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高校生のニュース常識

最近見かけない東大卒官僚出身の総理大臣

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前回、首相の解散権はどうしても防げないと申し上げました。しかし絶対にいったん総辞職しなければいけないタイミングがあります。総選挙後です。自公が今回の選挙で過半数以上を取れば安倍氏が総辞職した後の特別国会で三度首相に選ばれ「第三次安倍政権」となります。過半数割れして野党が連立し、それが自公を上回り、かつ統一候補を衆議院で押せれば政権交代です。

ところで政界のエリートコースはかつて2つありました。1つは「東大→官僚→衆議院議員→首相」パターン。もう1つは世襲または二世です。現在の安倍晋三首相を始め、前者のパターンがめっきり減っています。そこで日本国憲法施行から現在までの首相の経歴を探ってみましょう。なお旧制は新制大学名に置き換えています。

マークの意味
「官」=官僚
「党」=党人。官僚を除く民間などの出身。地方議員出も含む
「世」=世襲。ここでは地盤を受け継いでいなくても父や祖父など三親等内が国会議員であった場合を含む
「叩」=叩き上げ

●自民党結党による55年体制成立まで
片山哲→東大「党」「叩」=弁護士
芦田均→東大「官」「世」
吉田茂→東大「官」「世」
鳩山一郎→東大「世」

この頃は年齢的に、1919年施行の学校令(私立を大学と認めた)より前に大学入学を果たしたので、「大学」といえば4つ程度の「帝国大学」しかなかったので東大卒が多いのは当然と言えます。

●55年体制から高度経済成長の終息まで
石橋湛山→早稲田「党」「叩」=ジャーナリスト
岸信介→東大「官」「叩」
池田勇人→京大「官」「叩」
佐藤栄作→東大「官」「叩」

私大初の石橋首相が誕生したものの、短命に終わりました。続く岸内閣1241日(戦後6位)、池田内閣1575日(同5位)、佐藤内閣2798日(同1位)と長命内閣となります。官僚で叩き上げというパターンは高度成長の強烈なインパクトとともに市民感覚にも根付いたといえましょう

●「三角大福中」時代
田中角栄→大学を出ていない「党」「叩」=実業家
三木武夫→明治「党」「叩」=社会人経験なし
福田赳夫→東大「官」「叩」
大平正芳→一橋「官」「叩」
鈴木善幸→東京水産「党」「叩」=団体職員
中曽根康弘→東大「官」「叩」

いわゆる「三角大福」はそれぞれが自民党の派閥を率いたライバル同士。学歴が皆違う点でも好敵手といえましょう。福田首相と中曽根首相は経歴が同じだけでなく中選挙区時代の群馬三区で激しく争う間柄でもありました。中曽根政権当時も選挙で福田氏にトップを奪われ「日本で1番、群馬で2番」とからかわれもしました。

大平首相急死を受けて同一派閥から首相になった鈴木氏を除いて派閥の大将。そのなかで三木派と並んで「弱小」とみられていた中曽根氏が在任1806日と戦後4位を記録できたのも先行した「三角大福」が角突き合わせて互いの体力を削いで辞任した後だったのが結果的に幸いしたのかも知れません。この時期は東大色が薄まり、官僚と党人がほぼ分け合う形。しかも全員叩き上げでした。ここまでで後に出てくる小泉純一郎政権(戦後3位)を除いて長期政権にあったのは吉田(戦後2位)、岸、池田、佐藤と中曽根の各氏で池田氏を除いて東大卒。しかも全員官僚出身。ここで「首相は東大卒の官僚出」の印象が決定的になりました

●「安竹宮」ないしは「金竹小」時代
竹下登→早稲田「党」「叩」=地方議会議員
宇野宗佑→神戸(中退)「党」「叩」=地方議会議員
海部俊樹→中央から早稲田へ編入「党」「叩」=社会人経験なし
宮澤喜一→東大「官」「世」

「安竹宮」とは竹下、宮澤両氏に加えて現首相の父である安倍晋太郎氏を指します。「金竹小」はキングメーカーと呼ばれた竹下派の金丸信氏と小沢一郎氏を示します。

宮澤氏以外は官僚出でもなく東大卒でもありません。絵に描いたような出世コースをたどった宮澤氏の内閣は皮肉にも自民党分裂を引き起こし、政権交代の「A級戦犯」となってしまいました。

●非自民連立内閣
細川護煕→上智「党」「世」
羽田孜→成城「党」「世」

清新な印象を与えた非自民政権でしたが非力でした。この頃から目立ち始める世襲ゆえの弱さでしょうか

●「自社さ」連立内閣
村山富市→明治「党」「叩」=地方議会議員
橋本龍太郎→慶應義塾「党」「世」
自民・社会・新党さきがけの連立政権。橋本氏は初の慶應義塾大学からの首相。

●自公政権
小渕恵三→早稲田「党」「世」
森喜朗→早稲田「党」「叩」→ただし父親が地元の町長で純粋な叩き上げとはいえない
小泉純一郎→慶應義塾「党」「世」
安倍晋三(一次)→成蹊「党」「世」
福田康夫→早稲田「党」「世」
麻生太郎→学習院「党」「世」

自民党と公明党の連立。細川氏から10人の首相はいずれも私立大学出身の世襲ないしは事実上の世襲。その前の世代と明らかな違いが見て取れます。

●民主党政権
鳩山由紀夫→東大「党」「世」
菅直人→東京工業「党」「叩」
野田佳彦→早稲田「党」「叩」

鳩山氏は宮澤氏以来久々の東大出身。でも官僚出ではありません。政権奪取はしたものの政権は散々で沖縄米軍海兵隊普天間飛行場の移設問題で迷走した後に辞任。後の2代は海部俊樹首相以来の純粋な叩き上げであったものの結果を出せませんでした

●自公政権
安倍晋三(二次)→成蹊「党」「世」

こうしてみると宮澤政権が55年体制を終わらせてから13人の首相(安倍氏は1人とカウントする)のうち東大卒は鳩山氏のみ。東大はもはや1国のリーダーを生む力がないのか。東大卒が首相になれなくなったから日本はダメになったのか。そもそもこうした議論自体が無意味なのか。よくわかりませんがこれが事実です。むしろ凋落したのは東大卒でなく「東大→官僚」コースともいえます。このパターンは竹下登首相が就任した1987年から約30年の間、宮澤氏しかいません。

代わりに大勢力となったのが私大出の世襲です。しかも大学受験で入ったのではなく小・中・高いずれかで入学しエレベーターで卒業しているケースが羽田孜、安倍晋三、麻生太郎の3氏を数えるのです。

現在、自民以外の主要政党トップはどうでしょうか

海江田万里民主党代表→慶應義塾「党」「叩」
橋下徹維新の党共同代表→早稲田「党」「叩」=弁護士
江田憲司維新の党共同代表→東大「官」「叩」
山口那津男公明党代表→東大「党」「叩」=弁護士

ちなみに自民党ナンバー2の谷垣禎一幹事長は東大「党」「世」。つまりかつての黄金コースだった「東大→官僚」パターンは江田憲司氏ぐらいしかいません。

※記事の内容は執筆者個人の見解であり、早稲田塾の公式見解ではありません。