費期限」の違いだ。「賞味期限」はカップめん、冷凍食品、菓子など、保存しやすい食品に定められる「食品をおいしく食べられる期限」のこと。ゆえに、「賞味期限」を過ぎても食べられる。対して「消費期限」は「食品を安全に食べられる期限」で、生菓子やコンビニ弁当など保存に適さない食品に定められる。つまり、食品ロスは「賞味期限」で発生する。

商売はメーカー(生産者)→卸売り(問屋)→小売り(店舗)の順で卸されていく。近年では、小売店が大半の商品の価格決定権を握っており、メーカーも卸売り業者も、小売店の要望を聞かざるを得なくなっている。

では、小売店の要望はどこに発するかというと、結局は消費者(買い手)のニーズだ。そのなかに「少しでも新しい食品がほしい」というニーズがある。

●「3分の1ルール」とは
このニーズに応じるため、少しでも新しい商品を並べたい小売店の要望から生じたのが「3分の1ルール」である。といっても、法律で定められているルールではない。1990年代からの商慣習(商業上の慣習)になっている。

先に紹介した「賞味期限6ヶ月」の袋めんの場合で考えてみよう。たとえば1月1日を製造日とすると、そこから6ヶ月(6月30日)を賞味期限としよう。そうすると、以下のような「3分の1ルール」が生じる。

①1月1日~2月28日(6ヶ月の3分の1)【納入期限】
メーカー → 卸売業者 → 小売り と、商品が卸される。2月末を過ぎたら、小売店は納品を断ったり、メーカーへ返品できる。このとき、商品を廃棄する場合もある
…… ロス発生1
②3月1日~4月30日(6ヶ月の3分の2)【販売期限】
小売店が販売する。4月末を過ぎたら、卸売業者に返品できる。廃棄される場合もある。
…… ロス発生2
③5月1日~6月30日(6ヶ月の3分の3)【賞味期限】
賞味期限切れが近づくに伴い、小売店が売れ残りを不安視して店頭から消してしまったり、廃棄したりする可能性が強まる
…… ロス発生3
④7月1日~【賞味期限後】
まだ食べられるのに、小売店の店頭から消えて廃棄される
…… ロス発生4

「“賞味期限切れ”の無駄」を指す場合、多くが「ロス発生4」を指す。しかし実態は賞味期限内のロス発生1・2・3も存在していて、これらも非常に目立つ。特に「ロス発生1」が半端ではない。メーカーや卸売業者に返品された賞味期限内の食品は、もはや正規のルートでさばけず、結局廃棄されてしまうケースも多い。

また、隠れた「ロス0」もある。小売りからの要望があれば、メーカーや卸売業者は即応しなければならない。なので需要(ほしい)を予測してやや多めに生産する。需要予測は必ず当たるとは限らない。注文に達しないで、メーカーや卸売業者に止まったまま、永久に店へ出ない食品もある。これもロスだ。

メーカー、卸、小売りの3者による「製・配・販連携協議会」は2013年8月、この「3分の1ルール」からアメリカ並みの「2分の1ルール」にする実験(実証事業)を始めた。6ヶ月ならば「販売期限」をなくして3ヶ月で「納入期限」残り3ヶ月を「賞味期限」とする。ハードルを1つ減らせばつまずく(ロス)のも減るはずという試みだ。来年初頭にも報告書が出る。

●ロスを減らす心構え
こうした実験がうまくいき、ロスが少しでも減るようにするためには以下の点を認識する必要がある。

①世界の食糧援助量の約2倍をロスしているという事実を知って恥じ入る
②具体的な行動としては消費者がむやみに新しい賞味期限を追求しない。今すぐ食べるならば期限が今日でも一向に構わない
③そもそも「賞味期限」を「消費期限」と勘違いしている人がいる。「賞味」の方はあくまでも「おいしく食べられる期限」である。それを1日過ぎたからといってハムや牛乳がいきなりまずくなったりしない
④一番身近な小売り(お店)が啓発活動の先頭に立つ

なおコンビニ弁当のような「消費期限」物は「実証事業」に含まれていない。これらも「食品ロス」ととらえると賞味期限物より量が多い。健康志向も結構だが、こうした品は「デーリー」と呼ばれる通り、たいていその日のうちに食べるのだから。持ち運んで食べ終わるまでの時間が1時間としたら。消費期限1時間前のものを購入して何ら問題はない。棚の前面にある弁当は消費期限が近い。

あなたは棚の奥を探って、期限までまだ時間がある「新商品」をゲットする…という経験がないか。ニコニコ顔であなたが帰った後に、売れ残った古い商品に頭を抱える店主がいる。さらにその向こうには、飢えに苦しむ数千万人の子ども達が存在する。

●フードバンクという試み
どうせ捨ててしまうならばせめて国内で「再利用」できないかという試みもなされている。有名なのがフードバンク(食料銀行)でアメリカが発祥の地である。アメリカは世界最大の経済大国でありながら4000万人以上の貧困層(5人家族で年収約250万円以下)を抱える。日本もまた相対的貧困者(単身で年収約130万円。4人家族で約250万円)が7人に1人ぐらいまでいる。確かに途上国で年収約130万円ならばお金持ちなのだけど、日本のような経済的先進国に住んでいると、生きるために必要な最低限の出費も大きいので結局は貧困状態に陥る。

こうした人への食料援助の一環としてフードバンクが賞味期限・消費期限内の食品を提供してもらって配給する。他にもキャンペーン品の余剰やデザインが古いなどの理由で店頭から消えた品も加わる。熟れすぎた野菜や果物も対象だ。アメリカでは寄付した企業を保護する法律もある。それがないとトラブルになった時に会社が責任を問われかねないからだ。日本でも立法の動きが存在する。

そういうと「怠け者にただメシを食わすのか」的な反応が必ず起きる。本場のアメリカでも、草の根保守層を中心に「そのようなことにカネをかけるな」という声が出ている。一理あるのは確かだが、どうせ放っておけば廃棄する「ロス」なのだから「ただメシ」でもいいじゃないかという意見も大きい。フードバンクは、経営が苦しい介護施設の食費をサポートする役割も担いつつある。

※記事の内容は執筆者個人の見解であり、早稲田塾の公式見解ではありません。